赤城高原ホスピタル薬物乱用者200人についての考察

投稿日時 2009-08-20 | カテゴリ: かっちゃんの薬物乱用問題考察

薬物乱用問題についてインターネットで検索して行くうちに非常に勉強になる赤城高原ホスピタルの公開サイトがあった。

http://www2.gunmanet.or.jp/Akagi-kohgen-HP/index.htm


特に薬物乱用について勉強になるのは、その中の薬物乱用200人の証言という、これまた読むと非常に重たい気持ちになるページが一番である。その他にも専門的な研究成果、危険薬物についての警告、研修のお勧め案内など充実している。しかし、この病院のやっている事は凄い。厚生労働省の出先機関以上の国民の公益に深く関わった事業ではないだろうか。多くの専門医にも有用なのではないだろうか。


日本の薬物乱用問題で非常に重大な問題は「覚醒剤問題と、大麻を除く他の薬剤についての乱用である」という事は、インターネットで公開されている「赤城高原ホスピタル」の公開サイトの中「薬物乱用200人の証言」について良く読む事でも分かる。患者自身の手記と院長のコメントを見ると、全国の薬物による精神疾患患者の調査したデータは符合するといえる。院長竹村氏がこの証言集を記録した目的は何だったのだろう。院長であり医師である竹村氏が多忙ななか、これ程の記録を残された事については本当に敬服したいと思う。明らかにこれを読むと薬物問題の実体について迫れる物である。

http://www2.gunmanet.or.jp/Akagi-kohgen-HP/DR200.htm


院長自身の問題意識は、脱法ドラッグや覚醒剤を初めとする薬物乱用に陥るきっかけや家庭環境と、さらに女性については風俗産業、すなわち売春との関連についても述べている各項目のタイトルとしても見ることが出来る。ドラッグとセックスという項目以外にも内容は女性の売春と薬物、特に覚醒剤について多く語られている。


実は売春とかセックスなどのキーワードは他のタイトルでも出てくる。人間はセックスによる快楽をもとめる事は当たり前の事であるが、何故ドラッグと結びついて問題になるのかは考えさせられる事だろう。売春は日本では禁止であるが、しかし公然の産業である。人間社会がある以上どこの国でも存在し、それに従事し報酬を得る人々がいる。しかし日本の社会では「売春婦」という職業の人が外国で良く聞くデモなどをやる事はない。


そこら辺がまだ日本社会の固有のものなのかも知れない。その一方危険な脱法ドラッグや、処方医薬品に手を染めるものは看護婦、医師は入手しやすい立場で一般人に処方するばかりでなく自らも使用し、病んで行くケースもあるようだ。証言者の中には看護婦経験者もいる。


私はここに書かれていることが数値化されてデータ化出来ないかと思って調べたが、読んで行くうちに薬物乱用問題に関心があってこの証言集を読む機会を持ったなら、全証言、全文を読んでそれから数値化されたデータを抽出したり評価するべきではないかと思った。それが竹村院長がインターネットに公開した本意であると思う。そのデータよりも総合的な感想の方がより重要で、データは対策の補助的なものとして有用だと言うことが出来るかも知れない。


私が初めて読んでから1年以上たったが、その後更新されていない様だが、証言集の各タイトル名、各項目別の人数は以下のものである。

きっかけ、気分変化 24人
家庭環境 18人
社会環境 22人
使用法、薬物使用のサイン 24人
ドラッグとセックス 21人
医療 26人
犯罪、逮捕、補導、裁判、刑務所 23人
乱用、耐性、離脱(禁断)症状 20人
依存、 経済問題 22人
10 幻覚妄想、精神症状 27人
11 薬物関連医学問題(身体的問題・多重嗜癖・感染症) 20人
12 末期、後遺症 16人
13 17人
14 回復 18人


合計298人で200人よりかなり多くなったのは成り行きであろうか。


この、患者と院長の手記は、院長の面談による手記という形の様だが、ここでは主たる使用薬物とか併用使用薬物などという選り分けがされていない。どんな薬物が危険なのかという問題意識もあるだろうが、薬物依存に陥る事全てについて公開し、知って貰う事だと思う。それはそれとして私個人の関心から以下に298人の証言から使用した薬物を拾い一覧表にしてみた。

