上告趣意書原稿



最高裁判所 御中

被告人 白坂和彦

 


 じめじめした鬱陶しい大麻取締法のような季節になりましたが、最高裁の判事さんたちはいかがお過ごしでしょう。

 世相、なんだか本当にどうしようもなく、寒々とする言葉もないような事件が頻発していますが、ここらで一発、最高裁の判断で大麻を解放し、毎年八月八日を大麻の日とし、国民の祝日にして、全国津々浦々、地場産の大麻で一服つけて、一休みすることにしてはいかがでしょうか。その節は栽培のお手伝いなど喜んでいたしますのでお気軽にお申し付け下さい。

 さて、早速ですが標記の件、私はもう、殆んど呆れてしまって書く気も起こらないほどです。
 論破されても気が付かない奴が時々いますが、まさか裁判でこんな思いをするとは思いませんでした。

 日本の司法府というのはこの程度か。

 今のところ、私は強くそう感じています。

 一審でも、二審でも、大麻取締法は生存権をも侵害する憲法違反の法律だと私は主張してきました。しかし、一審でも、二審でも、そのことには全くほっかむりして実に見事に完全に無視し、20年も前の判例を引っ張り出して司法判断のまやかしを正当化しています。

 大麻の無害性や有用性を証明するその後の研究データを提出しているにも拘らず、それらは都合よく一切黙殺し、新しい判断から逃げ、相も変らず司法の独立性を自ら葬っているのです。

 言ってみれば、民主主義に対する裏切りですな。
 な〜にが三権分立さ。三権一律じゃねぇか。

以下、>印付きの行は二審判決の引用です。

> 各論旨は、いずれも弁護人の上記釈明のとおりであって、要するに、大麻取締法24
> 条1項及び24条の2第1項は憲法13条、14条、31条及び36条に違反し、無効であ
> るのに、これらを適用して被告人を有罪とした原判決には、判決に影響を及ぼすこと
> の明らかな法令適用の誤りがある、というのである。

 なんか忘れてない?
 俺は生存権(憲法25条)にも違反していると、逮捕されたその日からずっっっっっっと、検事調べでも言ってるでしょ。
「要するに」とかいって、要約しすぎです。まるで書いてなかったかのように一言も触れずに無視するその手口は文字通り見事としか言いようがなく、舌を巻く思いです。

 大麻が各種の疾病に対し医療効果があり、歴史的にも古くから世界各地で民間療法的にも利用されていて、現代ではその薬学的効果は科学的にも証明され、すでにオランダやベルギーなどでは薬剤として販売されていることは控訴趣意書にも書いた通りです。

 大麻にはかつて考えられていたような強い毒性はなく、カフェインと同程度であることは米国国立薬物研究所の研究発表でも明らかであり、世界的に認知されている公知の事実です。下の表、見てみ。昭和60年の判例から約10年後の研究結果だぜ。


アメリカ国立薬物研究所発表(1994年NYタイムズ紙)
1(最も安全) 〜 6(最も危険) の数値での比較

 
禁断症状
強化刺激
耐性
依存性
陶酔度
平均値
大 麻
1
2
1
1
3
1.6
アルコール
6
4
4
3
6
4.6
ニコチン
4
3
5
6
2
4.0
カフェイン
2
1
2
2
1
1.6
コカイン
3
6
3
4
4
4.0
ヘロイン
5
5
6
5
5
5.2

 この研究結果を否定するデータを示して下さい。

> 大麻が一定の薬理作用を有することは公知の事実であり、国家が国民の生命、
> 精神の安全に対する危険を防止する見地から、法律をもって大麻の使用につな
> がる所持や栽培等の行為を規制し、その違反に対して罰則をもって臨むことには、
> 十分合理性が認められるところであって、当裁判所も、大麻取締法の前記各条
> 項が違憲のものとは考えない。

 だから、何度も言ってるように、その薬理作用には医療効果があるんだよ。何度言ったら分かるの? それなのに、現在の大麻取締法は研究すら禁じてんだよ? おかしいと思わないの? 法に従って動くほかない行政(麻取り)が言うなら仕方ない面もあるけど、司法が言っちゃいかんだろう。何のための裁判所だよ。

 大麻を嗜好目的で利用しても侵害される保護法益はないし、使用者本人にとってもカフェインと同程度の毒性しかない。

 病人が使うと、痛い、食べられない、眠れない、といった苦痛が和らぐ。

 そのような大麻を、「国家が国民の生命、精神の安全に対する危険を防止する見地から」、最高で懲役7年というチョー過剰な罰則を持って取り締まりることは、どう考えたっておかしいでしょう? 前提となる事実を認めようとしない司法の硬直した権威主義には辟易するばかりです。

 「大麻取締法の前記各条項が違憲のものとは考えない」? 
 だから、その根拠を、データを示して下さいな。俺だって大麻取締法が違憲じゃないとは考えないよ。

 先進各国では民間の製薬メーカーを含め、多数の研究機関が大麻の医療効果についてさまざまな研究を行っており、産業面でも利用されているのに、わが国では大麻取締法という足枷で研究すら禁じている。

 それこそが日本の国益を大きく損なうものであり、大麻取締法こそが保護法益を侵害しているのです。

> 所論の前提とする大麻に有害性がないなどといった主張は、過去同種事案において
> 何度も繰り返されてきたものにすぎず、その理由のないことも、原判決が引用するもの
> を含め、多くの裁判例が示すとおりである。したがって、所論は採用の限りではない。

