Q:大麻取締法変革センターは、大麻を合法化して、タバコやアルコールのように一定の条件を厳格に定め、栽培や販売に課税して社会的に管理することを主張していますが、そのような社会的なルールを定めても、必ずルールを破る者が出てくるのではありませんか?
A:ルールを守らない者が出てくるのは、アルコールでもタバコでも、あるいは自動車の運転などについても全く同じことです。ルールを守らない者が出てくるから、現状のまま懲役刑という厳罰で禁止して、その人の人生を破壊してしまうような制裁を加えてもよいことにはならないでしょう。大麻の問題は、行為と制裁のバランスの問題でもあります。
先日、アメリカ疾病対策センターが発表した報告書では、現在タバコを吸っているアメリカ人の数は、1960年代にタバコを吸っていたアメリカ人の率(42%)の半分以下になったとしていますが、それは、刑事訴追・逮捕・投獄といった厳罰を科す政策でそうなったわけではなく、何千万人もの人が、合法ではあってもタバコという非常に中毒性の高いドラッグを自発的に吸わなくなったからです。
アメリカでは、タバコについて、禁止ではなく、販売するのであればライセンスを取得し、州と連邦政府に販売量などの説明を求められるようになりました。また、購入には厳しい年齢制限が設けられ、宣伝や販売は州や連邦政府に厳しく規制されています。
さらに、信頼できる科学的事実をベースにした健康への警告も義務付けられています。こうしたことを背景に、未成年者には教育が行われ、成人には禁煙を支援する活動が行われています。
また、禁止しておいたほうが使用が減るということをベースにする考えもありますが、事実として、例えば、コーヒーショップで少量の大麻販売が容認されているオランダのほうが、刑罰が厳しいアメリカよりも、大麻の使用率はずっと低いのです。
この件については、オランダの精神分析医でNGO活動にも熱心に取り組んでいるフレデリック・ポーラック氏が、国連薬物犯罪事務所のアントニオ・コスタ所長に対して、「禁止法がドラッグ問題に対処できる唯一の方法だとすれば、オランダの大麻の使用率が多くの近隣諸国よりも低いか同じ程度である事実について、どう説明するのですか?」と機会ある度に何度も同じ質問をしていますが、コスタ委員長はその度にはぐらかすだけで結局は何も説明できないでいます。
また、イギリスで大麻の少量所持が逮捕なしの罰則に非犯罪化されたのは2004年のことですが、それ以降、16~24才の若者の大麻使用はおよそ20%減っています。さらに、イギリス内務省が昨年発表した統計によると、現在でも大麻を使っていると認めているイギリス人は僅か8%で、調査開始以来最低を記録しています。
つまり、「刑罰を重くすれば使用が減る」というのは単なる思い込みであって、現実には必ずしも成り立っているわけではありません。
●大麻の需要をコントロールするにはタバコと同様に課税・規制管理すべき(2008.11.17)
●第51回国連麻薬委員会、黙らされたNGO代表の発言、真実から逃げまくる国連ドラッグ戦争司令官 (2008.3.14)
●イギリスの大麻使用、ダウングレード後の減少が続く (2007.11.1)
『合法化されてもルールを守れない者が必ず出てくる』のは間違いないでしょう。しかし、だからといって厳罰で禁止した状態では、大麻の成分や効力の表示ラベルを張ることも、異物の混入を防ぐことも、十分な研究もできません。ましては正しい、あるいは好ましい使い方などを教育することすらできません。精神的にやらないほうがよい人を特定して指導することもできないのです。その結果、不適切な使用をする人を減らすこともできません。事態は混乱するばかりです。
しかし合法化すれば、全ての人とは言えないものの、多くの人は適切な使い方を学び、自分に合った大麻を選ぶようになります。それは、オランダをみればわかります。コーヒーショップでは、いろいろなことを指導してくれます。
サンフランシスコとアムステルダムのユーザーを比較した研究では、禁止されているサンフランシスコのほうが効力の強い大麻を求める傾向が強いことや、長時間使うことも、Craig Reinarmanらの調査研究によって示されています。
●Cannabis in Amsterdam and in San Francisco, Reinarman, et al., American Journal of Public Health , May 2004, Vol 94, No. 5(PDF)
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