From Hempire Cafe
「正常化」を迫られるクリスチャニア
伝統のデンマーク・カナビス・コミューニティ
Source: The Scotsman
Pub date: 28th August 2006
Subj: Hippie Town Under Pressure In Copenhagen
Author: Rasmus Nord Jorgensen
http://www.thehempire.com/index.php/cannabis/news/ hippie_town_under_pressure_in_copenhagen
「ハシシどう?」 若い男が客に声をかける。クリスチャニアの中心にあったプッシャーストリートでは、ハシシ・スタンドで公然とカナビスが販売されていた。しかし、このデンマークの有名なフリータウンも時代とともに変ることを余儀なくされている。
クリスチャニアの歴史は、1971年に、コペンハーゲンの廃墟となっていた兵舎跡にピッピーたちがスクワット(占拠)して住みついたときから始まった。それ以来何十年もピッピーの精神が受け継がれてきた。ソフト・ドラッグが簡単に手に入るところとしてもツーリストたちのメッカになった。
ウォータフロントに面した場所はオアシスそのものだ。木が生い茂り、自然の織りなす生け垣のあい間には、家やワークショップ、カフェ、作業小屋が点在している。ベンチに腰かけた人は、のんびりとビールを飲んだりジョイントを吸ったりしている。滑らかに擦り減った石畳では、犬が寝転がって日行浴を楽しんでいる。
コミュニティは、デンマークの法には頼らず、財務のことから住民のいさかいごとまですべてを自分たちのコンセンサスで解決している。ドラッグは違法だが、裏通りのプッシャーストリートのスタンドでは何十年も堂々とカナビスが販売されていた。
しかしながら、2年前から警察が定期的に手入れを繰り返すようになってから状況が変わった。現在ではハシシ・スタンドは姿を消してなくなっている。
「今では、最もタフでめげない小さなディーラー・グループが残っているだけです」 とクリスチャニア住民では古株のドキュメンタリー映画作家のニールス・ベストは言う。
だが、世界でも有数に土地の高い都市にあるこの地域をめぐっては、もっと根本的な問題が議論に上がっている。もともと政府の土地なので、現在の右寄りの連立内閣は、古い城塁を取り除いて歴史的建造物に修理し、新しいビルを建設して住人には借地料を求めようとしている。
「われわれの目標は・・・クリスチャニアをデンマーク社会の一部に組み入れ直して、社会全体のルールや規制を適応させることです」 と連立保守党のクリスチャン・ウェーデル・ニールガードは説明する。
クリスチャニアに住む800人の住民たちは、フリータウンの精神に従って、政府の計画をめぐって議論を続けている。
「まだまだ対応しなければならない問題や条件面での課題も残っていますが、ポジティブな部分もあります。全体としては楽観しています」 とクリスチャニア住民を代表して交渉にあたっているヌッド・フォルスチャック弁護士は語っている。
NOT ALL ROSY
クリスチャニアは、300年程前、隣国のスエーデンと絶え間のない争いを繰り返していた時代にコペンハーゲンの防衛を固めるために築かれた。堀と入江に囲まれた城塁は35ヘクタールに及ぶ。
1970年代にヒッピーの小さなグループが最初にスクワットしてから、何百人もの人びとがそれに続き、寛容で民主的で環境を意識した新しいコミュニティをつくることを誓い合った。
寛容と何とかして対立を避けようとする伝統が根強いデンマークは、国として彼らを強制的に立ち退かせるようなことは決してしてこなかった。
「ここには統治者はいません。住民全員が意志決定に加わる真の民主的な村なのです」 とベストは語る。「ごみ収集車を別にすれば自動車もありません。村人は全員知合いですし、破壊行為をする人はいませんし、盗みもほとんどありません。」
しかし、政府の報告書によれば、必ずしもいつも無垢なフリータウンだったわけでもなく、中には,中産階級の市民や生活保護世帯、ドラッグ・ユーザーや犯罪者なども加わってきた。
1970年代の後半には、オートバイの暴力団に率いられたハードドラッグのディーラーが侵入してきたこともあった。1980年にはディラーたちを追い出し、ジャンキーにはハードドラッグを断つ治療の手助けも実施している。
2004年になると、デンマーク議会は30年におよぶカナビスの販売を止めさせることを決定し、多数の機動隊をクリスチャニアに送り込んだ。しばらくはイタチごっこが続いたが、現在ではパトロールする警官も13人にまで減っている。警察側は作戦が大きな成果を上げていると胸を張る。
「スエーデンやノールウエイやフィンランドのディーラー連中が大量のカナビスを仕入れにやって来ていたのです。ここでは安いですし、取引で捕まる可能性は非常に少なかったからです」 と麻薬取締局のステフノ・ステファンソン局長は説明している。
だが、専門家の意見によれば、プッシャーストリートが閉鎖されてからドラッグの取引は、無政府状態のコペンハーゲン市内に拡がり暴力団が増加していると言う。
「クリスチャニアには、子供には売らない、盗品での支払いは受け付けない、ヘロインのようなハードドラッグは販売しない、といった暗黙のルールがありました。しかし現在の市内の状況にはそのようなルールはありません」 とドラッグ研究家のミシェル・ジョルダンは指摘する。
現在までのところ、クリスチャニアの住民たちは、電気や水道といった公共サービスに対して一種のコミュニティ・タックスを負担しているが、政府の計画に対抗して彼らが真に守ろうとしてのは独自性と自給自足の精神だ。
フォルスチャック弁護士によれば、新しいルールをつくって、家屋や事業用の土地や建物を管理する財団法人を立ち上げることになっている。しかし、細部についてはまだ検討中で、クリスチャニア流のやり方でコンセンサスの形成を目指している。
「私の意見とすれば、クリスチャニアは社会と住居の実験場として残っていくと思います。」
クリスチャニア http://www.christiania.org/
Freetown Christiania in Copenhagen (2005-Sep)
Photos by: NL = Niko Lipsanen | SJ = Santeri Junttila
http://www.domnik.net/topoi/commons/DK/copenhagen/christianshavn/
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