停滞する経済に明るい緑信号

カナダの医療カナビス市場

Source: Vancouver Sun
Pub date: 14 Nov 2008
Sky could be the limit for medical marijuana
Author: Ian Mulgrew
Photograph by : Bill Keay, Vancouver Sun
http://www.canada.com/vancouversun/story.html?
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10月の終わりに、カナダ連邦控訴審が政府による医療カナビス独占供給体制を認めない判決を下したことで、民間でカナビスを栽培している人やグループが新たな商業的可能性の到来に一斉に資金投入を始めている。

その一人で有機医療カナビスの合法的栽培者としてよく知られているエリック・ナッシュ氏は、以前より250人の患者向けのカナビスの栽培をカナダ保健省に打診しているが、今はその返事を心待ちにしている。彼はその興奮を抑ながら次のように語っている。

「これは始まりに過ぎません。全国には何万、何十万、あるいは何百万という人たちが有機栽培の医療カナビスを求めているのです。」


エリック・ナッシュ。カナダで最も知られたカナビスの合法栽培者の一人


「政府にとっても、現在ストリート市場によって失われている非常に大きな税収を集めるまたとない機会がおとずれているのです。現在の地球規模の財政危機の中にあって、今回の判決は暗い経済の時代に明るい光をもたらすものです。」

「われわれは政府の明確な決定を待っているだけの状態なのです。すでに、製品は数キロであっても数100キロであっても、あるいはそれ以上であってもすぐに準備できるようになっているのです。」

今回、連邦控訴審が政府の医療カナビス供給の独占体制を認めなかったことで、商業目的のカナビス農産物がどこでも生産されるようになり、その流れはとどまることはないだろうとナッシュ氏は確信している。


カナビスの治療可能性

ナッシュ氏がバンクーバー・アイランドで運営する会社 アイランダ・ハーベスト は、何かと問題の覆いカナビス栽培に関してカナダ政府が標準として設定した産業安全規程をクリアしている。

「私たちのビジョンは、農業として持続性のある産業にすることです。それを達成できない理由などは何もありません。それは、コンパッション・クラブの数や、多くの人が頭痛や生理痛などの緩和にカナビスを使っていることを見ただけでもわかります。」

以前からカナビスが広い範囲の病気や症状の緩和に治療効果があると言われてきたが、最近ではそうした事例研究を支持する本格的な研究がますます盛んになってきている。そうした中には、アルツハイマー病、うつ病、緑内障、てんかん、癌、HIV/エイズ、肝炎、ADD/ADHDなどがある。

最も熱心な学者の中には、現代の医薬品においても、カナビスはアスピリンのライバルになり得るほど多彩多芸だという人もいる。だが、カナビスに大きな可能性のあるらしいことは天才でなくとも分かる。


やる気のない政府

現在までのところでは、政府が貧弱な医療カナビス・プログラムしか実行していないために、多くの患者たちの間では、政府の供給しているカナビスの品質が悪く、自分に適合した良質なものを入手するのが難しい状態になっている。さらに、政府は恣意的に、認定栽培者が供給できるのを2人までに制限して、医療カナビス市場は活発化しないように押さえつけられている。

また医師たちも、服用量についてのガイドラインや、通常の医薬品のように頼れる医学研究の情報がないとして、カナビスの処方に対しては大げさに顔をしかめる。

だが、ゆっくりではあるが状況は少しづつ変化してきている。ナッシュ氏のよれば、2000年以降、医療カナビス市場規模の可能性について本格的に分析した研究は3件発表されている。

その一つは2000年にカナダ医師会ジャーナルが発表した調査研究で、自己治療でカナビスを使っている人が全人口(3200万人)の1.9%と見積もっている。その2年後にカナダ保健省の依頼で実施されたプライス・ウォーターハウスの報告では、4%以上という結論を出している。また、連邦政府の諮問委員会のメンバーが2004年に発表した報告書では、現実は7%に近いとしている。


