アメリカ医師会 医学生部会が決議

将来の医師たちも医療カナビスを支持

Source: Drug War Chronicle
Pub date: 27 June 2008
Future Doctors Support Medical Marijuana
http://stopthedrugwar.org/chronicle/541/
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アメリカ医師会(AMA)の下部組織である医学生部会(MSS、Medical Student Section)は、今月はじめにシカゴで開催された年次カンファレンスにおいて、カナビスを医療利用できるようにするためにAMAは規制薬物分類の変更を支持すべきだとする 決議 を満場一致で採択した。この決議は、11月に予定されているAMAの暫定代議員会議の前にも投票で最終確認されることになっている。

カナビスを医療で使うことに関しては科学的な裏づけがあるかどうかが長い間懸案となってきたが、今回の部会の決議では次のように述べている。

  • 決議: アメリカ医師会は、現在、規制薬物の第1分類に区分されているカナビスの分類を見直し、他の分類の薬物で法的に認められている研究と同じ基準で研究用のカナビスを入手できるようにするために、現行の仕組みを改訂してもっと適切な分類に移行することを支持すべきである。

  • 決議: アメリカ医師会は、医療カナビスが認められた州において、医療カナビス患者が完全な法的保護を受けているのと同様に、州法を遵守して医療カナビスを患者に奨めた医師に対して、連邦が刑事訴追、民事責任、職業上の制裁措置を免除して問わないようにすることを支持すべきである。

アメリカ医師会医学生部会は、5万人あまりの会員を持つアメリカでは最大で最も影響力のある医学生組織として知られている。その他の主要な医学生組織としては、1960年代の学生運動が盛んだった頃にアメリカ医師会から分裂して結成されたアメリカ医学生協会(AMSA)も知られているが、1993年にカナビスの分類変更を支持する決定を行い、その後1999年にも医療カナビスの臨床研究を支持する 決議 を発表している。(AMSAの会員数は6万8000人とされているが、医科予備校生も含まれている)

最近では、医療カナビスを支持する医療関係グループの数は着実に増加しており、その一部には次のような団体が正式に支持を表明している。

エイズ行動委員会、 アメリカ家庭医学会、 アメリカ看護師協会、 アメリカ予防医学協会、 アメリカ公衆衛生協会、 エイズ看護師協会、 カリフォルニア家庭医学会、 カリフォルニア医師会、 カリフォルニア薬剤師協会、 コネチカット・エイズ看護士協会、 フロリダ医師会、 ロサンゼルス郡エイズ委員会、 アメリカ・リンパ腫基金、 ニューヨーク州医師会、 アメリカ公衆衛生政策協会、 アメリカ・エイズ患者協会、 アメリカ・中毒看護師協会、 ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン、 ニューメキシコ医師会、 社会的責任のための医師団、 サンフランシスコ医師会、 バージニア中毒看護師協会、 ウイスコンシン公衆衛生協会、 アラスカ・カリフォルニア・コロラド・コネチカット・ハワイ・イリノイ・ミシシッピー・ニュージャージー・ニューヨーク・ノースカロライナ・テキサス・バージニア・ウイスコンシンの各州看護師協会、……(ペイシェエント・アウトオブタイム のリストから)

このリストに最も最近加わったのがアメリカ内科医師会(ACP)で、今年の2月に、カナビスの分類変更と医療効果を調べる研究の拡充を求める 決議 を採択している。アメリカ内科医師会は12万4000人のメンバーを有するアメリカ第2の医師グループで、アメリカ医師会に次ぐ規模を誇っている。

こうした流れの中で、アメリカ医師会は依然として消極的で否定的な立場を崩していない。アメリカ医師会の医療カナビスに対する最も新しい 勧告 は2001年に採択されたもので、さらなる研究を呼びかけてはいるものの、その研究成果を直ちに正式なものとしては扱わない規制薬物の第1分類に据え置くことを主張している。今回の学生部会の決議は、この中途半端な状態を前進させることを求めている。

