南オーストラリア州

害の危険を増すだけのボング禁止令

Source: Advertiser, The (Australia)
Pub date: 11 April 2008
Title: Bong ban will harm cannabis smokers, users and experts say
Author: Tory Shepherd, Health Reporter
http://www.mapinc.org/norml/v08/n376/a10.htm?134


マイク・ラン首相が率いる南オーストラリア州政権は、昨日、カナビス喫煙器具であるボングの販売を禁止する新法を成立させた。違反すれば、最高5万ドルの罰金または2年間の懲役刑が科せられる。

この法律では、ボングの他にも、ホッカ、コカイン用キット、アイスとも呼ばれるクリスタル・メソアンフェタミン用のパイプなどの販売も禁止対象となっている。

しかしながら、ユーザーや専門家たちは、この措置によってドラッグの使用が減るわけではなく、逆に、スモーカーの健康に危険をもたらすことになりかねないと指摘している。

ドラッグの専門家で薬理学者のロドニー・アーバイン教授は、ユーザーたちは煙を吸うための別の方法を工夫することになって、より危険な方法を試すようになるだろうと言う。

「あるループホールを塞いでも別のループホールが出てきて、これまでとは違ったパターンの使い方が出現するのです。どのようなものが出てくるかはわかりませんが、ホームメイドの自作ツールで吸うようになる可能性が高く、そのぶん危険が増えることになります。」

また、教授は、カナビスをジョイントやパイプで吸うよりもボングや水パイプのほうが若干危険が少なくなると言う。「直感的ですが、ジョイントで直接煙を吸うよりも、水に通したほうが煙の温度が下がって揮発性の物質が少なくなって、タールも減ると考えられるからです。」

新しい法律をめぐっては、オンライン・フォーラムにも意見が殺到している。多くのカナビス・スモーカーが、家庭用品を利用してパイプを自作すればいいだけのことだと語っている。

だが、アデレードのジェシカのように、ボングは禁止すべきではないと言う人もいる。「みんな自作するようになるでしょうが、多くの場合、ガラスの代わりにプラスチックのボトルに煙を通すようになる…… 明らかに不健康です。こんなことは、政府も知っているはずですが。」

南オーストラリアのミカエル・アトキンス法務長官によれば、今回の法律はアン・ブレッシングトン議員が提案したもので、違法ドラッグを使うために道具が自由に販売されていることに対して社会の懸念が広がったためだという。

「それに応えて、ラン政権がボングを禁止したわけです。これによって、これまでドラッグ関連の道具を販売していた店舗は、店を閉鎖するか、他のビジネスに切り替えるしかなくなります。」

現在では法廷においても、ボングなどの道具を所持していた場合は、違法ドラッグの販売や使用目的の意図があったみなすという判断がほぼ確立している。

「私の知る限りにおいては、違法ドラッグに使われる道具とは知らなかったという販売店の主張が通ったことはほとんどありません。」

ボングなどの喫煙道具の取り締まりは各地で行われている。最も有名なのは、2003年2月にアメリカ連邦麻薬取締局(DEA)が行った、過去最大規模で全国一斉にヘッド・ショップの手入れ(パイプ・ドリーム作戦)で、関係者55人が逮捕され、喫煙器具など数千トンを押収された。この量はアメリカ全体で販売されている半分以上にもなるという。販売業者の多くは年間10億ドル規模で、インターネットなどを通じて器具を販売していた。

逮捕された中には、チーチ&チョンの 「ポット法王」 トミー・チャンも含まれていた。彼は、ペンシルバニアのヘッド・ショップからボングを全国に発送していたが、DEAの目の前だっとこともあって9ヵ月の懲役を科せられた。出所後には、このときの模様を描いた ドキュメンタリー も製作されている。

ボングは自作もできるが、ガラスで自作することは難しい。自作で最も簡易的なのは、ペットボトルとアルミフォイルを利用したものだが、ボウル部をアルミフォイルで作ることはあまり好ましくない。

アルミニウムの融点は約660℃だが、ジョイントなどの最高温度は1100℃になることがあり、エアゾル化(気化)したアルミが煙に混じって体内に入り込む可能性があるからだ。アルミ缶などを利用すると、さらに塗料がガス化する可能性もある。

ボウル部にはきちんとしたパイプのボウルを利用するか、緊急の場合は、りんごなどをくり抜いてボウルを作ることもできる。

カナビスの喫煙器具は目立つので取り締まりの対象になりやすいが、完全に排除するとかえって健康被害が増えることや、、ローリング・ペイパーやパイプなどはタバコ用のものも転用できるので、簡単に取り締まることもできない。

問題は、医療カナビス患者などの利用するバポライザーが取り締まりの対象になることで、アメリカでは、ボルケーノ・バポライザー の輸入が禁止されるという噂が定期的に出てくる。ボルケーノは高価な上に細かい消耗品が多いために、輸入が禁止されれば計り知れない影響が出てくる可能性がある。

こうしたことを考慮して、ボルケーノの マニュアル には、ホップやカモミール、セージなどの使用については触れているものの、カナビスについては何も記載されていない。