カナダ高裁が逆転判決

カナビス所持禁止は憲法に違反しない

Source: National Post
Pub date: 11 Dec 2008
Canada: Court still prohibits marijuana possession
Author: Shannon Kari
http://www.mapinc.org/norml/v08/n1112/a07.htm?134


カナダ・オンタリオ州高等裁判所は、カナビス単純所持の禁止が健康違反にはあたらないという判断を示した。

この注目の裁判は、2005年9月にトロント警察がクリフォード・ロング氏(30)をシートベルト違反で停車させたところ、40ドル相当のカナビスを所持していたとして逮捕したことが契機になって始まった。

2007年7月に行われた下級裁判では、カナダの医療カナビス規程には欠陥があるためにカナビス所持の制限を正当化できず憲法違反に当たるという判決が示されていたが、今回の裁判を担当した高裁のエバ・フランク裁判官はその判断を覆す決定を行った。

連邦政府側は今年のはじめに行われた審理で、下級審の決定は、オンタリオ事件のような単純所持を起訴するうえで混乱を招くことになるとフランク裁判官に主張していた。

また、政策の評価を行っている連邦クラウンも、現在カナダ保健省が行っている政策は十分に機能しており、およそ2000人の認定患者に医療カナビスを提供できるようになっていると主張した。

フランク裁判官は、連邦政府のリサ・クセル弁護士側の言い分を認めて今回の決定を下し、「ロング氏は、州の行為が正式な医療カナビスの供給を受ける必要性を侵害したとする主張をきちんと証明できなかった」 と述べた。

この裁定についてクセル弁護士は、カナビスの所持に対する禁止が「いまだに有効」で、カナダ保健省の「医療カナビス供給政策」の規程の正当性も認められたと説明している。

今回以外にもカナビス所持に対する裁判はいくつか行われているが、いずれも医療カナビス供給の不備をベースに争われている。

2003年のオンタリオ控訴審では、連邦政府が医療カナビス・ユーザーに正当で適切なカナビス供給をできない限り、カナビスの所持を禁止することはできないと判決を下しているが、カナダ保健省は、控訴審から憲法違反だと指摘された3規程について内容を再編することで対応している。

しかし連邦控訴審はこの秋に、新しくされた規程の一つで、一人の指定栽培者が医療カナビスを供給できるのを患者一人だけに限っているとして再び憲法違反の裁定を下している。これに対して、連邦政府側は最高裁判所に控訴している。

トロント・ヨーク大学の刑法の教授で連邦の裁判の弁護士の一人として関わっているアラン・ヤング氏は、今回のフランク裁判官の判決を控訴する必要があると話している。

その理由として、現在、医療カナビス患者で連邦政府から供給を受けている人はたった20%に過ぎず、医療カナビス配布システムには著しい問題があることは明らかだとしている。

フランク裁判官は、人権憲章では国に「積極的な義務」を課しているわけではなく、個人の権利のうち一部を奪うことを制限しているだけに過ぎないと述べているが、ヤング氏は次のように反論している。

「医療カナビスを推進している人たちには決して受け入れられない説明です。現在この分野でいろいろな裁判で争われているのは、政府の不満足な供給を受けるのではなく、医療カナビス・ユーザー用のカナビス生産に対する制限を減らそうという試みなのです。」

一方この夏には、裁判の当事者であるロング氏は、40ドルのカナビスの行方や裁判に関わっていくことについてはどうなろうとも気にしないと話している。

彼の弁護士を務めるコンビン・カウケル氏は、フランク判決を上告するためには 「一般市民からの資金提供」 のようなことが必要になるだろうと語っている。