アメリカ医師会のメンバーで、医療カナビス推進グループとしてはアメリカ最大のアメリカン・フォー・セーフアクセス(ASA)の医学諮問委員会の議長も務めるデイビッド・オストロー博士は、「この決議は前向きで必要な正しい方向を目指したものです。AMAの代議員会議でもアメリカ内科医師会の例にならってこの決議を支持する評決を行って、患者が医療カナビスを使う必要性と安全性を政治から切り離すようにすべきです」 と語っている。

また、ASAの広報ディレクターを務めるクリス・ハーマン氏も、「医療カナビス問題にアメリカ医師会の支持が加われば、現在の流れはさらに本流となります」 と話している。

「今年始めの内科医師会の支持発表も大きな前進でしたが、多くの医療関係団体が医療カナビスの効能と恩恵について科学とエビデンスにもとずいて追認するようになってきたことを示しています。今回、医学生部会で決議が通過したこともその典型的な例と言えます。5万人のグループですから、アメリカ医学会を動かす大きな力になります。」

ワシントン医学大学の学生で今回の決議を通過させるのに活躍したASAメンバーのスニル・アガワル氏は、医学生部会が力になることは間違いないものの、他の勢力の力も結集しないと無理だとも言う。

「われわれだけでは、決議がAMAの代議員会議で取り上げられることはまず無理ですから、これから11月までの間に、アメリカ医学会に属する他の団体にも働きかけることにしています。内科医師会がやってきたように、医療カナビスの認められたすべての州で、同じ志を持つ医療グループと同盟関係を築いて協力し合っていきます。」

「ですが注意する必要もあります。アメリカ薬物中毒学会(American Society of Addiction Medicine)などのようにわれわれの考え方を葬り去ろうとしている勢力も存在するからです。彼らは比較的新しい団体なのですが、すべての人を中毒と薬物乱用の問題に引きずり込もうとする特質を持っています。もし彼らが反対すれば、代議員たちも怖気づいてしまう可能性もあります。」

しかしアガワル氏は、たとえ今年は無理だったとしても、将来の成り行きは自分の仲間たちの手に委ねられていると語っている。

「この国を代表する医学生の2団体が、双方ともにカナビスの分類変更を求めているのです。われわれはアメリカの将来の医者です。いずれアメリカの医学団体のリーダーになる人も出てきます。現在では、そうした学生たちが医療カナビスを公式に支持しているわけです。今回の決議は大きなマイルストーンと言えます。」

今回の アメリカ医師会医学生部会の決議文

医療カナビス支持団体のさらに詳細なリストは、医療カナビス教育推進グループの ペイシェエント・アウトオブタイム(POT) のサイトからダウンロードできる。
また各団体の声明文の抜粋は マリファナ・ポリシー・プロジェクト(MPP) のサイトからダウンロードできる。

アメリカ薬物規制法のドラッグ分類

アメリカ内科医師会、医療カナビスの禁止緩和を強く要請  (2008.2.15)
アメリカ精神医学会総会、満場一致で医療カナビス支持  (2007.11.7)

カナビスには医療価値がないという主張 をいまだ続けている連邦麻薬局(DEA)は、その理由として、アメリカ医師会(AMA)が、カナビスを医療価値のない危険な薬物として規制薬物の第1類のままにしておくことを提言していることを根拠に、さも医学界全体が医療カナビスに反対しているように印象づけようとしている。

しかしながら、実際にアメリカ医師会のサイトにある 医療カナビスに対する見解 を見てみると、基本的にカナビスに医療価値があることを前提に、カナビスの医療利用についてさらなる適切な対照研究を行うことや、煙によらない摂取デバイスの開発の必要性についても強調している。その上で、研究結果が十分に揃うまではカナビスを規制薬物の第1類のままにしておくことを勧告する内容になっている。

これに対してDEAは、カナビスの医学研究を妨害 して研究自体を行わせないように画策したり、研究成果を隠蔽 したりして、アメリカ医師会の主張を逆利用して、カナビスには医療価値がない根拠に仕立て上げている。