ある大麻裁判を傍聴した。大麻取締法という悪法で被告人にされてしまった若者が腰縄に手錠をされて入廷したとき、ドアのすぐ近くに座っていたお母さんは苦しげに俯いて嗚咽をこらえていた。
若者は大麻を無免許で栽培していた。営利目的ではなく、友人に譲渡することはあった。
裁判を傍聴するのは初めてだったが、こんなものはペテン、詐欺、でっち上げ、デタラメだと強く感じた。
エリートとして飼育されるなかで人間性を失った上に自分はエライと錯覚している落ち着きのない狗のような検事。ワンワンと芝居がかった口調で、
「今日も友だちが傍聴に来てくれているようですが、大麻を吸っているような親友たちとは今後一切付き合わないと約束できますか?」
などと意図的に愚劣なことを言うかと思えば、ちゃんと勉強してないことを露呈するかのように、マジック・マッシュルームというキノコのことを、
「被告人はマジック・ルームを所持し・・」
などと、お薬の名前を何度も間違えたりして、出直してこいよな、ヤブ医者、という感じだった。
裁判長も横柄な野郎で、狗がなんだかキャンキャン早口で読んでるのを退屈そうに頬杖突いて聞いてたり、大麻の合法化なんて話は今に始まったことじゃなく昔からあって、だけど大麻取締法はなくならないし、これからもなくならないと思うよ、というようなコイツふざけんな何様的な寝言をこいたり。
このような予断を持った化石頭に公平な判決が下せるのか、裁判長、甚だ疑問であります。
弁護士もなぁ、弁護する気があんのかよ、ってな頼りなさ。国選なんてこんなもんかい。
被告人にされた若者は立派だった。
「大麻は自分に合っていると思った」
「大麻を吸うと癒されるっていう感じ」
そんな発言もした。
大麻取締法についてどう考えているか狗に問われたとき、彼は、大麻取締法は戦後米国に押し付けられたものでロクに議論もしないで立法化されたと本で読んで勉強しました、と答えた。
その大麻取締法が今もなくならずに存在しているのは何故だと思うか、と狗が重ねて聞いた。彼は、「それは僕には分りません」と答えた。狗は、大麻取締法が今でも必要だから、と答えさせたかったのだろう。継ぐ言葉に困った狗は気の抜けた調子で、「ああ、そうですかぁ」と間抜け面を見せた。
自分に合っていると思った大麻をそう簡単にやめられないだろうと狗に突っ込まれた若者は、面会に来た母親を見てこんなに苦しい思いをさせてはいけないと思った、と詰まる胸に途切れ途切れ、話した。
若者の勤務先の社長は、大麻で逮捕されたことを知った上で、彼の雇用を続けると弁護人に話したそうだ。
最後まで、若者は立派で、検事は自分を正義のエリートだと信じ込んでいる哀れで無様な狗だった。
閉廷後、廊下で、精神的に酷く参っている様子のお母さんに声をかけたかったが、叶わなかった。
息子さんは実に立派だった。彼がこころの優しい理の立つ男であることがよく分かった。それは逮捕される前も今も変わらないことは、お母さんご自身がよくご存知なのではないでしょうか。
大麻取締法違反での逮捕。孤独な取り調べ。苦しい試練だったろうが、きっと彼はより大きな人間に成長するだろうと、私は確信に近いものを感じた。
慇懃な裁判長、自分を正義だと勘違いしている検事、法曹利権に巣食う寄生虫。
「本当の意味で一番かわいそうなのはあいつらだよ」
息が詰まるような裁判所から出て、同行した友人が言った。