平成16年(う)第57号大麻取締法違反被告事件
被告人 白坂和彦
控 訴 趣 意 補 充 書
平成16年3月15日
大阪高等裁判所第4刑事部 御中
被告人 白坂和彦
平成16年2月19日付提出の控訴趣意書を下記の通り補充する。
記
1. 大麻の事実について
率直に言って、私は虚しさを感じている。
悪法の執行が、平穏に暮らす人々の生活を破壊している現実、
それが憲法違反であることを、
これ以上、どのように証明しろというのだろう。
原審で、弁護人は下記の項目について論証した。
1.大麻の危険性・有害性について
(1)大麻の依存性
大麻には耐性もほとんどなく、大麻に対する身体的依存は皆無である。
(2)大麻の毒性
「大麻の使用は薬物問題ではあるが、その毒物学的意味は不明である。」。大麻には毒性もない。(報告書1)
(3)大麻の有害性
「マリファナを批判する人々は有害作用に関する数多くの科学的データを引き合いに出すが、重篤な生物学的影響がある とする主張の大部分は、比較的大量の使用者、免疫学的、生殖機能についての積極的な研究においても、ほとんど立証 されていない」。マリファナにはその煙の吸引に関してタバコと同程度かそれ以下の有害性しかない。(報告書1)
(4)大麻使用による他者に対する危険性
「マリファナが暴力的ないし攻撃的行動の原因になることを示す証拠もない」
「マリファナの使用は、暴力的であれ、非暴力的であれ、犯罪の源ともならないし、犯罪と関係することもない。」
マリファナは他者の法益を侵害する危険性もない。(報告書3)
2. 大麻の医療利用
大麻は何千年にもわたって医薬として使われてきた。
中国で紀元前2800年頃、初めて出版された漢方薬の概説書「神農本草経」は大麻を便秘、通風、リウマチ、生理不順の治療薬として推奨している。
アラブ医学やイスラム系インド人の医学ではハシーシュ(大麻樹脂)や「ベンジ」(マリファナ)について多くの記述が見られる。大麻は淋病や下痢、喘息の治療薬として、また食欲増進剤、鎮痛剤として利用された。
大麻は中世ヨーロッパの民間療法でも広く知られ、ウィリアム・ターナー、マッティオーリ、ディオスコバス・タベラエモンタヌスの本草書でも治療効果のある植物として記述されている。
日本でも繊維用ばかりでなく、医薬品として用いられてきた。
日本薬局方でも1886年に交付されて以降、1951年の第5改正薬局方までマリファナが「インド大麻草」、「インド大麻草エキス」、「インド大麻チンキ」という製品名で収載され、鎮痛剤、鎮静剤、催眠剤などとして用いられてきた」(報告書3)。
付け加えて言うなら、
オランダ
イギリス
カナダ
ドイツ
ギリシャ
スペイン
フランス
イタリア
ポルトガル
スイス
アメリカの12州
オーストラリア
ニュージーランド
インド
ジャマイカ
ベルギー
ルクセンブルク
デンマーク
(順不同)
以上のような数多くの国や地域で、大麻の個人使用目的での少量所持や栽培は逮捕しないか、あるいは、医療目的でも安心して、
「お医者さん、大麻を下さい」
と言える社会が実現しています。
私は、最終意見陳述で、医療目的ですら認めないのはおかしい、司法としてどうお考えか、と聞いたのに、お答えはありませんでした。
裁判官すら答える言葉を持たない現状を、一刻も早く改善しましょう。
これ以上、悪法による被害者を出すのはやめましょう。
大麻を、自己消費用の薬草として栽培・所持すること。
それを厳罰をもって禁圧するのはどう考えてもおかしい。
それが今や世界の常識であり、世界的に公知の事実です。
医療目的の大麻利用を、現在の社会に無理なく調和的に取り込む必要があることを認めて下さい。
現実に、必要としている病人がいるのです。
医療的利用はもちろん、嗜好目的での所持・栽培で逮捕勾留するのもやめて下さい。
アルコールが放置されているのに、遥かに安全な大麻をなぜこうまで差別的に処遇するのですか?
