噴出する大麻とカナビノイドの臨床応用

投稿日時 2009-08-25 | カテゴリ: 最新科学文献レビュー 2000~2009


医療大麻の法的位置付けついては依然として政治的な議論が続いているが、カナビノイドの医療利用に関する臨床研究は、現在、かつてのどの時代よりも旺盛に行われている。実際、医学論文サイトPubMedで検索してみれば研究数が劇的に上昇していることが分かる。例えば、キーワードとして 「cannabinoids, 1996」 で検索すると、この年にカナビノイドについて書かれた科学論文が258件ヒットするが、同じことを2007年でやってみると3400件以上の論文が見付かる。

カナビノイド治療への関心はの多くは、最近になってエンドカナビノイド調整システムが発見されたことにもよるが、医療大麻ユーザーや医師から次々に出てくる膨大な量の証言も研究者の興味を引く一翼を担っている。しかしながら、こうした事例報告の噴出にもかかわらず、カナビノイド研究の多くはまだ臨床前の動物実験に留まっている。カナビノイドについても、THCCBD(カナビジオール)、合成カナビノイド・アゴニストのドロナビノールWIN55・212-2などの単独成分についての研究がほとんどで、天然の大麻全体を吸った場合の臨床研究までには至っていない。

また、アメリカ政府がいかなる大麻使用に対しても強い否定的な姿勢を取り続けているために、当然のことながら、最新の研究の圧倒的多数がアメリカ以外の国で行われる状態が続いている。

カナビノイドの医療価値についての臨床研究が飛躍的に盛んになるに従って、非常に多くの研究者たちが、大麻に著しい治療可能性があることに理解と興味を示すようになってきた。1970年代から90年代にかけての研究では、化学療法に伴う吐き気を始めとするいろいろな症状を一時的に緩和する大麻の能力について探ることが中心だったが、今日では、カナビノイドを使って病気の進行を止めたり遅らせたりする可能性を調べる研究に関心が移ってきている。

中でも、多発性硬化症関節リウマチ炎症性腸疾患のような自己免疫系疾患に対するカナビノイドの調整能力や、アルツハイマー病筋萎縮性側索硬化症(ルーゲリック病)などの神経疾患の治療可能性について多くの関心が集まっている。また、大麻の持っている抗癌作用についても活発に研究が行われており、カナビノイドには、一部のガン細胞をアポトーシス(プログラムされた細胞死)させたり、新しい血管の形成を阻止して悪性細胞の増殖を抑える働きがあることを示す臨床前および臨床研究が相次いで出てきている。

こうした研究の進展は、過去20~30年前の研究者たちが思っていたよりもはるかに広い展開で、今日では、カナビノイドを応用した治療可能性についてますます大きな関心が寄せられるようになってきている。

このパンフレットの使い方
アメリカで医療大麻を合法とする州が増えて、医師の監督下で大麻を使うことができるようになったことで、さまざまなタイプの病気に苦しむ多くの患者さんたちが治療に大麻を使うことを求めるようになってきている。しかし、そうした患者さんや医師たちの大多数にとっては、医療大麻は初めての経験なので、話し合いの中で本当に大麻の治療が適切なのかそうでないのかを検討するガイダンスが必要になってきている。

このパンフレットでは、次の17種類の疾患の大麻のカナビノイドの治療利用について、2000年から2008年にかけて発表された最新の研究を要約してガイダンスとして利用できるようになっている。


これらの疾患のいくつかのケースでは、消化器疾患の緩和など古くから医療大麻ユーザーたちが語っていた証言を現代科学が追認したものだが、カナビノイドを使った糖尿病治療など全く新しく出てきた展開についても取り上げている。

このパンフレットでは、大麻の治療使用についての問い合わせが多く行われている疾患を中心に取り上げているが、いずれの項目も大麻治療についてのみに焦点を当てている。いくつかのケースでは、従来から使われてきた医薬品に比較してカナビノイドの方がより効果的に病気の進行を遅らせることを示した臨床前研究なども取り上げている。そうした点からすれば、このレポートは実質的に、大麻とカナビノイドの医療使用に関する最新科学研究について最も徹底した総合的なレビューとなっている。

医療大麻を使うことを考えている患者さんや推薦しようと考えている医師の方々は、是非このパンフレットをガイダンスとして役立てていただきたいと思っています。また、その他の人も、大麻とそのさまざまな成分について臨床応用が幅広く行われるようになってきている現実を知る入門書としてこのパンフレットを活用していただけると思っています。

ポール・アルメンターノ (paul@norml.org)
NORML/NORMLファウンデーション副事務局長
2008年1月24日、ワシントンDC

このパンフレットの作成にあたっては、デール・ゲーリンガー博士、グレゴリー・カーター博士、ステバン・カーチ博士、ミッチ・アーリワイン博士、さらにNORNLのインターン生であるジョン・ルーシー、クリストファー・ラスムッセン、リタ・ボウエルの各氏の助力を得ました。また、このレポートの出版にあたっては、デール・ゲーリンガー、ポール・クーハンリチャード・ウォルフェの各氏から財政的な支援をいただきました。

このような重要なパンフレットをタイムリーに発行できるのは、関心のある皆様がNORMLの活動を支援してくれているおかげです。今後ともNORMLに対するご支援をよろしくお願いいたします。

 



転載元:噴出するカナビスとカナビノイドの臨床応用 最新科学文献レビュー 2000~2008/カナビス・スタディハウス

(※THC注:転載元のカナビス・スタディハウスでは、解説などが頻繁にアップデートされています。最新の情報を確認するためにも、転載元のカナビス・スタディハウスにアクセスすることをお勧めします。)





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