薬物乱用問題:政策不在の日本 考察1-3

投稿日時 2009-08-15 | カテゴリ: かっちゃんの薬物乱用問題考察

併用薬物の使用について

ところで、この表データのうち表14-1、14-2「主たる使用薬物別にみた併用薬物と使用開始年齢」と題して、主たる使用薬物の他に「併用薬物」のデータもあり、これを分析すると乱用薬物についての考えも単純であってもならないとわかる。(全ての表が「主たる使用薬物のデータ」でもある)

日本ではヘロイン・コカインの使用率は欧米各国と比べ非常に低いといわれるが、併用薬物としてコカイン55人、ヘロイン23人が使用されている。決して少なくはない。その中で覚醒剤を主たる薬物として使用しているものはコカイン34人、ヘロイン14人である。又大麻を主たる薬物として使用したものはコカイン4人、ヘロイン1人と絶対数において少ないが、覚醒剤と同じく規制薬物として違法行為に手を染めた心理もコカイン・ヘロインに手を出しやすいと考えられる。

しかし、全症例453人のうち大麻の使用歴があるとされるのは、覚醒剤309人、有機溶剤238人についで177人と極めて多いと言える。そのうちの17人が大麻症例として精神疾患の治療を受けているがこの対比も非常に特徴的ではあると言えると思う。

確かな事は、最近はあまり言われてないように思える有機溶剤については、453人のうち238人が使用経験があり、そのうちの77人が有機溶剤を主たる要因として治療していると言うことであり深刻な問題だと言うことである。

又覚醒剤を使用したもの309人のうち233人が主たる要因として精神疾患に陥るとも見られる。これはもともと入院などの治療を受けている人のデータであるから、それ以外のデータが見られない状況である事を前提としても覚醒剤は極めて危険な薬物だと言うことが出来ると思う。

主たる使用薬物における併用薬物の割合
主たる使用薬物 覚醒剤 有機溶剤 睡眠薬 抗不安剤 鎮痛剤
併用薬物 人数 割合 人数 割合 人数 割合 人数 割合 人数 割合
なし 34 14.6% 27 35.1% 9 20.5% 1 14.3% 1 9.1%
覚醒剤 233 100.0% 26 33.8% 7 15.9% 0 0.0% 3 27.3%
有機溶剤 130 55.8% 77 100% 7 15.9% 0 0.0% 3 27.3%
睡眠薬 39 16.7% 6 7.8% 44 100.0% 4 57.1% 3 27.3%
抗不安剤 20 8.6% 6 7.8% 16 36.4% 7 100% 2 18.2%
鎮痛剤 13 5.6% 3 3.9% 5 11.4% 2 28.6% 11 100.0%
鎮咳剤 9 3.9% 1 1.3% 7 15.9% 0 0.0% 2 18.2%
大麻 100 42.9% 24 31.2% 6 13.6% 1 14.3% 1 9.1%
コカイン 34 14.6% 4 5.2% 2 4.5% 0 0.0% 1 9.1%
ヘロイン 14 6.0% 2 2.6% 1 2.3% 0 0.0% 0 0.0%
その他 15 6.4% 3 3.9% 6 13.6% 3 42.9% 0 0.0%

主たる使用薬物 鎮咳剤 大麻 その他 多剤規制薬物 多剤医薬品
併用薬物 人数 割合 人数 割合 人数 割合 人数 割合 人数 割合
なし 3 18.8% 2 11.8% 4 20.0% 0 0.0% 0 0.0%
覚醒剤 9 56.3% 7 41.2% 7 35.0% 12 100.0% 5 31.3%
有機溶剤 4 25.0% 1 5.9% 5 25.0% 9 75.0% 2 12.5%
睡眠薬 5 31.3% 2 11.8% 6 30.0% 4 33.3% 14 87.5%
抗不安剤 4 25.0% 1 5.9% 4 20.0% 5 41.7% 14 87.5%
鎮痛剤 1 6.3% 0 0.0% 2 10.0% 2 16.7% 4 25.0%
鎮咳剤 16 100.0% 0 0.0% 3 15.0% 4 33.3% 2 12.5%
大麻 6 37.5% 17 100.0% 6 30.0% 7 58.3% 4 25.0%
コカイン 2 12.5% 4 23.5% 3 15.0% 3 25.0% 2 12.5%
ヘロイン 0 0.0% 1 5.9% 0 0.0% 3 25.0% 2 12.5%
その他 3 18.8% 5 29.4% 20 100.0% 4 33.3% 10 62.5%

