アメリカ大統領選挙

各候補の医療カナビス・スタンス

オバマ候補が最も明確で前向き

Source: San Francisco Chronicle
Pub date: 11 May 2008
Next president might be gentler on pot clubs
Autor: Bob Egelko, Chronicle Staff Writer
http://www.mapinc.org/norml/v08/n485/a03.htm?134


1996年にカリフォルニア州の有権者がアメリカで最初に医療カナビスを合法化して以来、同州は、カナビスが役立たずで危険なものとして力ずくで禁止してきた連邦政府から執拗な攻撃を受けてきた。

だが、半年後に迫った次期大統領選挙でこの流れが変わるかもしれない。


各候補の温度差

今月20日にはカリフォルニアと同様に医療カナビスが合法化されているオレゴン州で予備選挙が予定されているが、それを前にしてバラク・オバマ候補は、医療カナビスに対する連邦の介入を終わらせて州が独自にルールを定められるようにするという立場をいっそう鮮明に主張するようになってきている。

だが、民主党のライバルであるヒラリー・クリントン候補の主張は、曖昧になってきている。当初は医療カナビス法を持つ州に対する連邦の強制捜査をやめるキャンペーンにも取り組んでもいたが、最近ではその約束から距離を置くような発言をするようになってきている。また、夫のビル・クリントン元大統領が、カリフォルニアの医療カナビス215条例の成立と運用に敵対的な政策を繰り広げた事実については何も触れようとはしていない。

一方、共和党の大統領候補が確実なジョン・マケイン候補は、この問題についてはどっちつかず発言を繰り返している。ある時には、マケイン政権では深刻な病に苦しむ患者が医療カナビスを使っても決して逮捕されないようにすると言いながらも、結局最終的には、ブッシュ政権の連邦による強制捜査と追訴政策を継承すると言っている。


エスカレートする連邦政府の妨害

1996年にカリフォルニア州で医師の認めた患者がカナビスを使っても州の刑事罰に問われなくする住民投票が成立したのを皮切りに、医療患者を一般のカナビス禁止法の対象外として免除するための政治的戦いは、もっぱら州議会と住民投票を中心に行われてきたが、連邦政府側も州法の適応範囲を制限することに関しては重要な役割を果たしてきた。

ビル・クリントン政権は、当初からカリフォルニアの住民条例に反対する立場を取り、非営利団体がメンバーに医療カナビスを供給することに対しては組織を閉鎖できると主張して裁判を起こし勝訴している。また敗訴したものの、司法省も、患者に医療カナビスを奨めた医師から医薬品の処方権限を剥奪しようと裁判を起こしている。

ブッシュ政権はこれをさらに押し進め、2005年に連邦最高裁で、医療カナビスの使用を連邦の規制薬物法によって起訴することは憲法に違反しないという判決を得ると、連邦法の下で医療カナビスの栽培者やディスペンサリーを強制捜査して追訴するようになった。また、ディスペンサリーに場所や店舗を貸している家主に対しても、法的措置を取ると脅して立ち退かせるように圧力かけるようになった。

さらに、マサチューセッツ大学の研究者たちが、研究用に適したカナビスの独自栽培を求めて争っていた行政裁判では、DEA側が敗訴勧告を受けたのにもかかわらず、自身による最終決定の期限が定められていないことをいいことに放置して、実質的には研究を妨害したりもしている。

NORLMのまとめによると、2001年以降では、カリフォリニア州法の下で医療カナビスを栽培または使っていたとして争われた連邦の裁判で、少なくとも28件が有罪判決が出ている。また連邦検察当局は、それ以外にも22件以上で裁判を起こしており、不起訴ながらも強制捜査を受けた栽培者またはディスペンサリーは10件に上っている。


選挙選のタブーではなくなった医療カナビス

次の4年間に連邦がどのような政策を取るのかは、次の大統領に委ねられているが、今回の選挙戦では、各候補はこの問題に関して特別にスピーチを行ったり、討論するようなことは行っていない。しかし、アイオワやニューハンプシャーの医療カナビス運動家たちが患者自身を質問者に立てて、積極的に各候補の考え方を引き出してきた。

最も大胆な変更提案は第2グループの候補者たちから出てきた。民主党ではマイク・グラベル、デニス・クシニッチ、クリス・ダッド、ビル・リチャードソン、共和党ではロン・ポールの各候補が医療カナビスを積極的に支持し、中にはカナビス全般に対する連邦の刑事罰の撤廃を呼びかける候補者さえいた。だが、共和党のほとんどの候補者は、主力候補も含めて相変らずの態度に終始したままだった。