常道を逸した現在の医療カナビス市場

こうした数字にもかかわらず、カナダ保健省が2008年に認定した医療カナビス患者数はたったの2500人にとどまっているが、ナッシュ氏は、4%モデルで計算すれば、医療カナビスの販売額は年間4億ドル以上になると言う。

さらに楽観的な見方をすれば、医療市場ではバポライザーなどの吸引装置や栽培器具をはじめとする関連商品の販売も200億ドルが見込めるばかりではなく、政府の医療カナビスの販売額も年間100万ドル、全国のコンパッション・クラブでは1000万ドルになるとしている。

しかし、こうした見積りとは裏腹に、医療目的でカナビスを必要としている圧倒的多数の患者たちは、今でもブラックマーケットから購入し続けている。もし、糖尿病患者がインシュリンを入手するために地下ディーラーのところに行かなければならないと想像してみれば、現在の医療カナビスの状況がいかに常道を逸しているかが分かる。

政府は2001年に、カナビス医療利用規則(MMAR、Marihuana Medical Access Regulations)とそれを管理するための官僚機構も立ち上げたが、現在に至ってもまともに機能していない。

実際、いくつもの裁判で、そのやり方が憲法に適合していないとする判決が下されている。政府は、その都度修正を繰り替えしてきたが、いまだに合格点には達していない。10月27日の判決理由の背景のには、そうした根本的な問題が横たわっている。


裁判はもっと先を行っている

今回の新しい判決は、カナダの医療カナビス運用体制の土台が根本的な変わることを予感させる。それは、ドラッグ法までに及び、カナビス禁止法さえ無効なものにする力を秘めている。

ブリティシュ・コロンビアでは現在、単純所持と、栽培・販売に関係する2件の別々の裁判が最高裁で争われているが、相反的な難題に取り憑かれている。

もし裁判所が医療カナビス規則が憲法違反だと裁定すれば、刑事法は執行できないことになるが、それはまた、医療アクセスを拡大することでカナビスの合法化を達成しようとする活動家のトロイの木馬戦略の勝利を意味することにもなる。

かつては、処方箋で酒類を入手できる時代があったが、カナビスの場合も同じような方式で規制管理されることになれば、刑事的に禁止しておく必然もなくなってしまう。


経済的チャンス到来

いずれにしても今回の連邦裁判所の決定は、合法的なカナビス供給を考えている何百もの人たちをはじめ多くの分野での経済的チャンスを広げるブームを巻き起こすことにもなっている。

ナッシュ氏は、消費者にも生産者にもグッドニュースだと言う。

ナッシュ氏のパートナーで、以前は政府の通信員として働いていたウエンディ・リトルさんは、長く有機食品や自然療法の普及に努めてきたが、2002年から正式に有機栽培でカナビスを育て始めた。

二人がそのノウハウを書いた 『カナビスを合法的に販売する』(Sell Marijuana Legally) は大ヒットになった。また、患者や栽培者のオンライン・ユーザー向けのサイトを作成し、さまざまな課題の解決にも取り組んでいる。

しかしながら、現在までのところ、医療カナビス栽培には政府の政策で制限が加えられていることもあって、医療カナビスの巨大な利益の大半が犯罪組織に流れる結果になってしまっている。


変わりつつあるカナビス市場

サイモン・フレーザー大学レイザー研究所のエコノミストであるサイモン・イーストン教授は、カナダ国内のカナビス市場規模についての調査では最もよく知られて尊敬を集めている。

最近イーストン教授は、ブリティシュ・コロンビアでは最も大物のディーラーの一人であるとされる人物と市内のデニーズ・レストランで落ち合って、自分の出した数字について意見を求めた。

「彼は、証明器具とそのバラストの数を使って計算を始めたのですが、私のやり方とは全く違っていました。計算を終えて私の数字と比較すると、結果は非常に近いととても驚いた様子でした。私は最高の気分でした。素晴らしい出会いでした。彼には本当に力付けられました。」

