NHKクローズアップ現代担当ディレクターに電話取材(下)

投稿日時 2009-01-07 | カテゴリ: 「大麻汚染」を食い止めろ

すっかり間延びしてしまったが、昨年12月3日に放送されたNHKクローズアップ現代「大麻汚染を食い止めろ」の担当ディレクター広川氏への電話取材、最終回です。
この報道についての検証は、カナビス・スタディハウスに『2ちゃんねらーも顔負け 大嘘つき回り先生 カナビスの1回1回の使用が脳を壊す』が掲載されたので、ぜひご一読下さい。夜回り先生こと水谷修氏の言説が、いかに没論理的であるかが、海外の研究と照らし合わせて検証されています。
私は、水谷氏の反ドラッグ言説に触れるたび、落語の『饅頭怖い』を想起してしまいます。もちろん、水谷氏はドラッグ好きではないでしょう。が、薬学的・社会学的な事実に基づかない脅し文句は、却ってその言葉への信頼性を損ない、水谷氏の意図と反して、若者たちのドラッグへの興味を喚起しているような側面があると思います。そのような意味では、『饅頭怖い』よりも、「ドラッグ版・稲川淳二」といったところでしょうか。


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A.私たちの取材スタンスのことで申し上げると、当人たちもいい面があったと言ってますし、こんなにいいものはないと、別にアルコールのように二日酔いになるわけでもないし、というようなことは仰るんですよ。でも結果的には、もちろん全員じゃないですけれども、私たちが取材した方たちのなかには、大量に使い続けるようになって、長い間、何年も続けるようになって、廃人のようになってしまったという方に何人もお会いしてお話を聞いたんですね。

Q.大麻だけでですか?

A.そうですね。大麻しか使ってないという方たちでした。

Q.ですから、それは先ほどお話したように、もともと精神的な疾患を抱えていたということもありえるわけですよ。

A.まあ、ありえるかもしれないですね。

Q.そうですよね。

A.でもそれはないだろうと思ってます。

Q.思ってらっしゃるだけですよね?

A.ご本人たちもそう仰ってますし、先ほどもお話したように、私たちとしては取材をして、綿密にお話を聞いて、そのなかでご紹介することしかできないですから、そこをお伝えしたいと思ったわけです。

Q.でもその一方には、科学者たちの大量の研究、ちゃんとエビデンスもある研究が出てるんですよね、そのような研究とは全く衝突しますよね、取材されたお話とは。

A.そうですね。

Q.そうすると、そうなっちゃった人たちもいるよ、ということを伝えるのと同時にですね、そうなってしまった可能性としては、もともと精神的な疾病の要素を抱えてたとか、海外ではこういった研究レポートが出ているとか、そういうことも伝えないと、頭ごなしに大麻を使っているとこういうことになってしまうゾという脅しにしかならないと思うんですよ。報道としても公平さとか公正さを欠くんじゃないでしょうか?

A.私たちは、大麻はやるべきじゃないものだと思って今回作ってますから。いろんな事象はあると思うんですね、こういう側面とか、こういう側面もあるとか、いろんな声があると思いますけど、ただ、今回は、大麻はやるべきじゃないというスタンスに立って、正直言いますと、番組をそういうふうに作りましたので、私たちはそういうメッセージを伝えたいと思って。みなさんは、そうではないというメッセージを伝えようと思って、大麻取締法の変革センターのホームページ、そういう団体で、情報発信をされてらっしゃると思いますけれども。私たちはそうではないんじゃないかっていうメッセージを出したいと思って、そういう番組を作ったということです。

Q.そうすると、それ以外の情報は敢えて報道しなかったということなわけですね?

