検証ダメゼッタイ「大麻について」(1)

投稿日時 2006-11-02 | カテゴリ: Taku博士の薬物政策論稿

薬物政策に関する論文で博士号(PhD)をお持ちの研究者から、「ダメ。ゼッタイ。」ホームページの記述について論稿を頂きました。
今後、不定期に連載できればと願っていますが、ご多忙なところを無理にお願いしているので、予定は未定です。
今回は第1回として、「大麻について」の一部を掲載します。
尚、この論稿は検証「ダメ。ゼッタイ。」ホームページの該当箇所にも掲載しました。

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大麻について

現在では世界のほとんどで麻薬として規制され、所持しているだけでも死刑や無期懲役となる場合もあるほどです。

大麻が国際法において麻薬(Narcotic Drugs)として規定されているのは1961年の単一条約によります。
しかしこうした規定があるにも関わらず、なぜオランダをはじめとする一部の国や州では大麻の使用が非犯罪化され、一見、単一条約と矛盾するかのような政策がとられているのでしょうか。
ここには、表向きの姿勢としてハームリダクション(有害性縮減)ポリシーが政治的に主張されているからです。
オランダも単一条約は批准しており条約そのものへの積極的批判は行っていないのですが、彼らは、大麻の非犯罪化によるハードドラッグ使用者数の減少という効果をもたらしたハームリダクション政策が、単一条約とは矛盾しないと主張しています。
また麻薬に関する処罰設定の自由は各国の議会にあるという考え方がオランダ・ドイツ・スペイン・スイスなどで採用されている条約解釈です。
そもそも単一条約の履行を目標として設立されているINCB(国際麻薬統制委員会)には、条約の不履行に対して制裁を加える権限も与えられていません。
よって、日本の場合も仮に脱法ドラッグ・覚醒剤・処方薬・酒などのより危険性の高い薬物の代替物として大麻をハームリダクション政策に組み込もうとの政策的意思をもてば、いつでも単一条約とは矛盾せず自由な政治的意思を表明できるというのが、国際社会の趨勢といえます。

蛇足ですが、むしろ国際社会における麻薬政策の変化が直面する障壁として麻薬統制レジームの研究者が懸念しているのは、麻薬問題に対して国内で高い政策的順位を置いてきたアメリカの政治的圧力です。
イギリス人研究者のDavid Bewly-Taylorは、この事情を次のように説明しています。

「国連レベルでの何らかの変化について考えるとき、アメリカがグローバルな麻薬禁止政策を守るために覇権的力を行使してきたという事実を各国が無視することは明らかに賢い選択とはいえない」。

この政治的圧力によって国連レベルでの麻薬政策は科学的というよりは、至って政治的なものになっていると考えられています。






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