子供への戦争に変質する

アメリカ政府の医療カナビス戦争


The Naulls Family

Source: AlterNet Drug Reporter
Pub date: 25 September 2007
Subj: The Federal War on Medical Marijuana Becomes a War on Children
Author: Dan Bernath, MPP's assistant director of communications
Web: http://www.alternet.org/drugreporter/62330/


「オートマチック拳銃?」 「チェックOK」
「ヘリコプター?」 「チェックOK」
「探知犬?」 「チェックOK」
「防弾チョッキ?」 「チェックOK」

普通、このシーンが、医療カナビス患者に対する政府のキャンペーン作戦の一部だと思う人はまずいないだろう。しかし、「ドラッグ戦争」 と称する医療カナビスへの攻撃はここ数ヶ月でいっそう暴力的で軍隊的な様相を帯びてきている。現在の連邦警察のコミュニティを覆うメンタリティはまさに戦争そのものなのだ。

連邦麻薬取締局(DEA)は、7月17日にカリフォルニア州のあちこちにある医療カナビス・ディスペンサリーに対して強制捜査を実施したが、このやり方には、連邦当局が医療カナビス患者に対する戦争を故意にエスカレートして自分たちの姿勢を誇示しようとする意図が感じられる。

時には地元警察を従えて行われる連邦の強制捜査は、医療カナビス患者でリバーサイド地区に2軒のディスペンサリーを持つロニー・ナウルスさんのような人を標的にしている。

家族で教会に通う敬虔なナウルスさんは、2001年の交通事故の怪我が原因で慢性的な痛みを抱え、その緩和のために医療カナビスを使っているが、事故当時は、既にITコンサルタントと不動産マネジャーの2つのビジネスで成功を収めていた。

その後、彼は、ロスアンゼルスから車で1時間ほどのところにある地元のコロナ郡に住む同じような患者のためにヒーリングネイションズ・コレクティブというディスペンサリーを設立して運営していた。

誰から話を聞いても、ナウルスさん非常に良心的で注意深くディスペンサリーを運営していた。従業員には厳格な服装規定を適応し、プロとしての対応を求め、ディスペンサリーに課せられる州税に関しても、他のディスペンサリーのオーナーがしばしばルーズな税法の抜け道を使って免れたりしているのに対して、毎年数十万ドルも納めている。さらに、ディペンサリーの収益の一部を地元や国の癌関係団体に寄付している。

しかしながら、7月17日朝5時50分、ナウルスさんの自宅と仕事場には、ショットガンと自動ライフルで武装したDEAのエージェントに侵入された。彼らはヘリコプターでも襲ってきた。あらゆる所持品、仕事関係の資料や資産は押収され、すべての銀行口座は差し押さえられた。

それだけではない。さらに最悪なことに、彼らは強制捜査に郡の児童保護サービスを引き連れてきた。本来なら、郡当局は、州法を何ら犯していないナウルスさんらを告発することはできないはずだが、ナウルスさんと妻に児童を危険にさらしたとする罪を科して、1才から5才になる3人の娘たちを連れ去った。

ナウルスさんが児童保護施設を訪れて子供たちに面会したとき、一番上の娘さんは 「ダディ、すぐに家に帰りたい。いい子にするのを約束するから」 と訴えた。

もちろん、子供たちは若すぎて、自分たちの親が安全で思いやりのある環境で仲間の患者に薬を提供していたことや、それを破壊して懺悔させようとするドラッグ戦士の力づくの戦闘で自分たちが犠牲になったことをまだ理解できない。家族の財産を奪い、両親を投獄し、子供たちの心を傷つけておいて、いったい誰が責任を持って子供の世話をするのか?

連邦のドラッグ戦争は、今でもカリフォルニアやオレゴンでディスペンサリーの強制捜査を絶えず続けており止める気配も見せない。それどころか、許可を受けたディスペンサリーに店舗を貸し出している家主に対して追訴するという脅しをかける新戦術まで繰り出してきている。

だが、なぜ今なのか? アメリカの一般市民の激しい怒りを買ってまで、なぜ彼らは医療カナビス患者に対する戦争をエスカレートさせるのか? たぶん、それは、彼ら自身が戦争に負けつつあることを知っているからだ。

連邦当局は、ナウルスさんの家族のような罪のない市民に嫌がらせをするためにせっせと時間と金を注ぎ込んで浪費しているが、こうした政府の弱い者いじめ戦術に我慢できない人たちも全国に増えてきている。

実際、医療カナビス・グラニット・スターター(GSMM)の努力のお蔭で、民主党の大統領候補の全員が医療カナビス法のある州への連邦の介入をやめると公約している。共和党の候補でも、ロン・ポール下院議員(テキサス)とトム・タンクレド下院議員(コロラド)の二人も、医療カナビス法を制定した州の権利を強く支持している。

このような候補者たちは、アメリカ人の大多数が連邦政府の医療カナビス患者に対する戦争に反対していることを十分に理解している。

そもそも、これは戦争なのか? 癌で亡くなったコメディアンのビル・ヒックスの言葉を借りれば、戦争とは2つの軍隊が対峙して闘うもので、医療カナビス患者に対する戦争は実際には戦争などとは言えない。病気に苦しむアメリカ人がどんなに束になったとしても、破壊することしか頭にない重装備の連邦軍と対峙して彼らに脅威を与えることなどはできはしないのだから。

この夏にわれわれが目撃した連邦当局が仕打ちは「戦争」などではなく、もっと適切に表現すれば、「医療カナビス患者大虐殺」 が最も正確なのではないか?

ヒーリングネイションズ・コレクティブに対する強制捜査の様子
Federal agents raid Corona pot dispensary  (2007.7.17)

連邦麻薬局、ロサンゼルスのディスペンサリー家主に脅しの書簡  (2007.7.19)
アメリカ民主党大統領候補、全員が医療カナビス支持を鮮明に  (2007.8.22)

ここで取り上げられているコロナ郡のヒーリングネイションズ・コレクティブではないが、ハリウッドのカナビス・ディスペンサリーに対する強制捜査の様子は、このサイトのフォト・エッセイでも見ることができる。ロスアンジェルス・タイムスの言う通り 「嘆かわしい弱い者いじめ」 で、このような反感をかう現実も医療カナビス支持の流れを強くしている。

ハーバード大学医学部のレスター・グリンスプーン名誉教授は、結局のところ、「カナビスの医療利用が、カナビス禁止法を破綻させていく」 と語っている。