ドイツ、鉛混入カナビスのその後

Source: Reuters
Pub date: 10 April 2008
Title: German dealers added lead to marijuana
Author: Gene Emery
http://cannazine.co.uk/cannabis-news/europe/
german-dealers-added-lead-to-marijuana.html


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Lead Poisoning Due to Adulterated Marijuana


昨年の11月にドイツのライプチッヒ市で、鉛に汚染されたカナビス が出回り騒ぎとなったが、水曜日に発表されたニュー・イングランド・ジャーナル・オブ・メディシンのレターにその詳細な報告書が掲載された。

カナビスに鉛を混入したのは、明らかにドラッグ・ディーラーが重量を増やして利益を水増ししようとしたためだが、このカナビスを吸った数十人が深刻な鉛の中毒に見舞われることになった。鉛による重量増加は約10%で、1キログラム当たりの売上が1500ドル増えた計算になる。

報告書をまとめたライプチッヒ大学病院のフランチカ・ブッセ博士は、「患者の持っていたパッケージの一つには、明らかに鉛の粒子が認められたが、このことは、カナビスがたまたま汚染された土壌で栽培されたのではなく、後から故意に鉛が混入されたことを強く示唆している」 と書いている。

この問題が最初に発覚したのは、およそ1ヶ月の間に16才から33才までの29人の患者が、腹部の痙攣、疲労、吐き気、さまざまな程度の貧血でライプチッヒの4つの病院に運び込まれたからで、一人は深刻な幻覚を伴う脳障害にも苦しんでいた。

しかし、早い段階に鉛によるものであることは判明し、キレート療法が効果的であることはわかったが、汚染源が何なのか分かるまでには8週間を要した。患者に共通するパターンとして、全員が学生または無職の若者で、タバコを吸い、ボディ・ピアスをしていた。また全員がカナビスを日常的に使っていた。

3人の患者が使っていたカナビスの残りを持っていたが、サンプル・テストですべてが鉛に陽性反応を示し、一つからは明らかな鉛の破片が顕微鏡で確認された。

その後2週間にわたってカナビス・ユーザーの匿名テスト・プログラムを実施したが、応募者145人のうち95人に治療な必要なことが判明した。

調査チームの一人であるミカエル・スタンボル博士によれば、現在までに200人の被害が確認されており、今後もテスト・プログラムを継続することになっていると言う。しかしながら、ディーラーがいまだに鉛を混入し続けているかどうかについては判っていないとしている。

報告書では、「小児科医を含めた医療関係者は、今後とも、混入カナビスによる鉛が病状の原因になっている可能性があることに配慮する必要がある」 と書いている。

今回の報告書: Lead Poisoning Due to Adulterated Marijuana
ドイツで鉛汚染カナビス騒ぎ、警察が最寄りの警察所で検査を呼び掛け  (2007.11.7)

一般的に金属を体に吸い込むことは非常に危険だ。

特に鉛の場合は融点が327℃なので、最高で1100℃になることもあると言われているジョイントの燃焼温度では容易に溶ける。溶けた鉛はエアゾル化して煙と一緒に肺に吸い込まれる。粒子が大きい場合には肺の奥まで侵入しないが、エアゾル化した金属粒子は小さく、体内に入り込むので危険が大きい。

これと同じことはアルミにも言える。アルミの融点は660℃で鉛より高いが、やはりエアゾル化して体内に入り込む危険がある。普通のアルミパイプは、アルミの合金で融点はずっと高いから問題ないが、アルミフォイルで自作した簡易パイプの場合は解け出して体内に入り込む可能性がある。

アルミは、鉛ほど重大な健康被害をもたらさないと考えられているが、安易にアルミフォイルを使い続けることは好ましくない。カナビスを喫煙する際には、常に金属を吸い込まないように注意していることが大切だ。

カナビスへの異物混入はこの2006年の秋ころから各地で深刻な問題になってきており、イギリスでは、ガラスビーズの混入した グリットウィード などが出回り、保健省が警告を出す騒ぎにまで発展している。最近ではオランダのコーヒーショップの扱っているカナビスにも異物混入が見付かっているという 報告 もある。

こうした傾向については、最近、栽培場の摘発は厳しくなり、小規模な個人栽培が減少する一方で高度に組織化されたギャングによるカナビスの栽培と供給をコントロールが強まった結果、重量を増やして利益を確保しようとして異物混入が顕著になっているためだと指摘されている。

オランダ、室内栽培場の摘発強化でカナビスの効力が下降、価格は上昇  (2007.10.3)
異物混入バッズの疑惑、処理済ウィードが出回っている?

こうした異物混入問題の根本は、カナビスが禁止されていることが最大の原因になっている。違法であるために、いかなる規制も品質テストも受けておらず、ディーラーは利益を大きくするために何でもする。

こうした状況は、非犯罪化しても基本的には変わらない。結局は、カナビスを合法化して、規制・管理することで品質を保証する仕組みが必要になる。

他のドラッグに比較すれば、カナビスの場合は混入に対する対策が取りやすいともいえる。カナビスはもともとブレンドするという概念がないので、マリファナのように粉状になったものや、形の崩れたバッズを避ければ、それだけでかなり異物を排除できる。また、匂いや手触りを確認したり、バッズを指先で回したり振ったりして何か落ちてこないか確認することだけでも大いに役立つ。

カナビス製品のリスク、入手にあたって注意すべきこと