バポライザー新研究

医療カナビスに対する最後の反対理由を完全粉砕

Source: AlterNet
Pub date: May 2, 2007
Subj: New Studies Destroy the Last Objection to Medical Marijuana
Author: Bruce Mirken, Marijuana Policy Project
http://www.alternet.org/drugreporter/51277/?page=1


医療カナビスを支持する人なら、遅かれ早かれ、カナビスの「喫煙」に反対する議論に巻き込まれる。「真の医薬品で喫煙するものなどない」、「喫煙は肺に悪いから、そんな害のあるものを医者が奨めるはずがない」 等々。

この決め台詞を使って、医療カナビス反対派は連邦議会や州議会などあらゆる場所でカナビスの危険性を強調してきた。実際、論議を醸した2006年の食品医薬品局(FDA)の声明では、医療カナビスを 「喫煙カナビス」 と何度も繰り返し言い替えることで悪い印象を強調している。

だが、最近行われた研究で、医薬品として「喫煙カナビス」を使うのは危険だという恐怖話がもはや100%過去のものであることが示された。


喫煙は最良のカナビス摂取法

確かに、カナビスの喫煙議論は、医療カナビスに反対する科学的根拠としては最も説得力があるものだった。

実際には、カナビスの場合はタバコと違って、肺ガンの原因になることは示されたことはないが、ヘビーに喫煙すればさまざまな呼吸器障害を引き起こしたり、気管支炎のリスクを増大させる可能性のあることが指摘されていた。これは、どんな植物であれ、燃やせばタールのような物質や一酸化炭素などを多量に生成し、肺に良くない影響を与えることからも当然と言える。

ところが一方では、カナビスの活性成分であるカナビノイドを摂取する方法としては、明らかに喫煙法が最も優れている。

THCのようなカナビノイドは油溶性の分子なので、マリノールのようなピルを経口投与しても体内への吸収は遅く、均一には取り込まれない。マリノールの場合は、一般的に、効いてくるまでに1〜2時間もかかる上に、いったん飲んでしまったら摂取量を調整することは不可能で、しばしばオーバードーズを起こして、ピーク時にはストーンし過ぎて動けなくなってしまう。

数年前のランセット神経学ジャーナルには、「カナビスの喫煙による摂取法は、効き方が迅速で摂取量を正確に調整できることから、多くのカナビス患者に支持されてきた」 と書かれている。実際、効果の発現はほとんど瞬間的とも言えるほど早く、患者は、過度に酔ってしまう前に必要な効果が得られたところで吸うのを中断することができる。

ところが、カナダで何かと大げさに宣伝されているサティベックスも含めて、製薬会社のカナビノイド製品には、こうした迅速な発現と、簡単で正確な摂取量調整という2つ利点が備わっていない。


煙を出さずに迅速な発現を実現するカナビノイド搬送システム

1996年にカリフォルニア州で医療カナビス住民条例が成立したのを受けて、本当にカナビスに医療効果があるのか科学ベースで評価するためにホワイトハウズがアメリカ医学研究所(IOM)に調査を諮問したが、委員会は1999年に発表した報告書の中で、カナビスの医療効果を認めた上で、「煙を出さずに迅速な発現を実現するカナビノイド搬送システム」 の必要性を指摘していた。

今回発表された2つの研究は、カリフォルニア大学サンフランシスコ校とニューヨーク州立大学およびアルバニー大学が実施したもので、アメリカ医学研究所が指摘していた搬送システムがすでに存在していることを明確に示している。この装置はバポライザーと言わている器具で、何年も前から医療カナビス患者によく使われてきたが、医療カナビス・コミュニュティ以外ではその存在はほとんど知られていなかった。

喫煙の場合とは異なり、バポライザーでは、THCなどのカナビノイドが気化する温度で加熱するだけで、カナビスを燃焼させない。カリフォルニア大学サンフランシスコ校の実験で使われたバポライザーはボルケーノと呼ばれる商品名の装置で、気化した蒸気を取り外し可能なバルーンに蓄えてから、外して吸引するするようになっている。


ボルケーノ・バポライザー (ドイツ・ストルツ・ビッケル社製)


ガス化された燃焼毒が全くといってよいほどない

ドナルド・アダムス博士に率いられたカリフォルニア大学サンフランシスコ校のチームは、18人の被験者を対象に、強さの違う3種類のカナビスをジョイントで喫煙するか、またはボルケーノで吸引してもらって、両者の違いを比較している。

