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大麻取締法改正の行程
白坂の雑記帳 : 投稿者 : 白坂@THC主宰 投稿日時: 2007-03-02

大麻で逮捕されない日本社会が実現するまで、あとどれくらいの時間がかかるだろう。
それは、この問題に取り組む者たちの力量次第でもあると思う。

大麻を巡る問題は、個人利用、医療、産業など、切り口によって課題や論点に違いはあるが、問題が大麻取締法によって発生している点で共通している。

医療利用については、大塚製薬がアメリカでサティベックス開発販売に乗り出したことで、具体的なスケジュールさえ垣間見える状況になったのではないだろうか。

個人利用については、最高裁は大麻の有害性を根拠に厳罰による規制を正当化してきた。
だが、日本の公的大麻情報を発信している厚労省麻薬対策課情報係の係長や、「ダメ。ゼッタイ。」の責任者も、現在の公的大麻情報が古いことを認め、数値などの具体的記述の出典も不明であることを認め、根拠がないことまでを認めている。

「ダメ。ゼッタイ。」の責任者は、来月から始まる新年度、情報の全面的な見直しを予算化し、ホームページは10月にリニューアル版をオープンすると明言している。

公的大麻情報が真に適正化されれば、これまでの最高裁の判例根拠は崩れる。

医療的な利用についても、個人的な利用についても、産業的な利用についても、これまでの規制の根拠が根底から問われることになる。

当方の厚労省やダメセンターへの問いかけに対し、「文句があるなら国会に言え」という野次を耳にすることがある。

大麻取締法の改正は国会でなければできない。
大麻を擁護する国会議員を出そうというアイディアを聞くこともある。それも確かに面白い。

だが、国会で、大麻取締法の改正案を成立させるには、衆参両院で賛成多数を得なければならない。
そのためには、既成政党の理解を得ることが大切ではないだろうか。

最高裁が、現行の大麻取締法の不備を認めれば、この法を管掌する官庁である厚労省は、その不備を補正する改正法案を作り、政府(内閣・厚生労働大臣)を通じて国会に提出することになるだろう。

行政に文句を言い、司法に文句を言うことで、国会に文句を言える状況を作れる。

おそらく、厚労省の用意する大麻取締法改正案は、政権与党が自民党であれ、民主党であれ、衆参両院で賛成多数を得て成立するだろう。
そこで焦点になるのはその改正の内容だ。

個人利用の大麻を非犯罪化しようという主張は、本質的には薬物行政のあり方を問うことである。

現在のように、アルコールやタバコほどの害もない大麻を単に少量所持しているだけで実刑があり得てしまうような厳罰規制が、果たして社会的に有意義なことなのか。
そのために注ぎ込んでいる税金はどれほどになるのか。
現状の厳罰主義は、失業や家庭崩壊や、時に自殺者まで出している。
却って社会的損失のほうが大きくはないか。

また、現在のような厳罰のみの規制は、覚せい剤中毒の者が、逮捕を恐れ、適切な治療を受けられず、刃物を持っての凶行にまで至ってしまう可能性を拡大させている。

現実的な政策として、オランダのハームリダクションは日本としてもとても参考になると思う。

どのような薬物行政が社会(国民)にとって望ましく、損失が少ないか。
実現可能で、建設的で、未来志向の薬物政策を構想し、そのなかで大麻取締法のあり方を検討する必要があるのだと思う。

逆に言えば、新しい大麻取締法を構想することは、薬物行政を構想することである。

最高裁が大麻取締法の不備を指摘すれば、厚労省は対応せざるを得ない。

その時、運動側としても、未成年の薬物乱用問題に取り組む人たちを含む多くの国民や既成政党に、理解と納得を得られる改正法案を提示できることが望ましい。
運動側が総体として政治的に意味のある存在となっていれば、ロビー活動は決して無駄にならないだろう。

紆余曲折は付きものとして、医療と産業における大麻利用の制度化は、大麻の医学的事実や、資源としての可能性を基礎として構築されるだろう。

最高裁が、大麻取締法を違憲とまでは言わなくても、不備を認めて指摘すれば、担当官庁の厚労省は司法から指摘された不備を補正し、政府提案として改正法案を国会に出すことになる。

大麻取締法は近い将来に必ず改正される。
その内容をどれだけより良いものにできるか。
それによって、その先に開花するはずの大麻文化の当面の輪郭が決まるだろう。

こちら側の力量が試されているのでもあると思う。

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