泌尿器の失禁症は、膀胱の制御機能が低下する疾患で、膀胱の筋肉の弱体化や炎症などのいくつかの生物学的な要因が重なって起こる。また、多発性硬化症やパーキンソン病などに伴う神経障害によって引き起こされる場合もある。アメリカでは、特に65才以上の女性の10人に1人が失禁症で苦しんでいると推計されている。
最近の臨床研究のいくつかで、カナビノイド治療が失禁症の病状を軽減することが示されている。臨床リハビリテーション・ジャーナルの2003年2月号で、イギリスのオックスフォード生活力回復センターの研究テームは、多発性硬化症患者と脊髄損傷患者で、天然の大麻抽出液を摂取(量は自己判断)したところ、プラセボ対照群に比較して膀胱の調整機能が回復したと報告している[1]。
ロンドンの神経学研究所の研究テームも非盲検予備実験で、病状の進行した多発性硬化症患者15人に対して、天然の大麻抽出液を投与して効果を追認している。カナビノイド治療で「尿意逼迫、失禁の回数や量、頻度、夜間頻尿などが、どれも著しく減った」 とし、「大麻をベースにした抽出液は、病状の進行した多発性硬化症患者が抱える泌尿器やその他の問題に効果的で安全な治療法ということができる」と結論づけている[2]。
これらの結果は2006年に、630人の患者を対象に大麻抽出液またはTHCを投与して行われた多施設無作為プラセボ対照研究でも追認されている。治療終了時に失禁症の基準ラインにまで回復した患者は、抽出液で38%、THCで33%だった。この結果は、「失禁症に対して大麻には臨床効果がある」 ことを示している[3]。
さらに最近、アメリカ泌尿器学会の2006年年次総会で発表された臨床前研究では、大麻類似化合物には、動物の膀胱の炎症や過剰活動を軽減する働きのあることが示されている[4]。
こうした成果を受けて、専門家たちは、失禁症の第2選択薬としてカナビノイドの使用を推奨している[5]。
参考文献
[1] Wade et al. 2003. A preliminary controlled study to determine whether whole-plant cannabis extracts can improve intractable neurogenic symptoms. Clinical Rehabilitation 17: 21-29.
[2] Brady et al. 2004. An open label pilot study of cannabis-based extracts for bladder dysfunction in advanced multiple sclerosis. Multiple Sclerosis 10: 425-433.
[3] Freeman et al. 2006. The effect of cannabis on urge incontinence in patients with multiple sclerosis: a multicentre, randomized placebo-controlled trial. The International Urogynecology Journal (E-pub ahead of print).
[4] University of Pittsburgh Medical Center Press Release. May 21, 2006. “Marijuana-derived drug suppresses bladder pain in animal models.”
[5] Kalsi and Fowler. 2005. Therapy insight: bladder dysfunction associated with multiple sclerosis. Nature Clinical Practice Neurology 2: 492-501.
Source: NORML & NORML Foundation
Updated: Jan 17, 2008
Subj: Incontinence
Author: Paul Armentano, Deputy Director
Web: http://www.norml.org/index.cfm?Group_ID=7012
【転載元】
カナビスの医学研究 | 失禁症 | カナビス・スタディハウス
(※THC注:転載元のカナビス・スタディハウスでは、解説などが頻繁にアップデートされています。最新の情報を確認するためにも、転載元のカナビス・スタディハウスにアクセスすることをお勧めします。)
|