カリフォルニア州最高裁

医療カナビス患者の解雇を認める

Source: San Francisco Chronicle
Pub date: 25 Jan 2008
Subj: Company Can Fire Medical Pot User, Court Rules
Author: Bob Egelko, Chronicle Staff Writer
http://www.mapinc.org/norml/v08/n086/a03.htm?134


カリフォルニア州では1996年に215医療カナビス条例が住民投票で成立して、認定を受けた患者とケアギバーは州の訴追から免除されることになったが、今週、同州最高裁は、職場でのドラッグ・テストで陽性になった従業員を事業主が解雇できるとする判決を下し、医療カナビス法はまたひとつ風穴を開けられた恰好になった。

判決では7人の裁判官のうち5人が、連邦のカナビス法に違反したことを理由に雇用企業側が従業員を解雇することは、医療カナビス条例によって制限を受けないという判断を示した。

多数意見を代表してキャスリン・ミクル・ウエルデガー裁判官は、「有権者たちは、刑事犯罪法に対象から除外することが目的で住民条例に賛成したのであって、それ以上に広い範囲にまで適応されることを期待していたとする理由は何らなく、今回の件のように、従乗員の医療カナビス使用に対して事業主が便宜をはかることまでは要求していない」 と書いている。

一方ジョイス・ケナード裁判官は反対意見として、有権者たちは決して、医療カナビス・ユーザーが薬を諦めるか仕事を失うかといった 「むごい選択」 をしなければならない状況まで考えていたわけではないと述べている。

同じ趣旨の発言は、裁判の終わった後で州議会のマーク・レノ議員(サンフランシスコ、民主)からも出ている。彼は、「カリフォルニア州民は、患者が医療カナビスを使うために仕事を辞めなければならなくなるなどとは考えてもいなかった」 として、新たな法律を作って裁判の決定を覆すと表明している。

レノ議員は、医師のすすめで勤務時間外にカナビスを使っている従業員を解雇できないようにする法案を今後数週間以内に提出すると語っている。しかし、法案では、仕事場にカナビスを持ち込んだり、勤務時間内に使ったりすることまでは認めないようにするとも加えている。

議会での法案の通過については楽観視しているが、アーノルド・シュワツネッガー知事が署名するかどうかはわからないと言う。知事事務所でもこの件についてのコメントを避けている。

シュワツネッガー知事は、2003年にグレイ・デービス知事のリコール選挙に伴って実施された知事選挙では、医療カナビスを支持していたが、一方では、企業側からの関心にも理解を示して、ドラッグ・ユーザーの解雇を制限するようないかなる法案にも反対する意向を語っていた。

カリフォルニアで医療カナビス条例が成立してからは10以上の州で医療カナビス州法が成立しているが、カリフォリニアの条例は適応患者の制限が緩く設定されていたこともあって、連邦法とはたびたび衝突を繰り返してきた。

連邦法では、カナビスの所持・栽培・配布が禁止されており、医療目的であっても合法的な使用はありえないと明確に宣言している。連邦裁判所も、連邦政府当局が、カリフォルニア州の認めている医療カナビス・ディスペンサリーを閉鎖することや、患者やケアギバーを連邦法で起訴することができるという判断を示している。

今回の裁判は、サクラメントの通信会社に勤めていたコンピュータ技師のグレイ・ロスさん(45)が、会社の実施したドラッグテストで陽性となって解雇されたことを不服として起こしたもので、背中の痙攣による激しい痛みと闘うために州法に従って医師の推薦を受けて医療カナビスを使っていたとしてその正当性を主張していた。

訴状によれば、ロスさんは空軍に勤めていた1983年に背中を負傷して以後その痙攣に苦しみ続けて、1999年に医師から医療カナビスをすすめられるまでは痛みから解放されることはなかったと言う。

ロスさんは、2001年9月に、コンピューター管理者としてレイジングワイヤー・コミュニケーションズ社の雇用されたが、11日後にドラッグテストでカナビスに陽性反応を示したことを理由に解雇された。ロスさんは、仕事中にカナビスを使ったことは絶対になく、またカナビスの影響で仕事に支障を来したこともなく、十分に仕事をこなしていたと主張した。

しかしながら、裁判官の多数は、州の医療カナビス法であっても障碍者差別禁止法であっても、連邦法で禁止されたドラッグの使用を事業主が従業員に認めなければならないとまでは要求していないとして、ロスさんの訴えを退けた。

ウエルデガー裁判官は、「医療カナビスであっても乱用される可能性があり、条例では、事業主が従業員のドラッグ使用に注意を払う正当性まで排除しているわけではなく」、また、条例には雇用や職場については何も触れておらず、「レイジングワイヤー社が条例を無視して原告のカナビス使用を妨げたわけでもない」 としている。

これに対して、カルロス・モレノ裁判官ととも反対意見を書いたケナード裁判官は、「責任を持ってカナビスが使われることを想定した法律などは幻想に過ぎず」、そのような観点に立った判断は法的に馴染まないと反対している。

ロスさんは、現在、サクラメント市内や周辺のキャンプ場の管理の仕事をしているが、この仕事ではドラッグテストが要求されないからだと言う。

「最高裁の裁判官たちはカナビスに医療価値があるとは思っていないために、われわれは痛みに苦しみ続けなければならないのです。これは、裁判官の心象の問題で、一般市民や医師がどう思っているかという問題ではないのです。」

ロスさん側と会社側の双方の弁護士は、カリフォルニアの企業の間では雇用前にカナビスのドラッグテストを実施することはごく普通のことで、特に連邦と契約している企業では職場をドラッグフリーに保つことを法的に要求されているという事情もあると口を揃えている。

実際にどの程度ドラッグテストが実施されているかについてはこれまで調査が行われたことはないが、医療カナビスの擁護グループのアメリカン・セーフ・アクセスの法律顧問で、ロスさんの弁護も務めたジョセフ・エルフォード弁護士は、過去6年間の活動の中で数百人から同種の苦情電話相談を受けたと言う。彼は、今回の判決でさらに多くの事業主が医療カナビス患者を解雇したり、雇用をためらうようになるのではないかと懸念を示している。

一方、レイジングワイヤー社側のロバート・パッチソン弁護士は、今回の判決を歓迎して、障碍を抱える従業員に対して適切な施設を提供することを事業主に義務付けた職場での差別禁止法と医療カナビス条例の間にあった曖昧な部分が明確になったと語っている。

「判決では、障碍者法が、いわゆる医療カナビスを含む違法ドラッグの使用のための便宜まで事業主に要求していないことがはっきり示されたわけです。」