問われるのは視聴者のメディア・リテラシーでもある

投稿日時 2009-09-14 | カテゴリ: 野中の大麻取締法改正論

NHK『なぜ市民が大麻を ~違法薬物ネットワークを追う~』を観ての感想を野中さんに書いてもらった。談話室から一部編集して転載する。


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以下に番組の問題点を列挙しますが、録画していない為、多少の記憶違いなどがあるかもしれないこと、問題点が多すぎてすべてを列挙することは不可能に近く、番組の報道のあり方自体がひとつの大きな問題点となっていることをご了承いただきたいと思います。

●大麻の有害性を示す根拠として、1997年のWHOの報告書から、ほんの一部を抜粋し、大麻使用が人体に恒久的に重大な害を及ぼすかのように印象付けるように編集されているが、番組で取り上げられていた大麻使用の影響は、ほとんどが大麻使用の急性の影響(大麻使用による陶酔と大麻が体内に残留する期間に報告される影響)のうち、特にネガティヴな印象を与える用語を意図的に抽出したものであり、そのほとんどは短期間に消失する影響である。

同報告書には、大麻使用の急性の影響として、他に、軽い幸福感、リラクゼーション、社交性の増進、高められた感覚と知覚、食欲の増進などの特徴などの記述もみられる。また、大麻の治療的な使用として、癌化学療法による鎮吐薬としての有用性、エイズ消耗症候群における食欲増進作用などが報告されており、『抗うつ剤効果のレポートもあって、患者の中には、本当に大麻を鬱的な症状の'自己治療'に使用する人もいるかもしれないが(Gruber et al.,1997)、これらは価値を検討すべき必要性がある。』などの記述も見られる。
*厚生労働省が文書を保有していないとして公表しない1997年のWHOの報告書の日本語翻訳版について全体像と詳細をご覧になりたい方は以下のページにアクセスして頂きたい。
Cannabis : a health perspective and research agenda

●海外における大麻に関する認識と規制の現状・大麻の医療価値などの情報はすべて意図的に排除されている。大麻はアルコールやタバコより有害性が低いことを示す信頼性の高い研究結果が複数存在すること、UNODC(国連薬物犯罪事務所)は薬物使用の非犯罪化政策を支持する報告書を公表していること、大多数のヨーロッパの国々、南米のいくつかの国々、アメリカの多くの州などでは既に個人使用目的の大麻所持は非犯罪化されていること、大麻には高い治療効果があり、既に医療大麻が認められ利用されている国が複数存在することなどは一切報道されていない。

●ゲストコメンテーターとしてノンフィクション作家の吉岡忍なる人物を起用し、彼の発言をあたかも大麻問題の専門家の意見であるかのように印象付けるように編集されているが、彼は大麻問題の専門家ではなく、大麻の単純所持に対して刑事罰を適用する現在の規制を正当化する立場からの発言しかしておらず、政治的に公平な報道ではない。わが国における大麻使用の最大の弊害は逮捕・拘禁されることである。

以上、番組の問題点をいくつか列挙してみましたが、これらの点をみるだけでも番組が放送法第3条の2(*1)に抵触する可能性の高い偏向報道であることがわかります。NHKは広く国民から受信料を徴収しているのだから、他の民法各局以上に真摯な報道の姿勢が求められます。NHKの職員や番組制作者のなかに大麻経験者はいないのでしょうか。このような報道の現状に対して、問われるのは受信者側のメディア・リテラシーでもあります。大麻問題に関心を持つことを通して、司法、行政、立法、報道の現状のさまざまな問題点が見えてきます。

(*1)放送法第3条の2
第3条の2 放送事業者は、国内放送の放送番組の編集に当たつては、次の各号の定めるところによらなければならない。
1.公安及び善良な風俗を害しないこと。
2.政治的に公平であること。
3.報道は事実をまげないですること。
4.意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること。





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