 眠くなっちゃうね。いつまでそんなこと言い続けてるつもりさ。
 俺の原審での判決が引用しているのは昭和60年の最高裁決定とやらだぜ。
だから、俺はそれ以降の世界各国の、多種の研究機関の研究結果を報告書として出しているのに、それを全く無視しておいて、「理由がない」と言う。理由を提示しているのに黙殺する裁判所。

 どこに公正さがある?次のなかから選びなさい。

1.AIDSの時にファイルを隠してあった厚生労働省のロッカー
2.坂口厚生労働大臣のパンツの中
3.闇の中

 正解は3番ですが、「理由がない」のではなく、こっちが出している理由を、ただ単に裁判所が黙殺してるだけ。
  こんな判決、採用の限りではない。

> 所論はまた、飲酒や喫煙についてほとんど規制されていないのに、それらよりも危険
> 性や有害性の低い大麻の所持や栽培について懲役刑を科すことは、法の下の平等
> を定める憲法14条のほか、罪刑が適正であることを要求する同法31条や残虐な刑
> 罰を禁止する同法36条にも違反する、と主張する。しかし、大麻の有害性が低いな
> どという前提自体が失当であることは前記のとおりであり、また、大麻取締法の法定
> 刑が過度に重いとはいえないことも原判決が説示するとおりである。したがって、この
> 所論も採用できない。

 「大麻の有害性が低いなどという前提自体が失当である」だってさ。ハハ、もう言葉もないや。だったらせめて、上記の米国国立薬物研究所の研究結果を否定するデータを示してよ。

 こっちが出してる研究結果などの証拠をまったく無視しておいて、一言も触れずにおいて、「前提自体が失当」だって。
 どっちがだよ。よく恥ずかしげもなく言えるね。こっちが恥ずかしくなるよ。

> 所論はさらに、本件大麻の栽培には医療利用目的も含まれており、大麻取締法
> がこのような医療利用目的の場合にまで大麻の栽培等を規制するのは不当であ
> る、と主張する。しかし、仮に、被告人が医療利用目的をもって大麻を栽培してい
> た(このこと自体、何ら裏付けがあるわけではない。)としても、被告人は医学や薬
> 学等の専門知識を有する大麻研究家ではないのであるから、そのような目的で大
> 麻を栽培等することが危険、有害であることはいうまでもなく、それが規制されるの
> は当然といわなければならない。

 じゃ、聞くけどさ、医学や薬学等の専門知識を有する研究者ですら規制されているのはどういうことなの?
 それに、「医学や薬学の専門知識を有する大麻研究家ではない」から「危険、有害」だという判断こそ、ありもしない大麻の危険性、有害性を前提としており、それこそ根拠がないね。
  植物学の研究家ではないのにコーヒーを栽培して飲むのは危険で有害だと言うに等しい。

 厚生労働省が大麻を有害だとする研究データを持っていないことは、この問題の専門家である丸井英弘弁護士が昭和61年の伊那地裁で厚生省麻薬課長(当時)を証人尋問した際の供述でも明らかであり、また最近では大麻の非犯罪化をめざす市民団体カンナビストの会員が行った厚生労働省に対する情報公開請求への回答でも明らかだ。

 日本のお役所は大麻の有害性を証明するデータをまったく持っておらず、海外の文献に情報を頼っている。
 そして、その海外の研究は、大麻にはカフェインと同程度の毒性しかなく、犯罪の原因になることもないことを明らかにしている。
 医療的にも有効性が確認され、産業面からも環境面からも大いに注目されている大麻を、厳しく取締り、逮捕し、懲役刑を課すことは国家権力による人権侵害以外のなにものでもない。

> 以上のほか、所論がるる主張するところにかんがみ、更に記録を調査、検討しても、
> 大麻取締法が違憲無効であるとする根拠はなく、各論旨はいずれも理由がない。

 何言ってんだか。
 もう一回、ゆっくり読んでみ。
 理由がないのは判決です。
 頭を冷やして考え直してくれや。

 立法の問題であるとする点について。

 立法府が、ある法律を作った。その法律で逮捕された者が、その法自体が人権侵害で憲法違反だと主張し裁判で争われた。ところが司法府は「その法律が人権侵害で憲法違反であるかどうかは立法府の裁量で決めることだ」と判断そのものから逃げてしまった。

 しっかりしろよ、司法!
 いつまでもそんなじゃ「司法」と書いて「あほう」と読むぞ。

 こいつは泥棒だ!と言ってるのに、そいつが泥棒かどうかは泥棒の決めることだと言うようなものだ。

 学校で三権分立なんてデタラメ教えるのやめるこったな。

 これからもずっと何度でも言いますが、ここでは最後です。

 大麻取締法は糞法であり、悪法であり、人権侵害法であり、明確に憲法違反です。

 こんなことで逮捕され、大麻に偏見を持つキミたちのような連中に家族までもが蔑視され、ひどい思いを強いられる。会社をクビになったり、子どもが苛められたり。

 最高裁なんだからさ、逃げずにマトモに答えてくれよ。すでにほとほと呆れ返ってるけど、これ以上幻滅させないでほしい。 この邦に生まれ育ったことを感謝している日本国民の一人として。

 判決によっては、私は今後「最高裁」と書いて「サイテー裁」と読むことにする。

 

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