前向きに踏み込むオバマ候補

そんな中で、オバマ候補は、当初から医療カナビスに好意的な立場を取りつづけてきた。11月のアイオワの集会では、自分の母親が癌で亡くなったときのことに触れて、カナビスが、医師の処方したモルヒネと同じように痛みに緩和に効果があったと語り、科学者と医師が効果があるとするならば、カナビスの医療使用を認めるようにしたいと述べている。ただ、医療目的だと偽って栽培する人間が出てくることを懸念して、「厳重なガイドライン」 が必要だとも釘を刺すことも忘れなかった。

今年3月に行われたオレゴン州の新聞社とのインタビューでは、患者自身の栽培やパパママ・ストアでの販売にはやはり懸念を示しながらも、さらに踏み込んで、州がカナビスの医療使用を「全体を適切に合法化して、他の医薬品と同様に医師による処方コントロールができる」 ようにしたいと話している。また、最近の当新聞社の医療カナビスについての質問には、3候補の中でただ一人だけ答えで、連邦が不干渉政策を取ることを約束している。

オバマ陣営のキャンペーンを担当しているベン・ラボルト広報官は、「カリフォルニアからネバダやン州に至る有権者や議会は、エイズや癌のような慢性的で深刻な病気の痛みや苦しみを緩和して州の住民を救うために医療カナビスを使えるように決定したわけです」 と述べている。

また、「一応、医療カナビスも他の医薬品と同様に連邦の食品医薬品局(FDA)が担当することにはなっていますが、オバマ候補は州が自分でどうするか決める権利を支持しています」 語って、州の自由な決定を認めながらもFDAはどのようにしたら連邦法の下でカナビスを適正に配布できるかを考える必要があるとも話している。

さらに、ラボルト広報官は、州法で認められた医療カナビス・ディスペンサリーの対する連邦麻薬局(DEA)の強制捜査を終結させることも明確に語っている。


後退するクリントン候補

当初、ヒラリー・クリントン候補も、連邦の強制捜査についてのコメントを出してきた。昨年7月のニューハンプシャー州の集会では、医療カナビス擁護者たちの質問に対して、連邦の強制捜査を終わりにすると答えていた。

しかし、4月5日に行われたオレゴン州の週刊誌のインタビューでは明確な言い回しではなく、「連邦の法執行の資源を医療目的でカナビスを使っている人たちに向けることは良い使い方だとは思っていません」 と答えている。

強制捜査を止めさせるつもりはあるのかという直接的な質問には、「結局、DEAが何を優先すべきかという問題で、その意味では医療カナビスの優先順位は高いわけではなく、他にもっとやらねばならない重要な事柄がたくさんある」 と語るに留まり、強制捜査の中止については明言しなくなった。

また、クリントン候補は、昨年の10月には、カナビスに医療価値があるかについてもっと政府による研究が必要だと指摘しながらも、カナビスを非犯罪化して刑事罰則を撤廃することには反対するとも述べている。


発言の揺れるマケイン候補

マケイン候補の医療カナビスに対するこれまでの発言は、その度の気分で変わることを繰り返している。

例えば、予備選挙のキャンペーンが開始された昨年の4月には、連邦による強制捜査を終わらせるかという質問には、「この問題は州の決定に委ねる」 と答えていながら、2ヶ月後には強制捜査は止めないと発言している。

また、11月になると、重度の病をかかえた医療カナビス患者自身からの質問に対して、カナビスを使ったことで決して逮捕されないように 「自分のできることはすべてやる」 と約束する一方で、ニューハンプシャーの専門家との対話では、大多数の医学専門家たちがカナビスには効果はなく危険だと考えているという主張を繰り返し、数日以内に 「詳細なし政策文書」 を出すと約束して明確な理由をはぐらかせている。

しかし、その後は何も出てくることはなく、医療カナビス支持者たちからは、今後もマケイン候補の医療カナビスに関する政策文書が発表されることは決してないとみなされている。

また同じ11月に開催された集会で、医療カナビスの州法が政府の法律でオーバーライドされるべきかどうかという質問に対しては、「医療カナビスは、人々がそうなることを望んでいるものではない」 とも述べている。


州に口出しするな

医療カナビスを推進しているマリファナ・ポリシー・プロジェクト(MMP)のブルース・ミルケン広報官は、誰が大統領になろうとも少しは連邦の空気が改善されるだろうと期待して次のように語っている。

「すべては、司法省に対して、州のことには口を出するなという一点に尽きます。」

オバマ候補の医療カナビスに対する明確な発言は、3月22日に行われた専門家ゲリー・ネルソン氏のインタビュー・ビデオで見ることができる。
Sen. Barack Obama Speaks on Medical Marijuana  (2008.3.22)

アメリカ大統領候補者の大半、医療カナビス患者保護を支持  (2007.6.28)
アメリカ民主党大統領候補全員が医療カナビス支持を鮮明に  (2007.8.22)
アメリカ大統領候補たちの医療カナビスに対する見方  (2007.12.1)