HIV患者の神経因性疼痛の対照試験
再び喫煙カナビスの効果が認められる
Source: Newswise
Pub date: 06 Aug 2008
Medicinal Marijuana Effective for Neuropathic Pain in HIV
http://www.newswise.com/p/articles/view/543099/
カリフォルニア大学サンディエゴ校医学部の研究チームは、HIVにともなう神経因性疼痛に対する医療カナビスの喫煙による効果を検証するために、プラセボを使った二重盲検による対照臨床試験を実施し、カナビスのほうが痛みの緩和効果が大きいことを見出した。
この研究は、サンディエゴを本拠とするカリフォルニア大学医療カナビス研究センター(CMCR)の研究の一環として、医学部のロナルド・エリス神経科学准教授が中心になって行われた。結果は、神経精神薬理学ジャーナル8月6日オンライン版に発表された。
研究では、オピエートなどの他の薬では適切に管理できない神経障害性の痛みをかかえる28人のHIV外来患者を対象に実施された。その結果、人数比率で、カナビス喫煙でプラセボ喫煙よりも30%以上の痛みの軽減が見られた。
エリス博士は、「HIVの患者さんにとっては神経障害は慢性的で深刻な問題ですが、現在、苦しい痛みを適切に管理する治療法がほとんどありません。しかし、今回、これまで使っている鎮痛剤に加えて、カナビスを喫煙すると痛みの緩和効果が高まることが分かったわけです。全体としては、カナビス喫煙は、耐性上昇も起こらず効果的だと言えます」 と語っている。
参加者たちには、7週間以上にわたって5回の試験が行われた。そのうち5日間の2回の試験では、無作為の選んだ参加者にカナビスとプラセボのどちらかを与えて効果を調べた。プラセボはカナビスからカナビノイドだけを抽出して取り除いたもので、どちらも国立ドラッグ乱用研究所(NIDA)から提供を受けている。
痛みの度合いについては、無痛覚症の測定・機能改善測定・精神的苦痛に関連した痛みの測定に使う標準的なテスト法のほか、度合いを言葉で表現する方法も使われた。
その結果、カナビス喫煙による痛みの緩和度合いは 「大きい」 から 「マイルドまたは中程度」 が平均的だった。また、測定された数値では、カナビス喫煙で46%の人に臨床有意性のある緩和が見られた。これに対してポラセボの人数比率は18%だった。
CMCRでは、これまでも神経因性疼痛に対するカナビスの短期的効果を調べる研究が行われてきたが、今回の結論は、それらの結果を追認・拡張するものになっている。
CMCRのディレクターを務めるイゴール・グラント精神医学教授は、「カナビスには、少なくとも短期的な効果があることを示すエビデンスがどんどん出てきていますが、今回の研究はそれにさらに加わたことになります」 と語っている。
カナビス研究はカリフォルニア州のあちこちで行われているが、CMCRは共同研究や支援にも取り組んでいる。研究の焦点は、1999年の 全米アカデミー医学研究所(IOM)報告 と1997年の 国立衛生研究所のカナビスの医療利用に関するワークショップ でカナビスに医療恩恵の可能性があると指摘された疾患と病状に当てられている。
グラント教授によれば、今回の研究は、カナビスには神経障害性の痛みを緩和するエビデンスを備えたものとしては、CMCRで4番目のものになる。これまでの3つの研究は次の通りになっている。
- Donald I. Abrams, M.D., Professor of Clinical Medicine at UCSF, who reported efficacy in short-term treatment of HIV neuropathy (Neurology, 2007, 68:515-521);
カナビスの喫煙でHIVの神経障害疼痛が顕著に軽減 (2007.2.15)
- Mark Wallace, M.D., Program Director for the UCSD Center for Pain Medicine, who found that normal volunteers subjected to chemically induced pain which mimics neuropathy also responded to medium doses of cannabis (Anesthesiology, 2007, 107(5):785-796);
喫煙カナビス、神経疼痛に治療効果、THC摂取量、中程度が治療域、過度は逆効果 (2007.10.24)
- Barth Wilsey, M.D., Director of the UC Davis Analgesic Research Center, who also reported benefit from smoked cannabis in a group of patients with neuropathy of multiple origins (Journal of Pain, 2008 Jun;9(6):506-21).
喫煙カナビスで中枢および末梢神経障害の痛みが軽減 (2008.5.8)
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Ellis et al. Smoked Medicinal Cannabis for Neuropathic Pain in HIV: A Randomized, Crossover Clinical Trial. Neuropsychopharmacology, 2008; DOI: 10.1038/npp.2008.120
カリフォルニア大学医療カナビス研究センター (CMCR)
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現在でも、アメリカでは、カナビス研究は国が独占的に栽培し、NIDAが供給するものしか使えないようになっている。数年前までは、それを口実に、カナビスの恩恵を調べようとする研究にはカナビスを支給せず、実質的に行われないように画策してきた。
しかし、CMCRが設立されたことにより、研究費を自前調達することを条件に小規模の研究を認めざるを得なくなった。その結果、喫煙カナビスを支持するエビデンスが噴出してくるようになった。
アメリカ政府は、これまで、カナビスには信頼に足る医療効果がない と盛んに主張し、特に喫煙カナビスは受け入れられない と攻撃し続けてきたが、ここ2年間の研究でその根拠がほとんど成り立たなくなってきている。