A.そうですね。

Q.そうすると、番組のスタンスとして公平さを求めるという・・

A.公平さというのはいろいろあると思いますけれども、大麻の話に限らずですよ、いろんな話を取り上げるときに、切り口をどうするかとか、どういうメッセージを伝えるかとか、我々は作業として番組では伝えてるわけですね。全てを網羅して、こんな意見もあります、こんな意見もあります、こんな意見もあります、という番組もあると思いますし、こういう意見を言う人たちもいますよ、という番組もあると思うんですよね、一方だけ取り上げるという。それは番組の作り方としてはいろいろな形があると思いますけれども、少なくとも今回のクローズアップ現代という番組では、大麻には害としてこういう一面もあって、今こういうふうに社会的に問題になっているということを、私たちは伝えようと思ったということなんで。そこはみなさんとはスタンスは違うんだと思うんで、こういうふうにご意見を頂いているんだと思うんですけれども。

Q.今回の取材では大麻を使っている若者たち何人くらいに取材をされたんですか?

A.私が直接お会いしたのは10人弱ですけど、3人のディレクターがそれぞれ何人か取材をしていると思います。

Q.トータルで何人くらいですか?

A.それはちょっと分からないですね。それぞれ個別ではなくて、施設とかそういうところにもお話を伺っているので、たくさん見てきた方のお話を聞きながらというなかで、我々としては信憑性があると思っています。

Q.広川さんが取材された10人というは、施設に入っている方ですか?

A.施設に入ってたりとか、あと、施設に入ってなくて、今も使い続けてる人とか、それはいろいろですね。

Q.今も使い続けてる人というのは、普通に暮らしてる人ですか?

A.普通に暮らしてる人もいますね。

Q.取材された10人のうち、おかしくなっちゃったという人は何人くらいいたんですか?

A.それは今ここで何人というふうには言えませんけれども、たくさんいらっしゃいました。

Q.どっちが多かったんでしょう?おかしくなっちゃった人のほうが多かったんですか?

A.今回取材したのは、こういう害が出てきたという人を中心に取材をしてお話を聞いてたので、何人中、何人という統計を取ったわけではないので。

Q.そーゆー番組を作ろうとして取材されたわけですもんねえ、統計的には意味がないですよね?

A.統計的には意味がないです。我々はそこで何か統計を出そうと意思もなかったですし。

Q.アブナイっていう番組を作ろうということが目的だったわけですよね。

A.そうですね。今これだけ気軽に手を出す若者たちが絶えないなかで、何を伝えたいのか考えたってことです。

Q.そうすると、大麻っていうのはどういうものなのかというアプローチじゃなくて、大麻を使っては危ないよ、簡単に手を出してはいけないんだよ、っていうスタンスで作ったということですよね。

A.そうですね。

Q.そうすると、政治的な目的で番組を構成してあるっていうことですよね。

A.政治的な目的は一切関係ないですけれども。私たちは何か国から指示を受けて作っているわけではないですし。

Q.政党とか党派という意味じゃなくてですね、大麻を使っちゃいけないよという主張をするための番組だったということですね。

A.私たちはそう考えて番組を作ったということです。

Q.そうですよね、そうすると、だから最初から公平であるわけがなかったということですよね。

A.それはまあ、何をもって公平とするかは分かりませんけど、いろんな意見を取り入れて、今回はみなさんのところに取材をしていませんよね、それこそ。ですからそういう意味での公平というのはなかったかもしれません。でも客観的に事実をお伝えしたつもりではいます。

Q.伝えられた事実は客観的だったかもしれませんけど、でもそれは特定の目的に沿って選ばれた客観ですよね。選択的に、このことを報道しようと選んだ事実ですよね?

A.すべての番組がそういう趣旨で作られてると思いますけど。

Q.もちろん全ての報道はそうでしかありえないと思いますけど、いま若者に大麻だけではなくてMDMAとか覚せい剤とかが蔓延している状態にあると思いますけど、それはそもそも現在の薬物乱用防止政策に問題があるというふうにはお考えになりませんか?

