ENCODスピーチ

世界の偽善を終結させよう!

ワールドワイド・マリファナ・マーチ in ニューヨーク

Source: ENCOD
Pub date: 15 May 2008
ENCOD Speech at World Marijuana Mrach, New York
Author: Job Joris Arnold
http://www.encod.org/info/ENCOD-SPEECH-AT-WMM-NEW-YORK.html


今日ここでみなさんにお会いしてお話できる機会が訪れたことにとても感謝しています。私はジョブ・ジョリス・アノールドと申します。ヨーロッパで活動しているENCODを代表してやって来ました。

ENCODは、ヨーロッパで実効性のあるドラッグ政策を求めている連合体で、現在156の団体と多数の個人が参加しています。全員が、現在のドラッグ政策から何らかの制限や影響を受けていて、そのあり方には疑問を持っています。

私たちは、今こそ、人権と科学的証拠をベースとした正しく実効性のあるドラッグ政策が必要なのだと確信しています。


1998年のファンタジー

ここに参加してほしいという話をいただいた時から、現在国連のレベルではどのようなことが進んでいるのか話してほしいと頼まれていましたが、今日は希望の持てるいくつか良いニュースをお伝えすることができてうれしく思います。

話は10年前の1998年に遡りますが、国連は、180余りの国の代表を集めて違法ドラッグに関する特別総会(UNGASS)を開催しました。アメリカのクリントン大統領を始めとして各国からは首脳級に人たちも多数参加しています。

そこで何が決まったのかと言うと、「ドラッグフリー世界は実現できる」 (A Drug-Free World: We Can Do It) というスローガンの下に、10年以内に世界から違法ドラッグの取引を根絶するという宣言だったのです。


禁止論者たちの原理

もちろんこのような全くナンセンスで馬鹿げたなファンタジーが実現するわけはありませんでしたが、禁止論者たちの考え方の根底は、次のような原理主義から成り立っています。
  • ドラッグは悪である。
  • 従って、政府はその悪から市民を守るために蔓延を阻止しなければならない。
  • それは法の力で達成可能で、抑圧政策でドラッグの使用を減らすことができる。
しかし、今ここにいる人たちはみんな次にように思っている。
  • ドラッグは、普通信じられているほど悪いものではない。
  • 他人に迷惑にならない限り、市民の一人一人に何がよくて何がダメだと説教することは政府の仕事ではない。
  • 抑圧政策でドラッグの使用を減らすことはできない。
ですが明らかに、当局者たちははっきり納得のいく理由も示さずに決定だけを市民に押し付けてくる。

これに対してわれわれは何ができるのでしょうか? 後で、彼らがごく単純な質問にも答えることを避けている具体例を紹介しますが、常に的確な質問を投げかけることで彼らのドラッグ戦争の根本原理を弱体化させることができます。

つまり、彼らが必死になって達成しようとしている目標に対して、法の力はそのように機能しているのか? もっと簡単に言えば、禁止法によって本当にドラッグの消費が減らすことができたのかどうかを問いかけるのです。


オランダのコーヒーショップの現実

私はオランダで生まれましたが、みなさんご存知のようにオランダは、チューリップとチーズと風車、それとコーヒーショップの国です。首都のアムステルダムに行ったことのある人も多いと思いますが、オランダでは、アムステルダムを含めて多くの都市のコーヒーショップでカナビスをオープンに販売しています。18才以上の成人なら誰でも買うことができるようになっています。

カナビスを買ったり吸ったりできなくするような法の力はオランダには存在しません。ですので、コーヒーショップは税金を払っています。それも 相当に多額 にです。そして、そのお金は教育やヘルス・ケアや、時には下降した経済を刺激するためにさえ使われています。

このシステムは始まってからすでに30年以上経っていますが、オランダ社会が破壊されたことなどありません。経済力も強いですし、国民の幸福自覚度を調べた国際調査でも最も高いランクの国の属しています。

