「公明党オフィシャルチャンネル」によると、昨年11月12日、同党の太田代表と党青年委員会は、首相官邸で麻生首相と会い、いくつかの申し入れを行った。
そのなかに「大麻・薬物の乱用防止対策の強化」があり、「大麻や発芽能力を有する大麻種子の使用・密輸・入手を未然に防止できるよう大麻取締法を改正するよう要請した」とのこと。
公明党は、薬物乱用防止政策を重視しているそうで、(財)麻薬・覚せい剤乱用防止センターが運行を管理するキャラバンカーの拡充にも積極的に関与してきたとのこと。
薬物乱用防止教育を充実することに異論はないが、問題はその教育される内容である。いくらキャラバンカーを増やしても、教育される内容が医学的事実に基づかない、根拠を示すこともできない、誤りだらけの薬物情報では、却って薬物問題に混乱をもたらすだけであり、青少年の信頼や信用を失うばかりである。
政権与党としてキャラバンカーの拡充に関与してきた公明党には、そのキャラバンカーで教育される具体的な内容・情報についても、重大な政治責任がある。
そこで、大麻取締法を改正して発芽する種の規制を強化するよう麻生首相に求めた公明党青年委員会委員長の谷合正明参議院議員に、(財)麻薬・覚せい剤乱用防止センターが国民に周知している公的大麻情報を是正させるよう指導することを求める要望書を提出した。
要望書はファックスで谷合議員の事務所にお送りしたが、それに先立ち、同議員の秘書氏に趣旨を説明し、ファックスを送信した後にも着信を確認し、具体的な対応を重ねて求めた。
谷合議員の秘書氏に趣旨説明した録音は以下の通り。
●公明党谷合参議院議員秘書氏への趣旨説明 mp3 6.77MB 7分24秒
この要望は公明党や谷合議員を批判するものではなく、政権与党としての政治責任を果たすよう求めるものだ。この要望に応えて、谷合議員が(財)麻薬・覚せい剤乱用防止センターを指導し、公的大麻情報が医学的根拠のある内容に改められれば、公明党と谷合議員に対する評価は、薬物問題に関心のある国民から肯定的に受け止められるだろう。一方、何らの対応もなされないのであれば、誤った情報を国民に周知教育するキャラバンカーを増やすことについての政治的責任が厳しく問われることになる。
谷合議員にどのような対応をして頂けるか、あるいは頂けないか、注目したい。
財団法人 麻薬・覚せい剤乱用防止センターが国民に周知教育している
薬物情報是正についての要望書
2009年6月23日
公明党参議院議員 谷合正明様
財団法人麻薬・覚せい剤乱用防止センター(以下「麻薬防止センター」と表記)が国民に周知している薬物情報の是正について、以下の通り要望します。
麻薬防止センターは、1987(昭和62)年1月23日の閣議了承を得て、同年6月1日に設立された公益法人です。同センターのウェブサイトによると、その目的は、「麻薬・覚せい剤等の危害に関する知識の普及啓発等の事業を推進することにより、薬物乱用の未然防止を図り、もって国民の保健衛生の向上と社会の繁栄に寄与すること」とあります。そのための事業として、同ウェブサイトには8項目が掲げられており、 冒頭の(1)と(2)には次のように明記されています。
(1)乱用薬物の精神・身体に与える影響等に関する正しい知識の普及啓発
(2)乱用薬物に関する調査研究
しかし、同センターのウェブサイトで「薬物データベース」として国民に周知教育されている情報のうち、「大麻」に関する記述については、15年以上前に同センターがアメリカ・テキサス州にあるDrug Prevention Resources, Inc.から輸入し、国内の教育関係者向けに販売していた、薬物標本レプリカの説明書を翻訳しただけのものであり、医学的根拠のないことが、厚生労働省に対する私たちの行政文書開示請求や、同省担当者、麻薬防止センター専務理事への取材等で、明らかになっています。
