読売新聞のサイトが8月10日付けの記事で、北海道北見の産業大麻特区の取り組みを伝えている。
「大麻」産業化に法律の壁、北見の特区苦戦
麻薬成分がほとんどない「産業用大麻」を栽培し、建材や自動車部品などに加工して事業化を図る北海道北見市の取り組みが、道の「産業用大麻栽培特区」認定から1年を迎えた。
環境に優しい新産業として地元の期待を集めるが、法律の壁に阻まれ、なかなか進展していないのが現状だ。
北見市周辺は、道が野生大麻撲滅の重点地区にしており、産業用大麻の栽培には気象条件などが適している。また、農業が盛んな北見地方では、休耕地などを活用して産業用大麻を生産できるほか、栽培も簡単なことから、建設業者など異業種からも参入しやすいとして注目を集めている。
道も「雇用の創出など地域活性化につながる可能性がある」として、昨年8月、北海道版構造改革・地域再生特区に認定した。
産業化に向けては、〈1〉種子の確保〈2〉麻薬成分の検査体制――の2点が大きな障壁だった。事業化に必要な大量の種子は輸入に頼らざるを得ないが、発芽できる種子の輸入は大麻取締法で禁じられている。また、品種改良や種子の成分を検査するには、大麻研究者の免許が必要になる。このため、北見の産学官が組織する「産業クラスター研究会オホーツク・麻プロジェクト」は特区認定を受け、道に支援措置を求めた。
しかし、道は種子輸入について「法律の問題。条例や規制緩和で対応できる問題ではなく、手だてはない」(地域づくり支援局)とつれない。検査体制の整備についても、「(道立)衛生研究所の対応になるだろうが、予算確保できない」(同)と突き放し、お手上げの状態だ。
だが、この1年間で進歩もあった。大学教授らを招いたシンポジウムでは、農家から「うちの畑を使用できないか」と問い合わせがあったほか、道の雇用対策事業を活用し、プロジェクト専従メンバーを雇用するための予算も確保した。
同プロジェクトリーダーで、建設会社と農業法人を経営する舟山秀太郎さん(58)は道内で唯一、大麻栽培者免許を持ち、厳重に管理した農場で産業用大麻の試験栽培を続けている。年内には事業化するための会社を設立する計画で、舟山さんは「困難だからこそ挑戦する価値がある」と、産業化に執念を見せている。
産業用大麻 産業利用するため、麻薬成分を含まないよう改良された大麻。茎を加工し、建材や自動車の断熱材、プラスチック製品などを製造できる。国内では、神事などに使用するため栃木県で生産されているほか、フランスやカナダなどでは、すでに工業原料として導入されている。
(2009年8月10日08時58分 読売新聞)
今さら言うまでもないことだが、敗戦後、GHQに大麻取締法を強要されるまで、日本では全国各地で栽培作物としての麻が育てられていた。それは衣服や日用品など、生活に密着した身近な素材でもあり、戦時中は軍事的な用途でも使われていた。
大麻取締法が制定された際の国会議事録の引用を当サイトでも紹介しているが、この法には当時の国会議員から疑問視する声が出ていた。そもそも日本では一般的に大麻が薬物として使われていた社会状況はなく、大麻の栽培が何か問題を引き起こしていたという状況もまったくなかった。GHQは、大麻の栽培を全面的に禁止するよう求めてきたが、日本の当局者たちの抵抗によって、栽培を免許制とすることで辛うじて大麻栽培を守った。だが、GHQは、大麻の栽培を厳しく規制してきたばかりでなく、繊維となって薬物としては全く意味のない大麻についてまで、その収量などを届出制とした。当時の国会議事録によると、繊維になってしまった大麻まで厳しく管理することに意味などないではないか、日本としては大麻繊維が必要なのに、これでは栽培農家が面倒になって意欲を失うのではないかと政府委員を質している。それに答え、政府委員は、その点についての懸念はあるが、GHQの意向で止むを得ないのだと答弁している。
大麻取締法は、当初、大麻繊維の生産を弾圧することが目的だったのではないか。
北見の産業大麻特区は、記事にある通り、北海道独自の特区制度として認められたものだが、中央政府での構造改革特区では、全国各地から提出された産業大麻特区の申請を、厚生労働省が拒否している。産業用の大麻でも、品種改良などで容易にTHC濃度の高い大麻になり得るし、突然変異も考えられるなどというのが理由だ。このバカ厄人どもは、デタラメ薬物情報を垂れ流す天下り先に予算を付けはしても、地域の産業発展や国益のことなど何も考えていないのである。経済産業省は一定の理解を示し、厚労省に検討を要請しているのだが。
先に政党アンケートを公開したが、北海道に基盤を置く新党大地は、産業大麻については理解を示している。今度の選挙では、北海道は民主党と新党大地が協力し、有利な展開を進めていると報じられていた。
政権交代が実現し、新党大地の鈴木宗男氏が与党政治家となれば、風向きも変わるかもしれない。地元・北海道の発展を真摯に追求されてきた鈴木宗男氏の活躍に期待したい。
【参照】
●参院厚生委員会質疑(昭和23年06月25日)
●第2回アジア大麻産業国際会議レポート/ふぁーみんぐ通信 08年11月号
●産業用大麻栽培特区の挑戦~北海道北見市の巻~/ふぁーみんぐ通信 09年2月号
●カナダの産業用大麻政策を考える―予習の1/弁護士小森榮の薬物問題ノート
●カナダの産業用大麻政策を考える―その1/弁護士小森榮の薬物問題ノート
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