上記の表は表14-1をさらに問題を絞って二つに分解し、主たる薬物における併用薬物の割合を私が一つの表として作成したものである。

1,覚醒剤を主たる薬物として精神疾患の治療をしているものは殆ど多剤使用の経験があり、この意味でも薬物を乱用しているという表現は当たっているだろう。中でも有機溶剤と大麻の併用率が飛び抜けているが、これは日本では覚醒剤使用者の他の薬物の使用開始年齢が20才以下と若い事と、覚醒剤に手を染めたものは違法な薬物として知られている大麻を入手したいという心理の表れだと思う。

どういう事を示しているかというと

2、覚醒剤、有機溶剤、睡眠薬を主たる薬物としている物が計354人と8割近い。大麻は3.7%。大麻を主たる使用薬物としている者はデータ上ユニークな特徴がある(覚醒剤、有機溶剤使用者の併用薬物としての使用が124人)

3,覚醒剤使用者は併用薬物として有機溶剤と大麻が非常に多い、又、コカイン、ヘロインなど主たる薬物としては使用されていないが併用薬物として使用する物の大部分である。

4,有機溶剤を主たる使用薬物としている者は併用薬物として覚醒剤、大麻の使用者が多い。又比較的併用薬物なしの割合も多い。

主たる使用薬物別と併用薬物の使用開始年齢
主たる使用薬物 覚醒剤 有機溶剤 睡眠薬 抗不安剤 鎮痛剤 鎮咳剤 大麻 コカイン ヘロイン その他
併用薬物
覚醒剤 平均 21.6 15.3 25.3 26.9 20.4 21.5 21.8 23.2 23.5 23.2
± 5.9 2.4 7.6 7.7 4.5 7.4 6.5 7 4.4 7.9
最年少 15.7 12.9 17.7 19.2 15.9 14.1 15.3 16.2 19.1 15.3
最年長 27.5 17.7 32.9 34.6 24.9 28.9 28.3 30.2 27.9 31.1
有機溶剤 平均 19.8 15.7 19.8 20.6 16.5 14 20.3 22 16.5 17.5
± 4.9 3.5 6.9 7.2 0.7   4.4 7.4 2.1 0.7
最年少 14.9 12.2 12.9 13.4 15.8 14 15.9 14.6 14.4 16.8
最年長 24.7 19.2 26.7 27.8 17.2 14 24.7 29.4 18.6 18.2
睡眠薬 平均 22.3 15.3 32.4 33.8 22.3 25.6 20.6 21.5 18 25.5
± 4.9 1.2 12.3 11.6 5 8.5 4.2 5   7.1
最年少 17.4 14.1 20.1 22.2 17.3 17.1 16.4 16.5 18 18.4
最年長 27.2 16.5 44.7 45.4 27.3 34.1 24.8 26.5 18 32.6
抗不安剤 平均     26.3 26.4           31.5
±     1.2 1.3           5
最年少     25.1 25.1           26.5
最年長     27.5 27.7           36.5
鎮痛剤 平均 21 15.3 26.7 38.5 30.2 17 22 18    
± 4.6 1.5 12.9 3.5 15.2          
最年少 16.4 13.8 13.8 35 15 17 22 18    
最年長 25.6 16.8 39.6 42 45.4 17 22 18    
鎮咳剤 平均 19.6 16.3 21.6 21.5 28 19.6 20.7 20   26.5
± 2.2 3.9 2.1 2.1   3.2 1.8     9.2
最年少 17.4 12.4 19.5 19.4 28 16.4 18.9 20   17.3
最年長 21.8 20.2 23.7 23.6 28 22.8 22.5 20   35.7
                       