こうした中で重要な事実は、オランダのカナビスの使用率が近隣のベルギーやドイツと同じ程度で、イギリスに比べれば半分にしかなっていないことです。さらに、カナビスに強い抑圧政策を取っているここアメリカではイギリスよりももっと使用率が高くなっているのです。

この事実は何を物語っているのでしょうか? 容認度合いが高いほど使用率が下がるということなのでしょうか? 科学者たちは、異なる政策を取っている国々を比較した研究を行っていますが、必ずしもそのような関係があるわけでもなく、どのようなドラッグ政策を取ったとしても、カナビスの使用率にはたいして影響しないという結論が出ています。

一方では、単純所持で有罪になった人たちの公衆衛生状態や投獄率、仕事や就学の機会などには大きな影響を与えることが示されています。しかし、禁止法でドラッグを止めさせることはできないこともはっきり示されているのです。

人々は、政府から何がよくで何がダメなのか言われても、あるいは告発される恐れがいかに大きくとも、何を使うかは自分自身で決めたいと思っているのです。このことを指摘することは非常に重要です。何故なら、禁止メンタリティの持ち主たちを不安にさせて、抑圧政策でドラッグの使用を減らすことができるという間違った自信を削ぐことができるからです。


フレデリック・ポーラックの問いかけ

今年は、1998年の10年以内に違法ドラッグを根絶するという国連の約束から10年が過ぎて、その成果を評価するための会議が3月にウイーンで開催されましたが、ENCODのメンバーたちも国連本部まで行進して、近くの大学で集会とセミナーを開きました。

国連の本会議には、ENCODのメンバーでオランダの精神科医でもあるフレデリック・ポーラックが出席して、国連薬物犯罪事務所(UNODC)のアントニオ・コスタ事務局長に次のような質問を投げかけました。

「オランダでは成人ならば誰でもカナビスを買うことができるようになっていますが、まわりの国の成人や未成年に比べてカナビスの使用率が低くなっています。抑圧政策でドラッグの使用を減らすことができるというのとは反対のこのような現実については、局長はどのように説明するのでしょうか?」

コスタ局長は、答えたくても答えられなかったのか、あるいは答えたくなかったのか分かりませんが、何も答えませんでした。このときの様子 は3日ほど経ってからビデオがYouTubeにアップされて、いかに無理やり発言が封じられたかが広く知れ渡ることになりました。このビデオは必見もので、局長のあたふた振りには笑えます。また、その後すぐに、コスタ局長の メール・ボックス には、世界中から同じ質問が洪水のように押し寄せています。


コスタ局長のコーヒーショップ訪問

だからと言って、コスタ局長が突然自分の聖戦が失敗したと悟ったなどとまでは思いませんが、少なくとも世界中からの問いかけに触発されたことでオランダのコーヒーショップを実際に見てみようと考えるようになったのだと思います。

実際、彼は4月22日にアムステルダムのダンプクリングを訪れています。ダンプクリングはアムステルダムでも有名なコーヒーショップで、ブラッド・ピットの 「オーシャンズ12」 の舞台になったことでも知られています。ENCODのメンバーでもありますが、オーナーの ポール・ウイルヘルム はコスタ局長に次のように話しています。

「私の店では多量のカナビスを仕入れていますから、局長からすれば、オランダの法の下であっても違法行為を行っているに違いないとして犯罪者と見ることもできるでしょうが、自分では自分が犯罪者だと思ったことはありません。どちらかと言えばワイン販売業者に近い。自分の売っているものに誇りを持っています。私自身もカナビス・ユーザーですが、お客さんにもヘルシーで良質な製品を楽しんでもらいたいと思っています。」

現在のところでは、コスタ局長がポールの話をどのように理解したかは分かりませんが、少なくとも話は聞いているわけですから、しばらくすれば何らかの反応が出てくるに違いありません。