イーストン教授が初めて見積りを出した時に比べると、国内のカナビス市場も少し変化したという。だが、激変したというほどではない。


国境の警備の強化

「ドル為替の変動が最も主要な経済要因になっています。為替は上下しますから売人たちもそれに合わせて売値を変えるのです。しかし、ここ数年で最も顕著な変化と言えば、911事件で国境の警備がさまざまな面で強化されたことです。」

90年代から今世紀に始まりのころにかけては、トン単位のカナダ産のカナビスがアメリカにどんどん流入していた。市場は、たいした計画性もなくカナビスをバックパック一杯に詰め込んだり、カヤックで川を渡ったりするような果敢な連中が動かしていた。バッズの価値はエメラルドと同等と思われていた。

1990年から2000年の間には、BCバッズの水耕栽培が増えたことで、カナダのカナビス市場規模は2倍に膨れ上がった。全国的にみれば、タバコの23億ドルには少し及ばないが、カナダ国民はカナビスに18億ドルを費やしている。

イーストン教授がカナビスの市場規模を計算し始めた2006年までには、ブリティシュ・コロンビア州の卸市場の規模は22億ドルになっていた。これらのバッズが小売されるときには、最高見積りで77億ドルになる。この数字と比較すれば、他のどの農産物の市場規模もちっほけにしか見えない。

ストリートのギャングが増えたことは、カナダ警察(RCMP)の文書を調べれば簡単に知ることができるが、国境警備が厳しくなったことでいくつかの変化も起きている。

今では国境には、地下センサーが配備され、上空からはヘリが交通を監視し、軍隊も展開されている。もはや誰でもが国境越えの密輸出ができるわけでもない。高度に組織化されて死をも厭わない連中の領分になっている。


アメリカでのカナビス緩和の動き

それと同時に、1980年代や90年代にはカナダの栽培者に厳しい態度で臨んでいたアメリカが、現在では、カナビスに対する法執行や判決を緩和させたことにより、自国産のカナビス栽培が増えてきている。

今では、カリフォリニアのカナビス生産増は、カナダのライバルになってきている。

カリフォルニア州だけでも、バークレー、サンタバーバラ、サンタクルズ、サンタモニカ、サンフランシスコ、オークランドなどの各市が、地元警察のカナビス事犯法執行優先順位を最も低くするように公式に定めているほか、同様な条例は、シアトル、デンバー、モンタナ州のミズーラ などの他州の都市にも及んでいる。

一方、カナダのブリティシュ・コロンビアの市場が南への出口を塞がれたために、BCバッズは東部に需要を求めて監視の薄い東側の国境に移動しつつある。しかし、トランス・カナダ横断道路沿いのプレイリー地域では、マウンティ(カナダ北西部騎馬警察)の監視が強化され、大掛かりな摘発も行われるようになってきている。


室内栽培の進歩

しかしながら、最近ではカナビス市場動向の最大の要因は、栽培の方法が革命的に変わってきたことにある。簡単で予定を管理することができるばかりではなく、最も重要なことは室内栽培が進歩したことで、どこででも良質のカナビスが栽培可能になった。

東海岸南部やオンタリオでも栽培が盛んになり、西海岸産のカナビスの需要は減ってきている。カナダ警察は、東部地区でも大掛かりが手入れが行われていると報告している。

オンタリオ地区のカナビス生産高はブリティシュ・コロンビアを凌ぐと言われているほどで、当局も、年間で1億ドルもの生産力のある栽培場2カ所を発見している。

1990年代は、BCバッズがカナビス市場を牛耳っていたこともあって、小さなコミュニティ多くはそのわずかな影響さえまともに受ける状態だった。

だが現在では、ブリティシュ・コロンビアとは最も離れたところにある東海岸北部のシャーロットタウン(赤毛のアンで有名)やニューファンドランド島でも簡単に良質の種と安全装置付きの栽培装置をを入手できるようになっている。数週間もすれば、最高のBCバッズと競争できるようになっている。