研究者たちは、血漿中のTHCのレベルとともに、燃焼によって生成された好ましくない混入物の指標として、吐き出された気体の一酸化炭素の量を測定した。

その結果、それぞれの方法では、若干バポライザーのほうが高かったものの、ほとんど同じレベルのTHCが検出され、カナビノイド摂取法としては両者とも同等に効果的であることが確認された。大きな違いがあったのは吐き出された一酸化炭素の量で、予想通り、喫煙後の量が急激に上昇していた。これに対して、バポライザーでは、増加はほとんど確認できない程度しか認められなかった。

研究者たちは、「この結果は、ガス化された燃焼毒が全くといってよいほどないことを示しており、カナビスをバポライズして吸引すれば燃焼毒に晒されずに済むことを意味している。従って、バポライザーはジョイントの喫煙に比較して一段と安全な摂取法であると言うことができる」 と結論を書いている。


呼吸器系への影響は60%も少ない

一方、ミッチ・アーリーワイン博士に率いられたニューヨーク州立大学およびアルバニー大学のチームは、インターネットを使って7000人近いユーザーに対してアンケート調査を実施している。参加者たちには、普段最も良く使っているカナビス摂取法(ジョイント、パイプ、バポライザー、食用など)を選んでもらって、呼吸器系の状態に関する6つの質問に答えてもらっている。

年齢やタバコの喫煙などの因子に統計的な補正を加えた結果からは、バポライザー使用者のほうが、ジョイント・ユーザーよりも、咳や痰や胸苦しさといった呼吸器系への影響をあらわす症状が60%も少ないことが明らかになった。また、バポライザーの効果は、多量にカナビスを使う人ほど顕著になることも分かった。

アーリーワイン博士は、「われわれの研究では、カナビス使用による呼吸器系への影響をバポライザーで減らせることを示しています。実際の調査では、普段最も良く使っている方法を聞いただけですから、ほとんどバポライザーしか使わない人の場合は、この結果よりももっと恩恵を得ている可能性もあります。一部には、大半をバホライザーで吸引していても、その他の方法も併用している人もいることは確かですから」 と語っている。


政府当局者たちは謙虚に結果に向き合うべき

理性を標榜する社会なら、政府当局者たちは、喫煙によるリスクを理由にした医療カナビスへの反対姿勢を改めて、謙虚にこれらの研究の結果に向き合い、医療カナビスを支持するグループの戦線に加わって、この重要な健康を守るテクノロジーの存在を広めることが望まれる。

息を止めてまで期待しないほうがいいかもしれないが。

カナビスを蒸気にして吸えることは以前から知られていたが、バポライザーの開発が本格化したのは1990年代になってからのことだった。当初は特に医療用途を目的としていたわけではなかったが、医療カナビスへの関心が高まってくるに従って、はっきりと医療向けのコンセプトを持ったバポライザーの開発も始まった。

その最も顕著な例がボルケーノで、いったん蒸気をバルーンに貯めてから吸引するという画期的なアイデアが出てきた。ボルケーノがドイツ・ストルツ・ビッケル社から発売されたのは2000年の11月のことで、すぐにその性能と目新しさが評判になった。

特に、他のバポライザーが嗜好用途を意識して吸引力の必要なホッカ型やすぐに吸うことを前提にした容量の小さなプレート型だったのに比べ、ボルケーノは、吸引力のない患者や体の不自由な人でも、ベッドに寝ながら、時間をかけてゆっくりと少しずつ吸引できるという特徴を備えている。

また、ボルケーノでは送り込む空気量が一定に設定されているために、バルーンのサイズとカナビスの種類と量を調整することで、いつもTHCがほぼ一定濃度の蒸気をつくり出すことができるという他のバポライザーにはない特徴もある。このことは医療用途には非常に重要な要件になっている。

今回の研究:
Vaporization as a smokeless cannabis delivery system: a pilot study"  D I Abrams, H P Vizoso, S B Shade, C Jay, M E Kelly, N L Benowitz, Clin Pharmacol Ther. 11 Apr 2007
Decreased respiratory symptoms in cannabis users who vaporize  Mitch Earleywine, Sara Smucker Barnwell, Harm Reduction Journal 2007, doi:10.1186/1477-7517-4-11

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