単純な質問を続けることが非常に重要

私は、コスタ局長のような人たちが答えるのに窮するような単純な質問をし続けることが非常に重要だと思っています。たとえコスタ局長が理解を示さなくても、国連には一般には知られていないような人たちや政治的なニュートラルな人たちもたくさんいます。そのような人たちは、真実を前にしたときには、政治的な立場に縛られることなく内部から自分の組織のあり方に疑問を投げかけることができるからです。

実際、今回のウイーン会議の報告書では、現在のグルーバル・ドラッグ・コントロール・システムが予期せぬ結果を招いているとして、ブラックマーケットの犯罪組織が巨大化していることや、公衆衛生に対する関与が無視されていること、ドラッグ・ユーザーが社会から疎外されていること、ある栽培地を根絶しても別の栽培地が際限なく繰り返し生まれていることなどを指摘しています。この報告書にはコスタ局長の署名もあります。

これらのことは今は小さく見えるかもしれませんが、彼らのこれまでの説明の仕方に比べれば実際には地殻変動を起こしているとも言えます。スローモーションかもしれませんが、ドラッグ政策の改革の動きは着実に前進しています。立ちはだかる禁止法の巨大な壁のあちこちには、ますます亀裂が目立つようになってきています。


オランダ警察協会長もドラッグ戦争の終結を呼びかけ

また、コスタ局長のコーヒーショップ訪問の翌日、ドラッグ戦争の最前線で戦っているオランダ最大の警察組織として知られるオランダ警察協会(NPB、Nederlandse Politie Bond)のハンス・ファン・デューイン会長が、ドラッグ戦争を終結させるべきだという考え方を 公表 しています。

彼は、ドラッグ関連犯罪に対する闘いにはほとんど成果がない上に、警察リソースの重荷になっており、警察官はドラッグ犯罪の捜査にあまりの時間を取られているために、他の種類の犯罪に費やすべき時間があまりにも少なくなっていると指摘しています。これも変化の小さな兆候の一つと言えます。


結論

確かに、われわれの相手は大きなパワーを持っていますし、長く難しい闘いを強いられることは間違いありません。ドラッグ戦争の既得権益は巨大で、越えなければならない壁も高い。でも、あらゆる非暴力的な方法を駆使して闘えば、われわれはそれを乗り越えて、声をとどけることができます。

われわれの武器は真実です。最後には、真実が勝利するのです。だから、最後に勝つのはわれわれなのです。世界の偽善を終結させましょう! 禁止法フリーな世界は実現できるのです!

今日は、みなさんにご一緒できたことを大変名誉に感じています。ありがとうございました。


終わりに

最後に宣伝のようで恐縮ですが、わたしたちの ウエブサイト に是非アクセスしてください。ヨーロッパの情報をさまざまな言語で提供しています。また、カナビスだけではなくコカやポピーの個人使用のための栽培の合法化を目指してわれわれが取り組んでいるキャンペーンである 「フリーダム・ツー・ファーム」 (Freedom to Farm)についてのページもご覧ください。

われわれは政府のいかなる援助も受けていません。すべて皆さんからの献金で運営しています。どうぞご支援をお願いします。

また、アムステルダムでは、私の関係する カナビス・カレッジ が毎日無料でオープンしています。カナビスのことや産業用ヘンプの多様な利用についていろいろ学ぶことができます。また、地下には、世界で唯一合法的に公開が認められたカナビス・ガーデンもありますので、カナビス栽培の様子もたっぷりとご覧いただけます。

11月23日から27日までは毎年恒例の ハイタイムス・カナビス・カップ が行われますが、今年は同時期にカナビス・カレッジでも存続10年を祝ってフィルム・フェスティバルを開催することにしています。みなさんとそこで再会できることを楽しみにしています。

ニューヨークでのマーチの模様:
World Wide Marijuana March at New York 2008  (YouTube)

2008年国連麻薬会議(ウイーン)の Transnational Institute による詳細なレポート:
The 2008 Commissipn on Narcotic Drugs - Report of Proceedings (pdf)