国選弁護人による上告趣意書


平成16年(あ)第956号大麻取締法違反事件

被告人 白坂和彦

上 告 趣 意 書

平成16年6月 日

最高裁判所第三小法廷御中

弁護人弁護士 織 間 三 郎

頭書被告事件の上告趣意は次の通りである。

1   本事件について第一審判決は「大麻取締法第24条1項、第24条の2第1項を適用し、被告人を懲役3年、執行猶予5年の有罪とし第二審判決も第一審判決を支持し控訴棄却の判決を下している。
2   しかしながら、第一、二審の弁護人はいずれも大麻取締法が違憲の法律であることを主張し、被告人の無罪を主張している。
3   本弁護人も以下の通り大麻取締法は違憲で有る事を主張するものである。
  1 そもそも大麻取締法は昭和23年に制定され、昭和38年(1963年)に現在のように重罰を科するように改正されたものである。それは大麻が非常に毒性が強く、社会に流される害悪も強いと云った認識、主張からなされて来たものである。
  2

しかし、大麻についてその後研究がなされ大麻についてはそれ程の毒性も害悪も無い事が明らかになって来ているものである。
即ち第一審弁護人提出の報告書(1)のメルクマニアル第17版日本語版(1999年12月発行)、報告書(2)の第二東京弁護士会司法制度調査会の調査報告書、報告書(3)の丸井弁護士の法学セミナー掲載の大麻に関する論文、報告書(4)のマリファナの科学(2003年5月発行)等により大麻の毒性、害悪はアルコールやタバコの毒性や害悪より少ないことが研究され立証されて来ているのである。
そして、多くの国で取り締まりを緩和して来ている経過がある。

  3 しかるに我が国に於いては昭和38年(1963年)改正の儘の法律をもって未だに強く、厳罰をもって規制している。
しかしこれは国が必要な研究を怠り、その毒性、害悪の少ない事を無視し昔の儘の法律を放置している結果である。害悪と比較し衡平を保った立法をすべき努力を怠っている事に由来している刑罰である。
4   大麻取締法は前記報告書に明らかな如くタバコやアルコールより毒性、害悪の少ない事が明らかな大麻をタバコやアルコールより強く規制処罰の対象としているのであるが、これは憲法14条、13条、31条に違反しているものである。
  1 即ち、憲法14条「法の下の平等」は立法においても刑罰の衡平、平等を考えるべきで、刑罰は社会に対する害悪の軽重より衡平、平等であるべきであると考える。タバコ、アルコールより毒性や害悪の少ない大麻をタバコ、アルコールの規制より重く規制されている事は衡平、平等を欠く法律であり憲法14条に違反するものである。
  2 憲法13条「個人の尊重、幸福追求の権利」の規定にも違反するものである。
タバコやアルコールより害悪や毒性の少ない大麻についてタバコやアルコールより重く規制し且つ処罰する事は何等の理由の無い事である。理由の無い規制自体個人の行動を理由も無く規制し、幸福追求の行動を制約し憲法13条に違反するものと云える。
  3 以上の規制は理由の無い規制と云うべきものである。理由のある法律で処罰すると云う憲法31条「法定の手続の保障」の精神にも違反するものである。
5  

裁判所は法律があるからそれに従って処罰規制すると云うかも知れないが、その取締り、罰則の根拠となる毒性、害悪について新しい研究がなされ、その取締まりについて多くの疑問が呈せられているのに国として調査、研究もなさず新しい根拠資料も示さず(それは国民を納得させていない事になる)処罰の正当性について古い判例を挙げ取締り、処罰をする事は国家機関の怠慢と云う他はない。その怠慢により規制処罰する事は国民に苦痛を与える事であり、それは法を執行する国の機関として憲法尊重遵守の義務にも反しているものである。

 

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