大麻問題は「薬物乱用問題」なのか
大麻については既に述べたように、特に「身体に及ぼす害」が15年以上前からの不正確な情報をそのままに害を言っている。が、いくつかの重要な間違いが大麻取締法変革運動のサイトから指摘されている。
ダメセン(麻薬防止センター)のホームページで大麻という項目を開けば、『どんな形のものにせよ、大麻は心身に有害です。通常認められる身体症状の幾つかを挙げてみますと、心拍数を上昇させ、目を充血させ、口や喉の渇きを感じさせ、食欲を増進させるなどです。』という前置き自体が明白な間違いである。医療大麻についての最近の膨大な研究発表もさることながら、極めて恣意的で根拠のない断定である。
どんな形にせよモルヒネ・コカインは体に有害であるなどという言い方が不正確な言い方であると同様に、それは大麻についても当然言えることであるが、それ以前に目を充血させ食欲を増進させる作用が常に有害とは限らない。他の身体症状についても、それが直接身体に有害であるかどうかを言っているわけではない。
以下、短い説明文が続くが、有害性については誇張が酷く、ここで述べられていることは現在では殆ど否定されている。むしろ、多くの統計学や医学などの科学的な研究によって証明された大麻の安全性について何も触れていないことが、大麻についての古い考えを全く改めていない事を物語っているに過ぎない。
又、簡単な統計データも平成19年度まで明らかにされているが、それによると検挙者数が平成10年から減ったり増えたりしながら漸増している事がわかる。そして押収量であるが、乾燥大麻の最高を記録した年は平成13年の844.0kgである。この年はハシシは73.5kgだ。ハシシの最高押収量を記録した年は平成16年の327.5kgである。平成15年から17年にかけて乾燥大麻とハシシを合わせ、882.1kg(H15)、970.1kg(H16)886.2kg(H17)と高水準であるが、この押収量が平成18年は332.5kg、19年は560.6kgと減っている。
平成20年度のデータは、新聞やニュースによると、「昨年1年間に全国の警察が大麻の密売や所持で検挙した人数は、対前年比22.3%増の2778人、事件数は16.8%増の3832件で、昭和31年に統計を開始後、最多となった」とあるが、これも対前年比増加率で示すなら平成12年から13年にかけて、検挙者数が24.6%、事件数27.8%である。
何も平成20年度が異常に増えたという程でもない。しかし、平成21年度、検挙者数が減ったとしたら、ダメセンの啓蒙活動の成果などというのだろうか?違うだろう。実際に大麻を使用する人が減るならともかく、今の大麻取締法下の日本では、「検挙者数のデータ」はあっても「使用者数のデータ」を調べることが出来ない。
事件数、検挙者数が対前年比を大きく上回った年の翌年は、増加率対前年比があまり変わらない年もあり、事件数、検挙者数は近年になって極端に増えたとまで言うことは出来ないと思う。増加率が非常に大きな平成13年度にかけてはマスコミなどが「大麻汚染広がる」などと大騒ぎしただろうか。
大麻に関しての情報は、ダメセン、マスコミの反大麻情報にも係わらず、世間には大麻についての正しい情報も広まってきている様である。少なくともネットの中では大麻に関しての論議は大麻容認論の声も大きく、それに対する反大麻論は「合理的な根拠を示せ」という大麻容認論側からの要請に答えられたものは存在しないとまで言える。
マスコミが反大麻情報を声高に叫んでも、実際にネットの中での大麻情報もあり、又、検挙者人数の10年以上前から続く漸増の動きは大麻使用者の実使用者の増加を物語るのかも知れない。その数は実際には非常に多いという推測も成り立つ。WHOでの統計データでは日本の大麻使用者は1.5%という数字もある。このデータの信頼性は対象人数が900人足らずと非常に小さいので、いささか低いと思われるが、もしもすでに1%を超えているとしたら全国では130万人の大麻使用者数となる。
130万人の大麻使用者がいて、4千人足らずのものが逮捕され、実名を報道されてその後の人生を閉ざされたり、社会人も解雇されたりする。スポーツ界では、企業や大学の運動部の一人が逮捕されるとその部全体が休止を迫られたり、自ら自粛するなどの極めて不条理な事態が益々増加するかも知れない。100万人以上を全員逮捕する事などは出来ないのである。これなら大麻の「少量個人使用」について「非犯罪化」して、大規模な密輸や他の危険なドラッグを供給する方を、酒やタバコも含めて規制した方が余程合理的である。
20年以上前にマリファナで芸能人が逮捕されるというスキャンダルが大きく報道される事があったが、その時には10万人の隠れた使用者がいて、1990年には20万人以上いるはずだと述べられた文もある。今では数十万人という説(マリファナ・ナウ=第三書館、序文)があり、10万人から100万人以上という大麻愛好者の数の実数の推測は幅が広い。しかし例え最低10万人という数であっても、毎年逮捕される人数に対しては比較すれば非常に多い。
例えば大麻使用者100万人として、0.3%は逮捕されるが多くは初犯であり、残りの愛好家99.7%は隠れて大麻を使用しているということになる。これはおかしい。しかし、これに対しては大麻使用がそもそも重大な犯罪としてみるべきものなのかという、立法論からの問題提起は昔から存在し、近年益々高まって来ている。
多くの逮捕された若者は、そのとき初めて世間の建前のバカらしさについて思い知るだろうが、今のネットの中での圧倒的大麻容認論の優性を知れば「自分は運が悪かっただけだ。今度は捕まらない様にするさ」と言うことになる可能性が大きい。今の反大麻のネガティブキャンペーンは逆効果とも言える。しかし、こうして医療大麻の研究にしても日本は世界から著しく取り残される一方なのだと思う。
こういう不条理自体を解決する事は、少なくとも警察という国家権力の暴力で解決出来るものではない。大麻使用が本当に身体に有害なら、あちらこちらの病院でその被害者の実体が明らかになるはずである。そんな事実は外国と同様に日本にもないのである。対策を打つべきは、覚醒剤などの有害薬物被害者に対する治療を目的とした救済であり、それは薬物政策全体を見直すという事だと思う。この意味で世界で最も新しい考え方として、薬物乱用について、全てのドラッグを「非犯罪化」し、効果を上げているポルトガルの様な国もある。
結局、日本の「薬物乱用問題」については、酒、タバコや市販の薬、医師の処方薬などで「薬物依存症」に陥る膨大な人数についての政策はなく、覚醒剤、大麻などの「違法な薬物」についての「逮捕」ありきで、その後は自分で治療せよ、というのが実態ではないだろうか。
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