カナビスは普通の商品

こうした状況の出現について、イーストン教授は、カナビスが日用品化してや国内生産の商品と同じで、結局は需給関係の利益で価格が決まるようになってきただけだと説明している。

「国内では、品薄になって価格が15〜20%上昇したとしても、増産されてすぐに追いついてしまうのでたいした混乱も起こらないのです。」

また、1990年代に行われたいくつかの見積りでは、密輸出の盛んだったブリティシュ・コロンビア州南東部のクートネー地区に流通しているドルの半分以上はカナビスに直接絡んでいたとされている。

だが、ここ数年はドルが高いこともあって栽培や輸出にはブレーキがかかっていた。確かに、最近のドル下落で生産が刺激され、さらに最近の国際的な財政破綻で日曜用品の価格も大きな影響を受けていることもあって再びBCバッズの出番があるかもしれないが、以前のような勢いが戻ることはないだろう。

「カナビスの価格の変動については、今ではクートネーのネルソン別荘地の不動産価格をウオッチしているのと何ら変わりません」 と言ってイーストン教授は笑った。


新しいコンパッション・クラブを設立、ダナ・ラーセン

ダナ・ラーセン氏は、2008年10月の総選挙ではNDP(New Democratic Party)の候補者だったが、過去のドラッグのリクレーショナル・スキャンダルで立候補を断念させられたが、それを乗り越えて今では、バンクーバーの東ヘースティング通りにある荒れ果てた店舗を整備して新しいコンパッション・クラブの立ち上げに奔走している。


ダナ・ラーセンと彼の新しい カナビス・ディスペンサリー


彼は、ナッシュ氏と同じように、今後医療カナビス市場が合法化 (現在のコンパッション・クラブの法的位置づけはグレー) されて急激に拡大すると考えている。

「ここは禁煙になっています。でも2軒となりのシードバンクにはバポライザー・ラウンジがありますから、そこで吸うことはできます。」

小さな受付の奥には広い部屋がある。まだ完成はしていないが、店内は清潔で質素に整えられている。

彼は、何台かの折りたたみ式のテーブルを指差しながら、「ディーリング用のテーブルを置くことにしています。プライバシーに配慮して事務用の仕切りで分離します。ディスペンス・テーブルと呼ぼうかとも思っているのです」 と言って笑った。


医療分野に身を置くべき時が来た

ラーセン氏は、長いことBCマリファナ党のリーダーでプリンス・オブ・ポットとして有名なマーク・エメリー氏の片腕として カナビス・カルチャー・マガジン で活躍してきたが、いよいよ医療分野に身を置くべき時が来たと考えるようになった。

「バンクーバーには現在すでに2軒のディスペンサリーがありますが、市場はさらにもう1軒を支えるのに十分な大きさになってきている思っています。以前のクラブよりも信頼できて品質の高いカナビス製品を求める患者さんはたくさんいるはずです。」


クラブでは、さまざまな品種のカナビスが提供されている


ラーセン氏のメニュー には、8品種の乾燥バッズ、ハシシ9種、バダー抽出液&オイル4種、カプセルと効果倍増のボンボン製品2種、カナビスを調合した有機チョコレートなどが並んでいる。

バッズの価格は、パインワープの6ドル(1グラム)から ニューヨーク・シティ・ジーゼルの8.5ドルで、 また、ふるいにかけて作ったハシシ・パウダーであるキフは8ドル、アイソレーターで抽出した非常に効力が強いバブルハシシは20〜26ドルになっている。

カリフォルニア州のオークランドでは、州の医療カナビス・プログラムに基づいて民営のディスペンサリーが運営されているが、年間7000万ドルを超える収益を上げていると言われている。


医療カナビス界のセレブ・スター、ミシェル・レイニー

カナダでは、保健省から医療カナビスの所持と使用の認定を受けている患者はおよそ2500人いるが、ミシェル・レイニーさんはその一人だ。彼女は、また医療カナビス界では世界的に知られたセレブで ユーチューブ のスターでもある。