順位 使用薬物 使用者数 順位 使用薬物 使用者数 順位 使用薬物 使用者数
1 覚醒剤 151 13 アルコール 11 25 スマートドラッグ 2
2 有機溶剤シンナー 41 14 覚醒剤2他剤使用歴 10 26 エフェドリン 2
3 リタリン 29 15 安定剤 9 27 キノコ 2
4 マリファナ 28 16 ブロン 8 28 合成麻薬 2
5 不明 26 17 リスロンS(安定剤) 6 29 ヘロイン 2
6 自殺者、訃報情報 19 18 ラッシュ 5 30 ナロン 1
7 覚醒剤マリファナ使用歴 14 19 ウット(鎮静剤) 5 31 カフェイン 1
8 ハルシオン睡眠薬 13 20 コカイン 5 32 利尿剤ラシックス 1
9 LSD 12 21 エフェドラ 4 33 咳止め薬エフストリン 1
10 脱法ドラッグ 12 22 多剤(薬物名不明) 4 34 ブロコデ 1
11 エクスタシーMDMA 11 23 デパス 3 35 ケタミン 1
12 市販薬処方薬 11 24 眠剤 3

  1. もともと患者の自主的な記述であり、「使用薬物を調べた調査」ではない事が前提である。
  2. 覚醒剤が半数を上回り、有機溶剤がそれに次ぐのは全国の薬物による精神疾患患者数の調査に符号する、次に多いリタリンは時代を反映したものであろう。大麻は覚醒剤使用者をはじめ、LSD、MDMA、リタリンなど他の薬物と使用歴が重なるのが全てである。覚醒剤使用者には大麻を初めとする他の薬物の使用歴がある者はもっと多いと思われる。
  3. 脱法ドラッグは単に合法ドラッグと本人が言う物を言い換えた。名前を挙げた物もあるが用途不明のものも含んでいる。
  4. 不明とあるものは多くは覚醒剤らしい、薬物乱用、ドラッグ、などと表現する物も入っている。

感想

覚醒剤についての日本政府の対策は、勿論入手経路を絶つ事と入手したもの使用したものに対する厳罰であるが、依存症になった者に対してはどうするのか。この証言集を読めばそれでは済まない問題だとわかるだろう。依存症患者を社会から追放すれば彼等を保護できるのは親兄弟か、治療中の病院でしかない。病院へ行く前には刑務所に行かなければならない。初犯こそ執行猶予だが再犯は刑務所行きで出所した彼等を迎えるのは親兄弟以外は闇社会なのかも知れない。


また、有機溶剤、大麻が他の薬物と比べ覚醒剤の次に多いというのも今の日本の薬物乱用問題よくを表しているが、実は時代を反映して大麻以上に多いのがリタリン、ハルシオンを初めとする当時の処方薬や脱法ドラッグなどの類である。特にリタリンは飛び抜けて多い。恐らく今でも病気治療中の人は多いのではないだろうか。


使用されている薬物の種類も非常に多い。又、薬物とだけ言って名前不明のもの合法ドラッグとだけ言っているものは脱法ドラッグとしてまとめた。アルコールについて挙げているものについては数えたが、全て覚醒剤、リタリンなどと併用しているものであるはずだ。アルコール依存についてはこのサイトマップ最上位に取り上げているからである。


エフェドラによる患者数は4人であるが、ダイエット目的で一時流行したといわれ、この公開サイトにもエフェドラは危険というタイトルがある。覚醒剤使用の契機としてダイエット目的でというのが結構ある。若い女性の悩みにつけ込むのは同じなのだろう。


又、友達の話だとして院長に語っている人もあり、そういうのは使用している薬剤を特定するのは除外したが、家族兄弟の患者についての話ではっきりと使用歴を話しているのは加えてある。最終的に200人の証言が300人近くの膨大なものになって、恐らく竹村院長も最初に予想していないほどの規模の大きなドキュメントとして出来てしまったのではないだろうか。


この証言は当時治療中の者との面談であると思われるが、患者の家族の話もある。患者の証言では覚醒剤が一番多いだけではなく、患者側から体験、症状が述べられているのが特徴である。これも様々である。共通なのは身体依存の強さ、離脱症状の苦しみ、やせる事、幻聴、幻覚などであるが、歯が悪くなる、その虫歯をいじって広げるなど複数の回答者が有機溶剤以外の他剤では見られない症状を述べている。


