最新の科学を無視して

ドラッグ戦争に中毒するアメリカ政府


ロブ・カンピア
マリファナ・ポリシー・プロジェクト(MPP)代表


Source: AlterNet
Pub date: September 08, 2008
Lunatic Drug Warriors Still Ignore Powerful Pot Science
Author: Rob Kampia
http://www.alternet.org/drugreporter/97927/
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ちょうど20年前の1988年9月6日に連邦麻薬取締局(DEA)の主席行政法判事が画期的な判決を出したが、今年20周年を迎えたワシントンDCではそれを記念する行事や式典は何も行われなかった。それは、この歴史的な判決が出された日以降、アメリカ政府は何百万人という人々を不必要に奈落に突き落としながら、判決の無視を決め込んできたからだ。

だが実際のところ、大半のアメリカ人はそのような判決が出された事実すら知らない。

カナビスは現在でも連邦法では、乱用の恐れが高く医療価値もないとされ医療使用が禁じられた 規制薬物 の第1類に分類されているが、1970年の制定当初から医師が処方可能な分類に格下げすべきだという行政訴訟が繰り返し起こされた。

こうした訴えに対してDEAも1986年に公聴会の開催を合意し、同年夏からフランシス・ヤング判事が広範で徹底した公聴会を開いた。感動するほどおびただしい数の専門家たちが証言を行い、その文書総数は数千ページにも及んでいる。

最終的にヤング判事は、詳細な科学的エビデンスで固められた69ページの 判決文 を発表した。その中で彼は、カナビスを第2分類に移すことにはいろいろ無理があるとしながらも、規制薬物法の規定に従ってカナビスを第1分類から第2分類に移すことを勧告する結論を出した。

「天然のカナビスは、治療効果を持った物質としては、人類に知られた中でも最も安全なものの一つであり、日常的に管理された医療行為の範囲内で安全に利用できることは、どのような分析においても十分に理にかなっている。…」

「ここに集められたエビデンスは、カナビスには明らかに、重い病気を抱える非常に多くの人々の苦痛を和らげる可能性があり、実際に受け入れられており、また医療治療の管理下においても安全に使われてきたことも示している。こうしたエビデンスを見れば、患者の苦しみとカナビスの持っている恩恵との間にDEAが立ちはだかることは、道理に適わなず恣意的で偏っていると言わざるを得ない。」

この文はカナビスの合法化を求める運動家が書いたものではなく、連邦のドラッグ法の執行に責任を持つ機関のトップである行政法の主任判事によって書かれたものであることを忘れてはならない。

しかしながら残念なことに、この判決には強制力はなく法的には必ずしも従う必要のない勧告でしかなく、実際6年後にDEA当局のトップはヤング判事の勧告の受け入れを拒否している。また、ワシントンDCの巡回控訴審も、当局には行政法判事の決定を無視する権利があると追認する判断を示している。

連邦政府が自分自身で行った調査の結果を無視することにしたことで、医療カナビス議論は今日に至るまで厳しく対立する議論が続いている。現在では、連邦の対処の仕方に我慢できなくなった12州がカナビスの医療使用を認める州法を成立させている。この11月の選挙でミシガン州の医療カナビス住民所例が通過すれば、医療カナビス法を持つ州は13州となり、およそアメリカ人の4人に一人がその対象に含まれることになる。

だが、医療カナビス患者個人は、州法で実質的にほとんど保護されるとは言え、完全に連邦法の禁止から逃れられるわけでもない。実際、医療カナビス州法を持つ州に住む患者やケアギバーでも、逮捕されたり、脅されたり、あるいは子供を取り上げられたりもしている。

一方では、カナビスの医療効果を示すエビデンスも増え続けている。連邦政府がカナビスの医療効果を検証するように諮問したアメリカ・アカデミー医学研究所も、1999年にカナビスには間違いなく医療効果があるする 報告書 を発表している。

さらに最近では、カナビスが、多発性硬化症やHIV/エイズなどにともなう治療の難しい特別な神経性の痛みの緩和に効果のあることを示した新しい臨床研究も発表されている。また、カナビスには、C型肝炎やHIVの治療に使われている強烈な医薬品が引き起こす吐き気や嘔吐に対して緩和効果があるので、カナビスを使うことで、そうした医薬品を使った治療計画に最後まで耐えて生き長らえる患者が増えるとする研究もある。

このように、アメリカ政府は終始科学を無視してきたために、医療カナビスから恩恵を受けてきた人たちばかりではなく、恩恵を受けられる可能性のある何百万人もの人たちまで不必要な苦しみを課されてきた。2009年には新しい大統領と新しい議会が誕生するが、彼らは、連邦の強固な妨害が続いてきたこの嘆かわしい壁を一刻も早く取り除かねばならない。

フランシス・ヤング判事の判決文   Sep 6, 1988
カナビスの医療利用の歴史

最近でも、DEAをめぐる煮たような行政訴訟が続いている。アメリカでは現在、カナビスの研究は連邦の許可を得て、アメリカドラッグ乱用研究所(NIDA)が独占的に栽培し供給するカナビスを使わなければならないことになっている。

しかし、NIDAの供給するカナビスは品質の劣っているだけではなく品種も限定されているために、マサチューセッツ大学の研究者たちが研究用に自分たちでカナビスを栽培することを認めるようにDEAに申請していた。

これに対して、DEAのメリー・エレン・ビッツナー行政法判事は、2007年2月に、学術研究目的でのカナビスの自家栽培が公共の利益に合致するものだという判断を示し、2004年にDEAが申請を拒否したことは不適切だったと認定した。しかし、1年半を経過した現在でもDEAはこの勧告にも何の決定も出さずに無視を続けている。

DEA行政法判事、連邦の研究用カナビス独占供給体制に反対判決  (2007.2.12)
下院議員が連名でDEAに研究用カナビスの民間栽培を認めるように要求  (207.9.20)