ミシェル・レイニー


クローン病を患っているレイニーさんは、以前は高価な医薬品療法を続けていたが、自宅で栽培したカナビスがよく効くことに気付いた。彼女は、医療カナビスのプログラムがもっときちんと運営されるようになれば、国のヘルスケア・システムで多くの人が救われると信じている。また、他の医薬品の治療からカナビスに簡単に移行することができるので恩恵も大きいと言う。

現在カナダでは、11万人もの人たちがクローン病に苦しみ、9万人が潰瘍性大腸炎を抱えて暮らしているとされているが、その治療に使う医薬品には年間1620万ドルが費やされている。

そうした人たちの多くはすでにカナビスの恩恵を受けているが、レイニーさんはもっと何倍もの人たちにも役に立つはずだと言う。

それは、癌やHIV/エイズなどと闘っている患者をみても分かる。患者さんたちは、カナビスは食欲を増進させて体力を回復してくれることを知っているが、現在の状態では、ストリートでカナビスを入手することを余儀なくされている。

また、「たとえカナビスが効くと分かっていても、現実には、書類にサインすることをためらう医師も多いという大問題もあります」 とレイニーさんは指摘する。

「お年寄りたちは、カナビスを一服するかクッキーを食べれば済むものを、ますます大きくなる痛みをどうにかしようとして巨大製薬会社に年金をつぎ込んでいるのです。」

レイニーさんは、地域の70人の認定患者にも手を差し伸べている。そのうち30人はクローン患者だ。 「毎日世界中の苦しむ人たちから、カナビスが痛みや吐き気を和らげてくれたというメールが送られてきます。政府は、このように効果のある薬の入手を妨害すべきではありません。」


国のカナビス法は不明確

連邦控訴審もそれを認めている。判決では、単に政府側が法的に負けたというだけではなく、少なくとも2003年以降、政府は医療カナビス・プログラムが十分に機能していないのが分かっていながら、何もやろうとはしなかったと認定している。

この結果を受けて、ブリティシュ・コロンビア最高裁で、カーク・タウソー弁護士(ダナ・ラーセン氏と同様に総選挙でNDPからの立候補して取りやめている)は、憲法上に則した適切な医療体制のあり方と刑法の執行強制力と結びつけることは、法律学の歴史からも明らかなように刑法を無効にすることになるという理論を展開した。

彼は、オンタリオ地裁と連邦控訴審の判決について、国のカナビス法が不明確で刑事制裁を科すことはできないという意味になると述べている。


国による過度の妨害は憲法違反

このうち連邦控訴審で争われた事件(Sfetkopoulos vs. Attorney General of Canada)では、カナダ保健省から医療カナビス患者の認定を受けた27人が、カラセル・ハーベスト・サプライ・コーポをカナビスの栽培人に指定したことが問題となった。

これに対してカナダ保健省側は、規則では、栽培人が指定を受けられるのは一度に2人に限定されているとして規則に違反していると申し立てた。

しかし、連邦裁判所事実審理部(Federal Court Trial Division)は、患者側の主張通り、医療カナビス栽培者を選ぶことを妨げることによって患者の自由と安全を脅かしているとして、医療利用規則(MMAR)の41条のb.1が憲法のs.7と矛盾することを認めた。

裁判官も、病人は深刻な病状の治療にカナビスを使うことができなければならず、薬をブラック・マーケットで買わざるを得ないリスクを強要してはならないとする判決を下した。また、憲法に保証されている人権には、国による過度の妨害を受けずに薬を入手できることも含まれるという解釈も示した。

これによって、政府側の控訴は退けられた。さらに、控訴審は事実審理部にも同調し、医療カナビス体系が憲法的な欠陥を抱えているとして政府を非難した。

また3人の裁判官は、2003年のオンタリオ控訴審の判決以降、医療利用規則には何一つ変更をせず欠陥を放置したままなのに、検察側(Crown)はその時の判決を無視して裁判を無理やり続けたとも述べた。

2003年の判決では3人の裁判官が全員一致で、政府は医療カナビスの利用規則の問題に適切に対処していないと批判している。そのこともあって、今回の裁判では、裁判官たちは政府が規則を修正するまで待つことを拒否した。判決文は3ページの短いものだった。

これに対して、カナダ保健省のフィリップ・ラロシュ報道官は、規則についてはまだ検討中で答えを出すには至っていないと釈明するのにとどまっている。


カナビス禁止法は正当か?