覚醒剤の次に多いのが有機溶剤だが、エイトフォーなどの汗止めスプレー、男性用整髪スプレー(これを女性が購入するのである。)なども使われているが、多いのがライダーガスである。最近は有機溶剤による精神疾患についてはあまりマスコミでも騒がれないが、少なくとも2005、6年までは依然として問題なのである。使用すると快感が得られるようだがあまり具体的な表現は少ない様だ。しかしその被害、後遺症は長く続く。


一番最近の証言は2006年のものがあったが年齢、年月日が記載されてないのも有るので平均年齢は不正確だが、わかる範囲では22才という数字が出た。恐らく実体に近いと思う。全国の精神医療施設における薬物乱用による精神疾患患者に比べると、赤城高原ホスピタルの薬物疾患患者年齢は非常に若い事は確かだと思うが何故だろう。全国的に名前が知られているからだろうかという疑問もわいてくるところだが、10代や、20代初めのものは親兄弟によって保護されている立場のものが多いのかも知れないと思ったがどうなのだろうか。


証言者の中で退院されたという記述が多く、そのために平均年齢が若いのではないだろうか。


使われた薬物として多い大麻だが、大麻単独での精神疾患というものが院長自身の認識でも確認されないように、患者も同じ様な事を述べている。大麻の特徴は他の薬物と併用かあるいは覚醒剤へ移行する以前の使用として述べられている物もあるが、ドラッグ一般を試したいという人間の欲望の中では有機溶剤を除けば手に入りやすいからだと言えるのではないか。


それは又、ブラックマーケットに接触しやすい環境に身をおけばさらに入手しやすいのだろう。逆に言えば今の日本では大麻は覚醒剤と共にブラックマーケットで流通していると言うことで、自宅の裏に自生している大麻の葉を愛用している大麻使用者は薬物による精神疾患とは無縁と言えるのだと思う。


ドラッグとセックスという項目を設けていることから分かるように、その関連性は強い。しかし、売春とドラッグというと又、別な要素が絡んでくるのだろう。その場合は女性がドラッグ被害にあうのだが、ドラッグを入手するために売春をするその前には、ドラッグとセックスの同時体験ワンセットを経験した女性の存在があるという証言。そしてその前には社会環境があり、家庭環境に遡れば世代間ドラッグ連鎖という問題もある。


数量的にも無視できないリタリンなどの治療薬であるが、覚醒効果を求めて朝起きたら使用されるという。昼間には安定剤、夜には睡眠薬という薬物乱用生活の証言がある。ある意味自分の体をコントロールするために使った例もある様だ。人間は自分の体調を良い状態にコントロールしたいのは当然だが、そのために薬物を使う事自体が薬物の精神依存と既にいえる。その結果入院となる例が多い。覚醒剤と違うのは逮捕が契機で入院という例は少ない様だ。


リタリンなどのもともとは治療薬として病院から処方される薬を乱用するグループは、覚醒剤、有機溶剤を使用するグループとやや違う傾向があるかも知れない。しかし主体的に文字通り覚醒を求めてリタリンを入手する者もいて、その中の覚醒剤経験者は効果が物足りないとして再び覚醒剤へ戻る者もいるという。


リタリンについても身体依存があり、強い後遺症も残し、幻覚、フラッシュバックや自殺などまで引き起こすと言うことが、被害者が出てから問題化する状況がこの証言集を通読すれば理解できる。一時、他の脱法ドラッグも含め、市場に流通し簡単に入手できた時代に多くの人たちがこれらの薬を購入し、心身ともに多くの被害がおきたが今でもその被害者たちは苦しんでいる事を見れば、行政面での対策が必要なのではないだろうか。


薬物乱用問題は重大な社会問題であるが、前にも述べた様に刑事政策として厳罰主義で対応するだけでは解決不能だと言うことだ。しかし、患者の一部は逮捕されて長期拘留され、あるいは刑務所入りしてドラッグから抜け出る契機になって感謝しているものもいる。しかし、その後スリップする例も多く、本当にドラッグを絶つ事が出来る割合とはどの様なものだろうか?やや悲観的にならざるを得ない。


薬物乱用問題とは、このサイトを見る限り、覚醒剤について大半の被害があり、それに続くのが有機溶剤と脱法ドラッグ、市販薬・処方薬の乱用に目をむけるべきであり、使用薬物一般について正しい知識が必要だが、それは医師の処方を悪用すれば覚醒剤に近いリタリンの様なものも乱用したりされたりするものだと言うことである。





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