カナビス運転における害削減の方法


  • 運転中は絶対にカナビスを吸わない
  • 最低でも、喫煙後2時間、食べた場合は6時間は運転しない
  • アルコールは併用しない
  • 運転前に、カナビスを使用した後であることを再度意識し直す
  • いつも以上にスピードを控え、車間をとって余裕のある安全運転を心がける
  • Pub date: Oct, 2007
    Author: Dau, Cannabis Study House


    ●カナビス喫煙後の運転への影響時間

    アルコールの場合と同じように、カナビスの影響も時間が経つに従って弱まり、どこかの時点で素面のドライバーとリスクの差はなくなる。その指標になるのは酔いが強さと直接関連している血液中のTHC濃度で、高くなるほど酔いの状態も高くリスクも大きくなる。

    血中濃度は喫煙直後に急上昇し、ピークに達するとその後はまた急激に下がって行く。その過程でTHCは、運転能力に影響しない不活性のTHC-COOH に代謝していく。一部は、活性の強い11-ハイドロキシーTHCへも変化するが、喫煙の場合は食べたときほど多量には生成されないので影響は少ない。





    Developing Science-Based Per Se Limits for Driving under the Influence of Cannabis
    Franjo Grotenhermen et al., IACM, 2005.


    2007年11月に国際研究チームが発表した報告では、過去の疫学研究やシュミレータ実験などの結果を総合的に検証して、THCの血液中の濃度が5ng/ml以下のドライバーの衝突リスクは素面のドライバーに比べてが高くなるようなことはなく、 運転時の影響レベルとすれば、血中THC濃度7〜10ng/mLがアルコールの血中濃度の0.05%と同等であると結論を出している。

    こうした分析から、リクレーショナルでたまにカナビスを吸う人の場合は、一般的に喫煙後2時間程度で血中のTHC濃度リミット以下まで下がることがわかる。また、食べた場合はピークが2〜5時間後で11-ハイドロキシーTHCへの変化も多いことから、リミットを下回るには少なくとも6〜8時間以上かかると考えられている。


    Two cases of "cannabis acute psychosis" following the administration of oral cannabis
    B Favrat, et al., BMC Psychiatry 2005, 5:17



    ●安全運転のためのリスク削減

    2007年11月に発表された スエーデンの報告には、酔っ払い運転の疑いで血液検査を受けた人の使用ドラッグ別の割合が掲載されている。

    それによると、血液検査をうけたドライバーの60%近くがアンフェタミンに陽性反応を示し、カナビスについては20%の人が他の違法ドラッグと一緒に検出されているが、THCだけが陽性となったケースは4%のみになっている。また、すべての規制薬物に陰性だった人の割合は15%で、アルコールのリミットを越えたドライバーは30〜50%となっている。

    このデータで興味深いのは、カナビス単独では酔っ払い運転の疑いをかけられる人が非常に少ないことだ。酔っ払い運転の疑いをかけられても何のドラッグも検出されなかったドライバーが15%もいることを考えればチェックは相当厳しく行われているはずで、それにもかかわらず、カナビス単独で疑われずに検問を通過している人が実際には少なくないのではないかと思われる。

    このことと、先に上げたメリーランド大学の研究で、41才から60才までのドライバーでカナビスを使っていた人がドラッグを使っていなかった人よりも統計的に事故の過失が少なかったという結論を考え合わせると、カナビスの影響下にあるドライバーはより慎重で安全な運転をする傾向があって検問でも目立たないのではないか?

    実際、イギリスの環境交通地域省(DETR)の依頼で行われた交通研究所(TRL)の 運転シュミレーターを使った実験 では次のように結論を書いている。

    「カナビスの喫煙では、総合的に見て、特に動体を追跡視認するといった精神運動能力に測定可能な影響を受ける可能性が認められるが、運転時に必要な分散した操作を行うといった高次の認知機能への影響については決定的の損なわれるとまでは言えない。カナビスの影響下で運転しているドライバーは、自分の機能が損なわれていることを意識しているので、運転が難しくなるとスピードを落としてそれをカバーしようとする。」

    このように、カナビスでハイになっている人は、アルコールで酔っている場合と違って、カナビスの影響下にあることがわかっているので自然に自分の行動を調整しようとする。実際、大半の人はハイがピークの時は、自分の時間や空間の感覚がいつもと違っていることがわかっているので、たとえ運転に重大な障害になるとまでは感じなくとも、より慎重になって自動車を運転しようとしなくなる。

    こうした点はありがたいことに、カナビスそのものに安全運転のためのリスク削減効果があることを示しているが、さらなるリスク削減のためには次のような対応策をあげることができる。

  • 運転中は絶対にカナビスを吸わない
  • 最低でも、喫煙後2時間、食べた場合は6時間は運転しない
  • アルコールは併用しない (併用すると少量でも相乗的にリスクが高くなる)
  • 運転前に、カナビスを使用した後であることを再度意識し直す
  • いつも以上にスピードを控え、車間をとって余裕のある安全運転を心がける


  • ●尿などのドラッグテストを避ける騙しのテクニックとして、少量のアルコールを飲んでおくという方法が使われることも知られている。アルコールは呼気テストでチェックされるので、ドラッグを使っているときには僅かに臭う程度にアルコールを飲んでおけば、警察がそれに気づいてアルコール・テストをすることになるが、ドラッグ・テストまではされずにアルコールのリミット以下で放免されることになる。

    しかし、このような騙しテクニックでドラッグ・テストをかわしたとしても、事故のリスクまでかわすことはできない。むしろアルコールとの併用でリスクが相乗的に高くなるので絶対にやってはならない。