カナビスがADHDの運転能力を正常化

Source: IACM-Bulletin
Pub date: September 30, 2007
Title: THC normalized impaired psychomotor performance
and mood in a patient with hyperactivity disorder
http://www.cannabis-med.org/english/bulletin/
ww_en_db_cannabis_artikel.php?id=254#1


ドイツのハイデルベルグ大学法医交通科学部の研究チームは、注意欠陥障害(ADHD)を持つ28才の男性に対して、カナビスが運転能力にどのような影響を与えるかを調べた。この男性は、ここ数年で何回も交通違反を犯し、カナビスの影響下で運転していたことが発覚して運転免許証を取り消されていた。

研究にあたった精神科医が最初に診察したときには、彼は素面だったが、異常な行動を示して著しく混乱し、集中力も非常に低下していることが認められた。

彼は、普段から症状の改善のために医師から合成THCのドロナビノールを処方されていたので、研究者たちは、運転に支障が出てた原因が、ドロナビノールの急性の影響のためではないかと考えて、ドロナビノールの影響下にあるときの運転能力を調べることにした。

だが予想に反して、その後に行われた2回目の調査では、彼の行動が著しく改善されており、運転能力テストにおいても、反応速度、注意力の持続、方向感覚、運転速度の認知力、注意力に配分で、平均か一部では平均を上回るスコアを示した。テスト終了後に採取した血液サンプルでは、71mg/mlという高濃度のTHCが検出された。

彼に話しを聞くと、以前はドロナビノールが高価なので代わりにカナビスを吸っていたが、今回のテストに当たってはカナビスの喫煙をやめて、決められたとおりにドロナビノールを定期的に摂取し、テスト2時間前にもドロナビノールを飲んでいたことを認めた。

こうした結果について、研究者たちは、「ADHDを持つ人は、統計平均に比較して、交通違反や刑事犯罪を犯したり交通事故に巻き込まれやすいことが見出されている。・・・ADHDの人の場合には、THCが普通とは違った作用を及ぼし、運転能力を改善する効果すらあることを考慮に入れる必要がある」 と結論づけている。

Source:  Strohbeck-Kuehner P, Skopp G, Mattern R. Fahrtuchtigkeit trotz (wegen) THC. [Fitness to drive in spite (because) of THC] [Article in German] Arch Kriminol 2007;220(1-2):11-9.

Peter Strohbeck-Kuehner, Gisela Skopp, Rainer Mattern, Cannabis improves symptoms of ADHD IACM, Cannabinoids 2008;3(1):1-3, 2 March 2008

今回のケース事例では、ドロナビノールの経口摂取が運転シュミレータの成績を著しく改善しているが、喫煙の場合は血中THC濃度がすぐにピークに達して2時間後には急激に下がるのに対して、発現の遅いドロナビノールの経口摂取では2時間目以降に濃度がピークに達することも関係しているとも思われる。

カナビス入りのチョコレートなどを食べたり、バングにして飲んだ場合でも発現が遅く、長時間効果が持続するので今回と同じような結果が出ることも予想される。

カナビスがADHDの症状を改善することはよく知られているが、事故の危険が切り離せない運転能力の改善については個人によって相当に差がある可能性もあり、一般論化することにはより慎重でなければならない。

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