ゲートウエイ理論の終焉

最近の大規模2研究が止めの一撃

Source: Alter Net
Pub date: 19 Dec 2006
Subj: Why Smoking Marijuana Doesn't Make You a Junkie
Author: Bruce Mirken, Marijuana Policy Project
http://www.alternet.org/drugreporter/45535/


カナビスが「ゲートウエイ」ドラッグだという主張は、最近新く発表された2件の科学研究で再び手厳しく否定された。


嘘で固められたゲートウエイ理論

国は、カナビスを吸っているとハード・ドラッグに手を出すようになるという、いわゆる「ゲートウエイ理論」をカナビス取締の中心に据えてきたが、この最も嘘で固められた亡霊のような政策も最近発表された2つの大規模研究によってついに葬り去られるべき時を向かえた。

ゲートウエイ理論は、ホワイトハウス麻薬撲滅対策室のジョン・ウォルターズ長官のお気に入りの定番として使われてきた。たとえば、2004年のニューメキシコ州でのスピーチを扱ったアルバカーキ・ジャーナルには、「ウォルターズ長官は、カナビスがゲートウエイ・ドラッグで、他の薬物の依存を引き起こすと力説した」 と書かれている。

ゲートウエイ理論によると、アルコールやタバコのような合法ドラッグを踏み外してカナビスを使うようになった人間は、きまってそこからコカインやヘロイン、アンフェタミンのようなハード・ドラッグを使うようになるとされている。それを理由に、ウォルターズ長官のような狂信者たちは、状況をいっそう悪くするが故にカナビスを悪いものだ決めつける。

確かに分かりやすい理論で、一般受けしやすい。だが、科学者たちはそんな単純な理論は穴だらけだと指摘し続けてきた。今回、新しく加わった2件の研究もその例にもれない。


ピッツバーグの研究

その一つは、連邦ドラッグ乱用研究所(NIDA)が資金を提供しておこなわれたピッツバーグ大学の研究で、224人の少年を対象に10才または12才から22才になるまでの10年間あまりを追跡調査をしている。

結果は、当初から予想を裏切るものだった。一部の少年たちはゲートウエイ理論通りにタバコまたはアルコールから始まってカナビスをやるようになったが、別の少年たちは逆にカナビスが最初だった。また、最初のドラッグから次のものへは全く移行しない少年もいた。

データを詳細に調べた研究者たちは、ゲートウエイ理論を適応することは無理で、どのドラッグを最初に始めたかよりも、隣人や周囲の状況などの環境的要素が大きな役割を演じていることを見出している。結論として、「ドラッグ乱用の順序が、特定のドラッグが起点になっていることも、また決まったドラッグの次になっていることもない」 と書いている。

この研究を率いたラルフ・ターター博士はピッツバーグ・ポスト・ガゼット紙に、「結果は、子供たちのカナビス使用をやめさせなければ、さらに進んでハード・ドラッグの中毒になるという、この国で60年あまり続いてきたドラッグ政策の考え方とは対立するものでした」 と語っている。


オーストラリアの研究

先月発表されたオーストラリアのブルスベーンとアメリカのセントルイスのチームによる研究は、さらに大規模で複雑なものだが、まったく同じような結論に達している。調査は、カナビスや他のドラッグを使っている4000人を越えるオーストラリアの双子を対象にしたもので、青年期から大人になるまで詳細な追跡を行っている。

調査方法は非常に興味深いもので、双子から得られた実データを、13の異なる数学的モデルを使って、カナビスの使用と他の違法ドラッグがどのように関連しているかを分析している。

モデルには、カナビスと他のドラッグの使用に間には全くランダムな関係しかないというものから、遺伝・環境的な要素がカナビスと他のドラッグ使用にかかわっているとするもの、カナビスが他のドラッグの使用を引き起こしている、あるいはその逆になっているといったものまでいろいろなケースを取り上げている。

研究者たちはさまざまなモデルの分析結果を比較して、結局、一つの結論しか残らなかったとして、「カナビスや他の違法ドラッグの使用または乱用は、相関的な脆弱性などの共通のリスク要素と互いに影響しあう別々の要素が絡み合って起こる」 としている。

つまり、データは、カナビスが他のドラッグの使用を引き起こすような順序関係はなく、カナビスをやってみようとさせる要素群と、他のドラッグをやってみようとさせる要素群も違いがないことを示している。

さらに、研究者たちは、何らかのゲートウエイ効果があったとしても、それは 「薬理学的なものではなく社会的なものであり、カナビスを通じてユーザーをブラック・マーケットのディラーと結びつけ、そのディラーが次第に他の違法ドラッグの供給源になる」 ためだと書いている。


本当のゲートウエイは禁止法

このように、いずれの研究も、ハードドラッグ中毒で溢れないようにするためにカナビスを違法のままにしておくべきだという国の主張を裏ずける結果になっていない。

カナビスはゲートウエイではなく、むしろ、カナビス禁止法がヘロインやアンフェタミンなどの犯罪地下マーケットにカナビスを追いやるゲートウエイの役割を果たしている。

カナビスが人々をヘロイン・ジャンキーにさせるという強引な嘘はもはや通用しない。嘘を繰り返し、良識ある改革論議を封殺しようとしてきた当局者たちは、嘲笑のなかで舞台を下りるべきときだ。

●ピッツバーグの研究
Predictors of marijuana use in adolescents before and after licit drug use:
examination of the gateway hypothesis

Ralph E. Tarter, Ph.D., Michael Vanyukov, Ph.D., Levent Kirisci, Ph.D., Maureen Reynolds, Ph.D. and Duncan B. Clark, M.D., Ph.D.    Am J Psychiatry 163:2134-2140, December 2006

カナビスはゲートウエイにはならないティーンは他のドラッグ乱用には進まない
カナビスはハードドラッグのゲートウエイにはならない


●オーストラリアの研究
Contrasting models of genetic co-morbidity for cannabis and other illicit drugs in adult Australian twins
A. Agrawal, M. Lynskey, K. Bucholz, N. Martin, P. Madden ,    Psychological Medicine (2007), 37: 49-60 (Published Online November 1 2006)


●ゲートウエイ理論誕生のいきさつ
ラガルディア報告は、カナビス反対派の人達から繰り返し非難されたが、だんだんと認められるようになっていった。だが、麻薬局は以前からの主張、つまり、カナビスが人殺し草であり、殺人や精神病をもたらす強力な麻薬である、という主張をなかなか撤回しようとしなかった。

しかし、こうした嘘がいつまでも続くはずもなかった。50年代に入り、カナビスについての正しい知識が少しずつ知られるようになってくるに従い、麻薬局の主張の化けの皮がはがされることになった。そこで、麻薬局は、カナビスを押さえつけておくために、新たな理屈を用意しなければならなくなったのである。

1956年、麻薬局は、カナビスと犯罪との結びつきについて以前のような主張をしなくなる代わりに、カナビスの真の危険性はそれを使用しているとヘロインを使うようになってくることだ、と主張するようになった。

さらに読む...  カナビスに対する麻薬局の見解の変化  (ファンシーズ・リーフ 第5章 アメリカの状況)