オランダの製薬会社

5年以内のカナビス・ピル販売に照準

Source: Guardian UK
Pub date: 23 Jan 2008
Subj: Dutch firm eyes cannabis pill in 5 years
http://cannazine.co.uk/content/view/3504/1585/


カナビノイド医薬品の開発に取り組んでいるオランダのエコー製薬(株式非公開)は、今後5年以内に世界初の錠剤型カナビス・ピルを発売したいと語っている。

世界での市場規模は、40億ユーロ(58億5000万ドル)と見込まれているが、この市場をめぐってはカナダの製薬会社カナサットもピルの開発に乗り出している。

世界初のカナビス医薬品としては、2005年にイギリスのGW製薬がカナダで、カナビス・ベースの舌下型スプレー・サティブックスの認可を多発性硬化症治療薬として受けている。

また、2006年1月には、アメリカの医薬品規制当局もサティベックスの臨床試験の実施を認めている。しかし、2007年2月には、さらなる臨床試験が必要だと指摘されて、GW製薬はヨーロッパでの認可申請をいったん取り下げている。

エコー製薬は、商品名ナミソールと呼ばれるカナビス・ピルの臨床試験を2008年の前半にも開始すると発表している。

「世界でのカナビス・ベースの医薬品の市場規模は40億ユーロだと言われています」 とエコー製薬のヘルツ・ウェーリー社長はインタビューで語っている。「わが社は早く参入できたおかげで、世界シェアの20〜30%は獲得できると考えています。」

研究では、カナビス・ベースの薬は、パーキンソン病、多発性硬化症、偏頭痛などに効果があり、アルツハイマー病患者の助けにもなると言う。

オランダは何十年も前からコーヒーショップでのカナビス販売が容認されているが、2003年にはカナビスを、慢性痛み、癌にともなう吐き気や食欲不振、HIV、多発性硬化症などの処方医薬品として世界で最めて薬局で取り扱えるようにした国にもなっている。

カナビスを医療品として利用することは非常に古くから行われてきた。中国では薬草として5000年前から使われ、イギリスでも、ビクトリア女王が1890年頃に生理痛の治療にカナビス・チンキを使っていたと言われている。

「錠剤の型でカナビスを摂取できることは、他の方法に比べて体に馴染みやすいという点が大きな長所です」 とウェーリー社長は言う。

エコー製薬のピルは、オランダ政府の認可を受けた国内の栽培者のカナビス原料を原料としている。昨年の11月には、オランダ政府もカナビス・ベースの医薬品開発を促進し、さらなる科学研究を認めて5年以内に薬局で利用できるようにしたいと発表している。

アムステルダム近郊のウェースプに本拠を置くエコー製薬は、第2段階の臨床試験を実施するために民間の投資家から300万ユーロの提供を受けている。今後は、お互いで協力し合って市場での販売を目指すとしている。

ウェーリー社長は、他の製薬会社からの財政支援や販売の立上げの協力を受けるつもりがあるのかどうかという質問に対しては、明言を避けながら、「すべてのオプションを検討する」 と語っている。

また社長は、通常の医薬品の場合は販売まで約5年を要するが、特急で行きたいとも話している。「実際、薬の効果は何千年も前から知られているわけですから、十分可能だと思っています。」

オランダ、カナビス・ベース医薬品の開発を推進  (2007.11.7)
オランダ、医療カナビス処方開始  (2004.8.30)

カナダ、カナビス医薬品をめざす会社が上場  (2006.4.6)

サティベックス、ヨーロッパでの認可申請を取り下げ  (2007.7.20)
連邦医薬品局、イギリスのカナビス・スプレーの臨床試験を認可  (2006.1.12)
サティベックス、遂にカナダで認可、世界初のカナビス調合薬  (2005.4.19)

会社で初の製品になるナミソールは、THC99%以上含有の特別品種のカナビス植物から液化炭酸ガスで成分を抽出し、ドライパウダー化してから錠剤にしたもの。舌下で溶かして摂取する。この技術開発には、アムステルダムの Farmalyse社と Feyecon社 が協力している。

会社の サイト によれば、発現はハーバル・カナビスをバポライザーで摂取するより若干遅い程度で、血中濃度は33分でピークに達し、下がってからも長時間持続する。また、吸収効率(バイオアベラビリティ)については1.5倍優れていると書かれている。1錠中のTHCは1.5mgで、20錠でパッケージされている。


エコー製薬・ナミソール


Public Information Report on Sativex Oromucosal Spray  イギリス医薬品庁(MHRA)


GW製薬のサティベックスも舌下からスプレーで投与するが、カナビス抽出液にアルコールを加えているのでアルコールの刺すような刺激や舌が白くなる副作用も 報告 されている。また、味についても、ペパーミントでごまかしているが、基本的に味が悪く気持ちが悪くなる人もいるほか、液体が舌下からこぼれ出しやすいために胃に流れることもあると 指摘 されている。また、喫煙の迅速性に比較して 発現に20分 ほどかかることも大きな欠点となっている。

これに対して、ナミソールは摂取しやすく発現も早いうえに持続性も優れている。また、カナビノイドの含有成分構成についても容易に変更できるとされ、製造コストの点でもスプレーよりも安くできるという優位性がある。こうした点からすれば、現在のところナミソールが最も将来性のあるカナビス・ベースの医薬品だと思われる。

サティベックスの臨床試験の成績が十分ではなく、イギリス医薬品医療製品規制局(MHRA)はたびたび申請を却下しているが、社会的な影響が大きいことからその理由も 公表 されている。

思惑渦巻くカナビス・スプレー・サティベックス
カナビス・スプレー不許可、イギリス、サティベックスの効果認めず  (2005.6.11)