ドイツ・バイオノリカ製薬

産業用ヘンプからTHC製剤

2010年の認証をめざす

Source: IACM
Pub date: 2 Aug 2009
Bionorica aims for getting an approval for
a dronabinol preparation in Germany in 2010
http://www.cannabis-med.org/english/bulletin/
ww_en_db_cannabis_artikel.php?id=301#2


薬用植物をベースにした医薬品の開発で知られるドイツ・バイオノリカ製薬(バイエルン州ノイマルクト郡)は、天然のカナビスを使って、エイズ・癌・多発性硬化症の治療のための医薬品を製造して臨床試験を進めているが、7月17日にメルケル首相を招いて行われた同社の創立75周年記念式典で、マイケル・ポップ社長は来年終わりまでに医薬品の認証を獲得したいと語った。

バイオノリカ製薬は2002年にTHCの製造を開始しているが、その特徴は、合法な産業用ヘンプを原料にして得られたカナビジオールを異性化してTHCを製造している点で、カナビス栽培の禁止をめぐる問題を回避している。製品は原料として製造キットとともに薬局に提供され、調剤できるようになっている。

バイオノリカ製薬の従業員は870人で、年間売上は1億3000万ユーロ。薬用植物の品質・効能・安全性に関する臨床試験や薬理試験の経験が豊富で定評がある。

バイオノリカ製薬の歴史

産業用ヘンプのTHCは0.3%以下なので精神効果はなく、乱用されるカナビスとは違うとよく言われるが、実際にはTHCの含有率が少なくても、化学構造が非常に似ているカナビジール(CBD)をたくさん含んでいる品種もある。

さまざまなバリエーションはあるが、一般的には熱帯地方のカナビス・サティバはTHCが多く、中緯度以北ではCBDが多くなる。これは日照時間が長くなるほど生育期間も長くなって、CBDがTHCに変化する量が増えるためだと考えられている。

もともと植物自体にCBDをTHCに変える機能が備わっているわけだが、バイオノリカ製薬はその変化を化学的に誘導してTHCを製造している。

純粋のCBDには精神作用はないが、鎮痛や抗生といった効果が認められている。ただ、CBDはカナビノイド・レセプターとは直接結合しないので、THCが微小で大半がCBDのカナビスを吸っても、気だるく、心がふさぎ、体を動かすのがおっくうになるだけで使われることはない。

そのために、医療カナビスとしては、CBDとTHCをバランスよく含んでいる品種が使われている。バイオノリカ製薬の製品は天然のカナビスから作った純粋のTHCだが、将来的にはCBDも含んだ製品が提供されるのでは…?

産業用ヘンプのTHCが0.3%以下というのは禁止法をすり抜けるための一種の方便で、産業用ヘンプから純粋のTHCが製造できるという事実はそれを端的に物語っている。(化学的に変換する方法はすでに1940年代のはじめには知られていた)

実際には、必ずしもTHC0.3%以下のヘンプが繊維などの産業用に最適というわけでもない。0.3%という数字の由来は、1970年代にカナダの研究者が、十分な精神活性を得るにはどの程度のTHCを含むカナビスが必要かを調べるために、世界各地からカナビスの種子を集めてオタワで栽培した結果から来ているもので、繊維などの産業用カナビスに適した品種を見つけるために行われたわけではない。

実際、この研究では、繊維や油や鳥の餌用に栽培されているものでもしばしばTHC含有量が高いことが報告されている。確かに、インドやタイ、あるいは日本で繊維用に栽培されているカナビスでも効力が強いものもある。

もともとカナビスの成長は気温と日照によって大きく異なるので、産業用ヘンプの0.3%基準はカナダやヨーロッパのような寒冷地には適応しやすいが、熱帯地方に多い貧しい国には当てはまらない。0.3%を世界的な基準にしようとする動きは、「エコ」の名のもとに利権を得ようとするヘンプ産業と先進国側のエゴの押し付けとも言える。

カナビスが合法であれば、0.3%という数字は何の意味もなく、貧しい国がわざわざ先進国の特定の種苗会社から種子を購入しなければならないようなこともおこらない。

2008年のカリフォルニア州住民発議でカナビスの合法化を目指していたジャック・ヘラーやエディー・リープも、産業用ヘンプが健康に育つためには8%程度のTHCが必要だと主張している。

カナダ、産業用ヘンプを合法化、何故THCは0.3%以下に制限されたのか  (1998,7.1)