一方現在、医療カナビスの利用体制が憲法違反であることを理由に、カーク・タウソー弁護士はカナビス事犯の有罪判決を覆そうしているが、これには何千人ものカナダ人が影響を受ける可能性がある。

中でも彼が最も熱心に取り組んでいるのが、2007年5月に下級審で有罪となったライアン・ペルザーさんの事件で、事実を認めず無罪を主張してブリティシュ・コロンビア最高裁で争っている。

ペルザーさんは、BCフェリーに搭乗していたが、港に入ったときにジョイントを吸っているところを非番の警察官に咎められでカナダ警察に通報された。フェリーを下船したときに逮捕され、バックパックの中から、カナビス78.3グラムとハシシ8.6グラム、喫煙器具、ドラッグを支持する文書が押収された。

カナビス禁止法が正当性を持っておらず、あるいは禁止法の現状があまりにも複雑で追訴に当たってはプロセスが悪用される恐れがあるとするタウソー弁護士の議論に対しては、ブリティシュ・コロンビア地裁の裁判官は、BCの法律が医療カナビス体制を正当性を認めており、その限りにおいては刑事法には問題がなく、ペルザー被告が違反していたことは明らかだと裁決を下している。

しかし、タウソー弁護士はこの判決が間違っているとして控訴している。

これに対して、連邦側のピーター・エクルズ弁護士は、医療利用規則(MMAR)が 「害になる恐れのあるドラッグ」 の配布をコントロールすることは社会の利益に合致するもので、合法と認めるのに十分な要求を満たしていると主張している。

「規則は、正真正銘の医療の必要性だけを保証するもので、適切な医療診断に基づいて合法的に入手できるようになっている。その点では、ペルザー被告はそのような人とは違う。」

彼が患者でないことは確かにその通りだが、別の二人の裁判官は、医療カナビス体制が憲法違反だとしたら、直にカナビスの刑法が実行されるべきなのか、あるいは事実上合法になるのかどうかはっきりしないと言う意見も述べている。

この件 については、2009年1月9日に、ブリティシュ・コロンビア最高裁が検察側の主張を認めて、タウソー弁護士側が敗訴している。しかし、さらに複雑な裁判も控えており余談を許さない。)


医療カナビスを法廷から開放すべき時

現在の焦点は、今回の連邦控訴審の判決に対して、政府がどのような反応を示すかにある。規則がいかなるものであれ、問題になっているのは現実のカナビス供給体制そのものなので、政府は、早急に新しいルールを打ち出す必要がある。

「法定で争うことが目的ならば、化粧品の規則を変えることだっていいのです。でも、裁判官たちはそのようなことにはもううんざりしているに違いありません」 とナッシュ氏は皮肉っている。

少なくとも誰が見ても、病気に苦しむ人たちがブラック・マーケットに行かなければならない状況は認めることはできない。「医療カナビスを法廷から開放して、適切に規制管理してコントロールすべき時が来ているのです。」

「患者さんたちの選択にまかせるべきなのです。カナダ中の人々がわれわれの有機製品を求めているのです。色々な価格や品質のカナビス、あるいは特定のハイブリッド品種を欲しがっているのです。」

「何を入手するかはマーケットの問題なのです。もし、薬局に行ってバイエルの薬しかないと言われたらどう思いますか?」

「選べるという状態は患者さんの権利なのです。また、法的にも必要なことです。」