A.そういう側面があるのかもしれないとは思います。

Q.日本はアメリカの追従で非寛容政策、ゼロ・トレランスという政策を取ってますけれども、欧州、オランダなんかが代表的ですけれども、ハームリダクション政策、薬物が社会や個人にもたらす害を削減しようというアプローチで政策が採られて、それでうまくいってるという事実もあるわけですから、薬物乱用防止政策っていうはこのままでいいのかというアプローチでぜひ今度番組を作って下さいよ。そうでなければ、これまでお話したように、ただ大麻は危ないんだよっていうのは、医学的事実とかけ離れてますから、海外で出されている研究とはかけ離れてますから、脅しにしかならないような番組だと却って信用されないと思うんですよ、若者たちに。

A.あのー、分かりました。大麻に限らずですね、その他のドラッグとか薬物の取材は以前もちょっと齧ったこともありまして、アメリカで取り組まれているドラッグ・コートを日本でもやろうという話なんかを、ちょっとみなさんの言っていることとは違うかもしれませんけど、そういう話に興味を持っていたりもしたので、それと、欧州とかがどうなっているのかというのはまた改めて勉強させて頂いて、また機会があればと思っています。

Q.医学的にも大麻はいろいろな疾病に効果があるという驚くような研究報告が次々と近年出てきてますので。ところが日本では大麻取締法第4条で、医薬品として施用することも禁止されてるわけですよね、海外では医薬品として合法的に使えるところもたくさんありますし、医学的に効果があるということも分かっているわけですから、そういったことを全く伏せて、そのことは全く報道しないで、ただ大麻は危ないんだよ、怖いことになるよ、というだけの報道だと、それこそ若者たちは、エ、ウソじゃんという、いまもうネットの時代ですから、情報もすぐ取れるわけですから、却って信頼性のないことになっちゃいますよ。なんで海外では医学的に使われているものが、日本では禁止になっているのかとか、大麻取締法そのものの問題も追及して頂かないと。今後はそういったことにもぜひ取材をして頂いて。喜んで私たちは取材をお受けしますので(笑)。

A.分かりました。これを機会にまたお世話になることがるかもしれませんので(笑)。私もちょっと勉強不足のところもあって、専門家でもないので、今回はこういうことを伝えたいという思いでいろんなところに取材をしてやったんですけれども、足りないところはたくさんあったと思うので。まあ、マスコミ自身が言うのもあれなんですけれども、ひとつの社会問題でバァーとやって、燃え上がってすぐ消えるというところがあるので、そういうことではなくて、今後も継続してまた何かできればなと思っていますので。

Q.大麻取締法の問題で言えばですね、これは厚労省の天下り財団法人が出している大麻情報がデタラメだっていうことなんかが大きな問題をもたらしているんですよ。昨年は沖縄の製薬メーカーが大麻の医学的な研究をさせてくれっていう申請を厚労省にしてるんですよ、ところがそれが蹴られてるんですね。

A.そうですか、それは知りませんでした。

Q.大塚製薬なんかは日本で研究できないからアメリカでイギリスのGW製薬とライセンス契約を結んで、アメリカで大麻抽出薬の研究をして販売を予定してるんです。ところが日本では危ない危ないってこれだけ大騒ぎしていながら研究すら認めないっていう厚生労働省の体質があるわけですよ。年金の問題だってC型肝炎の問題だって、もちろん立派な官僚の方もいらっしゃいますけど、全体の体質としては天下りの利権が優先されているなかで行われている薬物乱用防止政策に問題があるという、そういう視点をしっかり持って頂いて、公共放送のNHKさんとしては取材をして頂いて、また別の切り口でぜひ薬物乱用防止政策を取り上げて下さい。クローズアップ現代って番組、私も好きで、いい番組だなあと思って見せて頂いてもいるので。

A.ああ、ホントですか、ありがとうございます。引き続きご覧になって頂ける番組を作りたいと思いますので。

Q.ぜひそうして下さい。こういう視点もあるんだよっていう番組を作って下さい。

A.わかりました。ありがとうございました。また何かありましたらいつでもご意見をお寄せ頂いて、私も今回こうして、ああ、こういう視点もあるなあと気付いたりとか、それでまた新しい番組ができると思いますので、本当にありがとうございました。

Q.いえ、こちらこそお忙しいところありがとうございました。よろしくお願い致します。





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