大麻を使用すると「睾丸癌」のリスクが高まる?

投稿日時 2009-02-12 | カテゴリ: フロッガー医師の検証

大麻を使用すると「睾丸癌」のリスクが高まるという報道が流れた。この件について、腫瘍内科の研究医であるフロッガーさんの解説を掲載します。本稿の初出は「Dr.フロッガーのブログ」です。

精巣腫瘍と大麻の関連

大麻使用、睾丸癌のリスク高まる可能性=米研究
[ワシントン 9日 ロイター]シアトルにあるフレッド・ハチンソンがん研究所のスティーブン・シュワルツ氏らは、同地域に住む18―44歳の男性を対象に、睾丸がんを患う369人と、そうでない979人を比較。現在マリフアナを使用している人は、使用していない人に比べ、睾丸がんにかかる確率が70%高いことを突き止めた。
 10年以上マリフアナを使用している人や、週1回以上使用する人、18歳未満から使い始めた人が、最もリスクが高いとみられるという。

原著:Association of marijuana use and the incidence of testicular germ cell tumors. Cancer誌.
著者:Daling JRら.

コメント
この報告は、case-control studyである。
精巣腫瘍患者の大麻使用率と精巣腫瘍ではない対照群の大麻使用率を比較し、精巣腫瘍患者の方が現在の大麻使用率が高かったとする報告である。
精巣癌にかかる確率が70%高いとのことだが、正しくはオッズ比(OR)が1.7であるということのようだ。(確かにORは相対リスクの近似値とは言えるが、このような書き方はトリッキーである。)
精巣腫瘍と大麻の関連について報告されたのはこれが初めてであり、インパクトはあるだろう。しかし、case-control studyの1報目であり、症例も多いとは言いがたく、真実とするにはまだ検証が必要である。

これが実際の大麻使用のリスクとなるか。精巣腫瘍はきわめて稀で、発症率は人口10万人あたり1-2人である。OR 1.7が真実とすると、男性人口の全てが大麻を喫煙した場合10万人あたり1人程度増える可能性があるということだが、これは実際のリスクとは考えにくいだろう。

睾丸癌(精巣腫瘍)



(※編集部注)この報道に関しては、カナビス・スタディハウスでもNORMLの記事の翻訳とダウさんの解説が掲載されています。併せてご参照下さい。

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