主たる使用薬物 覚醒剤 有機溶剤 睡眠薬 抗不安剤 鎮痛剤 鎮咳剤 大麻 コカイン ヘロイン その他
併用薬物
大麻 平均 20.7 14 19 20     18.3 20.7   26.8
± 4   1.4 0     3 0.6   7.6
最年少 16.7 14 17.6 20     15.3 20.1   19.2
最年長 24.7 14 20.4 20     21.3 21.3   34.4
その他 平均 21.6 16.4 23.6 33.3 23 18.5 19.7 20   32.4
± 4.9 3.4 5 15.3 0 6.4 3.3 0   12.3
最年少 16.7 13 18.6 18 23 12.1 16.4 20   20.1
最年長 26.5 19.8 28.6 48.6 23 24.9 23 20   44.7
多剤規制薬物 平均 20.8 16 21.3 28 20 17.3 20.8 18 20.7 21.7
± 6.1 2.7 6.1 8 0 4 9 3.5 4.5 5.9
最年少 14.7 13.3 15.2 20 20 13.3 11.8 14.5 16.2 15.8
最年長 26.9 18.7 27.4 36 20 21.3 29.8 21.5 25.2 27.6
多剤医薬品 平均 22.3 12.5 26.8 25.9 23.3 30.5 16.8 25 25 18.7
± 3.7 0.7 6.2 6.9 6 0.7 3.8 5.7 5.7 4.8
最年少 18.6 11.8 20.6 19 17.3 29.8 13 19.3 19.3 13.9
最年長 26 13.2 33 32.8 29.3 31.2 20.6 30.7 30.7 23.5


多くの覚醒剤使用者は有機溶剤を併用しており、有機溶剤から覚醒剤へと刺激を求め、違法な点では同様である大麻にも手を染めるというケースが考えられるが有機溶剤併用開始年齢は2年足らず若いだけである。大麻の併用開始年齢は殆ど変わらない。結局、覚醒剤使用中に大麻も有機溶剤も併用する事が多いといえるのではないだろうか。他の併用薬物の開始年齢も大きな差がない。

有機溶剤使用者は主たる使用薬物としても開始年齢は若いが、併用薬物としての覚醒剤も使用開始年齢の平均は15歳代である。有機溶剤使用者は他の併用薬物も殆ど15才前後に手を出している。同じ事であるが睡眠薬を主たる薬物とした者が開始する年齢と併用薬物を開始する年齢は有機溶剤を20才頃使用して睡眠薬を25才以降開始するこの場合、個人によっては有機溶剤が入門薬だったと言える者もいるかも知れないが、そうでないものも又大勢いる。

①主たる使用薬物の覚醒剤使用者の過半数130人が併用薬物として有機溶剤を使っている。開始年齢の差は2年足らず。

②主たる使用薬物の有機溶剤使用者のうち3分の1が覚醒剤使用者である。

③全有機溶剤使用者238人のうち130人が覚醒剤を主たる使用薬物としている。

この表から、有機溶剤使用者が覚醒剤使用者になるというゲートウェイ仮説を証明は出来ないのではないか。ただし有機溶剤使用者は主たる薬物としても併用薬物としても若年齢のうちから経験すると言うことは言える。

同様に覚醒剤使用者の100人、42.9%が大麻併用使用者である。これについては覚醒剤の大麻併用開始年齢が20.6才±6.5才に対し覚醒剤開始年齢が21.6才±5.9才と変わらない。日本では大麻使用は覚醒剤などの違法ドラッグの入門薬であるという相関自体が存在しない。

この項つづく





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