Q:カナビス・スタディハウスの『欝と痛み、カナビスは両刀の剣』という記事に、「昔から、カナビス・スモーカーの間ではカナビスが欝に効くと言われていましたが、不安やイライラなどが大きくなって悪くなったと言う人もいます。今回の結果からは、特に高い効力のカナビスを多量に摂取し場合には、欝が亢進すると考えられます」とありますが、やはり大麻を医療目的に使うのは危険ではありませんか?
A:このカナダの動物実験は、大麻の主要な精神活性物質であるTHCについて行われたものです。現在では、精神病に顕著な効果があるのは、CBD(カナビジオール)という別の成分であることが明らかになってきています。CBDはTHCとは化学構造が非常に似ていますが、精神活性はなく、THCの働きを緩和することが分かってきています。従って、カナダの実験は大麻の効果の一面しかとらえていません。
合成THCではなく、人間が実際の大麻を使った調査とすれば、2006年秋に発表されたジョンズホプキンス大学の研究があります。この調査では、過去17年にわたって8759人(29~37才)の成人うつ病患者に対して、自己申告による過去の大麻使用歴とうつの関連を調べています。
その結果、「補正を加えていないデータで見ると、大麻を使い続けている人とうつ病の間には強い関連がみられるが、継続している人と中断した人の違いを示すベースラインを注意深く補正すると、完全にはなくならいものの、ほとんど関連性は見られなくなる。この結果は、大麻使用とその後に出てきたうつ症状の間に見られる関連が、大麻の継続使用そのものによるのではなく、大麻を使う決心とうつの双方に共通して関連する第3の要因が働いている、ことを示唆している」 と結論づけています。
これまでは、大麻はリクレーショナル用途の開発が主でしたから、THCの多い品種への改良に重点が置かれていました。しかし、実際にはハシシなどではCBDの割合が多い品種もたくさんあります。ですが、アメリカではハシシが少ないことや、ストリートでは売っている品種名も分かりません、欝に対する効果が安定しないという現実があります。
現在では、そのことを前提に、医療大麻ディスペンサリーなどでは経験則を基準に、例えば、M-39と呼ばれるカナビス・インディーカをベースにした欝に効果のある品種が販売されるようになってきています。
一部には、大麻の成分が一定しいないので医薬品には向かないという人もいますが、実際には、決まった品種の大麻を同じ環境で同じように栽培すれば、成分構成を高度に標準化することができます。
また、摂取量の調整は慣れればジョイントでもそう難しくはありませんが、ボルケーノというバポライザー吸引装置を利用して、同量の大麻を同温で処理すれば、いつも一定の濃度と容量の蒸気が得られますので、決して調整が難しいわけでもありません。
アメリカでは、天然の大麻を使った研究をしようとすれば、政府(DEA)がミシシッピー大学で独占供給している大麻を使うことが義務づけられています。しかし、提供される品種が限定されていることやTHCのレベルが低く、研究者たちからは問題視されています。
これに対してマサチューセッツ大学のクラカー教授が2001年に民間の(大学の)施設でも研究用の大麻を栽培できるようにすることを要求して、DEAの行政裁判に訴えました。
その結果、2年前には、DEAの行政法判事から、民間での栽培が公共の利益に合致し、ミシシッピーの栽培場が「独占」にあたるとする判決が出ています。しかしながら、この判決には拘束力がないために、DEAは判決を受け入れるかどうかにつてずっと棚晒しにしてきました。
しかし、オバマ政権に移行する直前になってこの重大な判決の受け入れを拒否するという逃亡破壊まがいのことをしています。これに対しては、決定を覆すべきだという意見もたくさんでています。この意見はオバマ政権の中にもあるようです。
いずれにしても、日本では大麻そのものについて医療的な研究すら認められていないわけですが、GHQに大麻取締法の制定を強要されて以来、アメリカ追随で大麻を弾圧してきた日本政府も、現状のようなあまりにも非科学的で馬鹿げた大麻政策を見直すべき時期に来ているのではないでしょうか。
参照
●医療カナビスとは?
●医療カナビスと国連単一条約の制約
●成人のカナビス使用はうつ病を引き起こさない
●最新研究 カナビスと精神病の関係は弱い
●カナビスの医薬品としての将来
●バポライザー、魔法の蒸気
(※蛇足というか捕捉)
この記事は、「市民の市民による市民のためのメディア」という看板を掲げるJANJANのコメント欄に投稿した文章をアレンジしたものだが、JANJAN編集部は、参照として示したカナビス・スタディハウスへの6件のリンクを全て削除した。その利用を問うメールを送ったが、回答はない。
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