添付資料は、厚生労働省が開示した、麻薬防止センターの「ダメ。ゼッタイ。ホームページ」に書かれている大麻情報の英語原文であり、古いアメリカ製薬物標本見本の説明書です。
2006年10月21日、厚生労働省医薬食品局監視指導・麻薬対策課の藤原情報係長(当時)は、私の電話取材に対し、この情報に「根拠はない」と答えています。
このような医学的根拠のない情報は、最新の医学的知見に照らし、正しい内容に改めるよう、私たちは、再三再四、厚生労働省と麻薬防止センターに求めてきました。
2006年10月24日、元厚労省官僚である麻薬防止センターの糸井専務理事(当時)は、情報が古く、見直す必要があることを認め、2007年度に予算を付け、外部の有識者に委託して内容を改めると述べました。
2007年3月28日、同センター糸井専務理事(当時)は、外部の有識者を招いて薬物情報を見直す委員会を設置するための予算が認められたので、実施すると明言しました。しかし、その後も「ダメ。ゼッタイ。ホームページ」の「薬物データベース」の内容は、大麻情報に限らず、全く改められることなく、医学的根拠も示せない、古い情報のまま、放置されています。
2008年10月27日、麻薬防止センターの現専務理事・冨澤正夫氏(元厚生労働省大臣官房付)は、既に外部の有識者に依頼した情報の見直しは終了しており、修正された内容の原稿を所有している、年内を目標に「ダメ。ゼッタイ。ホームページ」の内容を更新する、「できるだけ早くやりたいと思っている」、現在の情報は「古いと思っている」と述べています。
しかし、その後も一向に情報が更新される様子もなく、大麻の「身体的影響」や「精神的影響」に関しても、15年以上前のアメリカ製薬物標本見本の説明書を翻訳しただけの、医学的根拠のない、世界的に見ても日本の恥としか言いようがない内容のままです。
2008年11月11日、医学的根拠のない古い大麻情報について、冨澤専務理事に改めて問い質したところ、現在公開している情報の根拠を示すのは「嫌です」という、税金が投入されている公益法人の責任者にあるまじき高慢な対応をしています。
公明党におかれましては、政権与党として、薬物乱用防止政策にも力を入れ、麻薬防止センターが運行する、薬物乱用防止教育のためのキャラバンカー拡充にも尽力されたと聞いております。薬物乱用の低年齢化が社会的な問題として顕在化している現在、薬物乱用防止教育に取り組む公明党の姿勢に、敬意を表しますが、問題は、その内容ではないでしょうか。キャラバンカーを拡充しても、国民に教育される薬物情報に医学的根拠がなく、古くて誤っているのでは、薬物問題にいっそうの混乱を招く結果となることは必定です。
薬物乱用防止教育に力を入れ、麻薬防止センターのキャラバンカー拡充を推進してきた公明党には、医学的に正しい情報を周知教育するよう、麻薬防止センターを指導する責務があると存じます。それは、道義的な責任というばかりではなく、政権与党としての政治的責任でもあるのではないでしょうか。
誤った情報を国民に周知することは、ますます薬物問題を悪化させるばかりです。麻薬防止センターの冨澤専務理事は、すでに見直しをした薬物情報を所有していながら、それを放置しているのです。言うまでもなく、同センターの運営には、税金も投入されております。これは冨澤専務理事の怠慢と高慢という個人的責任にとどまらず、麻薬防止センターによる、国民に対する背任行為であると断ぜざるをえません。
我が国の公的薬物情報とも言える「ダメ。ゼッタイ。ホームページ」の、大麻を含む「薬物データベース」をはじめ、麻薬防止センターが国民に周知教育している内容を、1日も早く、最新の医学的知見に基づいた内容に改めるよう、政権与党たる公明党は、麻薬防止センターに勧告し、指導するよう、強く要望致します。
よろしくお願い申し上げます。
大麻取締法変革センター
代表 白 坂 和 彦
住所・電話番号
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