ビールを飲みながら本を読む愉しみと何が違うというのでしょう。
原審は判例として、「最高裁−小法廷昭和60年9月10日決定」を引いています。
19年前を根拠にしているのです。それ以降の研究成果を報告書でご参照下さい。
その次に引いているのが、「東京高裁平成6年2月23日判決」。8年前。
大麻取締法の罰則規定に関する評価は次のようなものです。
「現行の大麻取締法による規制及び処罰の範囲・程度が合理的根拠を欠き、立法における裁量の限界を逸脱しているものと認めることはできない。」
今は平成16年。2004年です。
新世紀の現在、「現行の大麻取締法による規制及び処罰の範囲・程度」は、非人間的、非人道的極まりない、日本の恥です。
大麻の事実を、研究の上で確認し、容認している先進各国の基準からも大いに立ち遅れ、埃を被った判例を引っ張りだして拘泥し、罪もない者を犯人として仕立て上げ、昨年はなんと2000人超をも逮捕し、その生活を破壊しています。法の名の下に、あなたたちが。
立法が、何の罪もないところに犯罪をでっちあげ、
行政が、無実の者に手錠をかけて連行し、
司法が、非人間的な過剰な罰を与え続けているのです。
罪もない者を犯罪者にし、社会的・経済的制裁を加え、その家族や近親者にも言いようのない精神的苦痛を与えているのです。
こんなデタラメな法は、とっくの昔に「合理的根拠を欠」いています。
そもそも、立法当初から合理的根拠などなく、敢えて合理的な根拠と言えば、ただ単に占領国・米国の都合で制定されたに過ぎません。
その米国でさえ、大麻を日本ほど禁圧はしていないし、クリントンさんは肺までは入れなかったそうですが、今や民主党の大統領候補には医療大麻の容認を公約する人や、大麻喫煙の経験を明らかにしている人も複数います。
麻は、我が邦では、古来より米と並ぶ大切な栽培作物です。
戦争に負けて米国に大麻の取り締りを押し付けられるまで、二千年以上ものあいだ、我が祖先たちは悠久と麻を育ててきました。
伊勢神宮で配布する天照大神のお札を「神宮大麻」と呼ぶように、麻は、我が邦にとって、神につながる道でもあります。
ひとびとのこころが荒れ、邦が混沌としてしまった今こそ、本物の大幣で穢れを払う必要も増しています。
この悪法には立法目的も書かれておらず、使用罪もありません。
使用罪もないのに、「その使用につながる所持や栽培の規制には合理的な根拠がある」と、司法自らが法外の解釈を加え、さらに、この法の非合理性を主張するのは態度がよくないと、司法自身が、思想と良心の自由を平然と侵害しているのです。
現在、大麻に関する研究報告は、報告書でも示した通り、大麻取締法とその執行実態が、極めて違憲性の高いものであることを、ますます浮き彫りにしています。
それを司法が認めないのでは、三権分立など、絵に描いた餅です。
司法の判断放棄が、大麻取締法による人権蹂躙を増長している現実を、この際、裁判官諸兄にはよく認識して頂きたいと存じます。
大麻を栽培して、人にもお裾分けしたり、薬草としても使う。
ただ、それだけのことで、なぜ7年も刑務所に入らなければならないのか。
なぜ人殺し並みの罪を負わなければならないのか。
裁判官には、一人の人間として、冷静な判断を願うばかりです。
あくまでも現行のような扱いで良いのだとするなら、原審で提出した報告書を否定するデータを示して下さい。
原審で指摘した「生存権の侵害」についても、お答え下さい。
そもそも、研究すら禁止しておいて、有害も無害もないものです。
裁判官諸兄は、吸ったことはあるのでしょうか?
検証が必要ではないでしょうか。
そうすれば、きっとはっきりと分かります。
大麻取締法は憲法違反です。
こうして発言できることに感謝をこめて。
以上