本当は非常に深刻な日本の薬物乱用問題(6)

投稿日時 2009-09-24 | カテゴリ: かっちゃんの薬物乱用問題考察

日本の薬物乱用問題はオランダより遙かに深刻である
日本の薬物乱用者というとどのくらいのものになるのだろう。覚醒剤については最大260万人という声がある。シンナーはデータになかなか出てこないが、覚醒剤の3分の1くらいだろうか?注意するべきは覚醒剤乱用者の最大半分くらいはシンナーの経験があるという事で、シンナーを卒業した者が併用することもあるということだ。
この二つのドラッグの依存性は強烈で、覚醒剤の覚醒による「快感」とシンナーの「陶酔」作用にはまる率は高いようだ。中にはどちらも十分楽しみながらきっぱりと卒業する人もいれば、覚醒剤を長年使って健康をさほど害さないという人も希にはいる様である。そして、ある日、目から鱗がとれるがごとくやめる人もいるという。様々なケースがあるのが薬物乱用問題なのである。全体としてみれば覚醒剤、シンナー乱用で、日本の薬物乱用問題の深刻さは世界トップクラスだろう。

なぜ、この二つをとりあげたのかというと、日本ダルクのターゲットドラッグとして何と言っても覚醒剤、ついでシンナーが挙げられることである。その他に睡眠薬、安定剤、市販風邪薬などの普通の薬で依存症になる人もダルク入所者にはいるという。治療には長くかかる傾向があるという。これらの数とシンナー乱用者の日本全国での数は覚醒剤に匹敵し200万人と見て過言ではないと思う。

シンナーを含め薬物乱用者200万人と、覚醒剤使用者200万人、さらにアルコール依存症者200万人とすると、日本ではアルコール依存を含めた薬物乱用者は600万人という驚くべき数字になる。これらの薬物乱用者について重複使用も考えるなら実数400万人程度ぐらいまで絞れるとしても深刻さにおいては何も変わらないのである。

今度民主党が政権をとり、キャッチフレーズに「第2の酒井被告を出さない」と銘打ち麻薬対策プロジェクトチームを立ち上げるそうだが、一抹以上の不安を抱かざるを得ない。
従来と同様、「啓蒙と取締の強化」だけで上記の問題が解決に向かうとは思えない。日本ダルクでは殆ど、あるいは全く薬物を使わない治療法、すなわち、治療プログラムによって入所者の3割をアルバイトなどで自立させ社会復帰させているという。

この具体例を言うと、入所者は料金16万円を支払うダルクの施設で治療プログラムを実践するが、もともと無収入の場合の生活保護費16万円を支給される事を基準とした入所費用らしい。事実そうなのである。この人がやがて施設を出るまで治療を受け、アルバイトで生計を立てて社会復帰まですれば生活保護費も不要。復帰が進めば国民保険や社会保険に加入し、また税金を払う様になったら国の財政に大きく寄与する事になる。

この人が年収200万円で自活したとしても生活保護費年間200万円が戻ると考えれば、もし3分の1の200万人が社会復帰すると4兆円である。プラマイ8兆円だという事も可能。
しかもこれは見方によっては過小な見積もりかも知れない。1人の薬物依存症者の家族など周囲を見れば1千万円以上など軽く医療費その他の経費がかかっているのではないのか?これがもしもその人が治療プログラムに入れば、やがて本人の周囲の状況は安定し、家族が安心して仕事につけるだろう。実質の経済効果は大きいと思われる。

しかし民間の篤志家のダルクにそれをまかせるわけにはいかないだろう。アルコール依存については断酒会という自助組織があるが、ダルクにも断酒会にも援助を増やすとともに、国の制度を考えてみてはどうなのかと思う。その一つがドラッグコートである。国による薬物依存者の治療プログラム施設であるが、薬物事犯に対して告訴して判決を出した後に、施設での薬物依存について治療プログラムを実施し、卒業したら告訴は免除されるという司法手続きの一種の様である。

覚醒剤で逮捕されたものに対しては初犯は執行猶予で世の中に放り出し、直ぐに覚醒剤使用に直行する再犯例が後を絶たない。これではいつまで立っても薬物乱用はなくならないだろう。ダルクに頼るのは、膨大な補助金を出して全国に施設をつくるのも良い方法とは思えない。公営と民間で競争原理の下に、施設入所のきっかけが薬物犯罪で逮捕とはっきりしているドラッグコートは民間の施設とは違い、罰則にたいする一種の司法取引という強制力の下に犯罪者の断薬を支援するもので、恐らくは自ずと違った役割を担うものと思われる。

そして、大麻取締法で覚醒剤なみに「麻薬」として取り締まられる大麻であるが、実際に「大麻は酒、タバコより害は少なく、言われているよりずっと安全」であれば何故逮捕にまで行くような取締をする必要があるのかと、必ずそうなってくる。ドラッグコートが制度として実現していたら覚醒剤乱用者と同じく治療プログラムを施すのかという事になる。

それでは全国に大麻のみ使用の中毒者や依存症と言われる人がダルクなどで治療プログラムを受けているのかというと一人もいないようである。大麻を不眠を改善しようとして常用している人がそれで困る事もないし、止めたとしても離脱症状が出るわけでもないのである。他の乱用薬物と比べ特に体に害のない大麻については先進ヨーロッパ各国と同じようにハームリダクション政策をとり少量個人使用目的については訴追しないという政策を採用するべきである。

そうすれば、覚醒剤使用事犯に対するドラッグコート政策との整合性もある。覚醒剤使用率が2%以上かも知れない日本は、「日本ではオランダの様にヘロインなどのハードな麻薬などの害が深刻でないのだから、オランダの様な苦肉の策として大麻を非犯罪化する必要はない」などと本当に言えるのかと言いたい。

なお大麻取締法変革センターホームページで各政党に対する「大麻の少量個人使用について非犯罪化」などの各政党アンケートに対する回答を見ると、日本にはそもそも「薬物乱用問題」そのものに対する政策が不在だという事がわかる。自民党は国が行っている政策イコール官僚任せが対策だとあっけらかんと答えている。「回答拒否」の共産党よりはずっとましかも知れない?

民主、社民、国民新党の連立与党には期待できる気がするが、強く言いたい。「病人を逮捕し、裁判にかけるような薬物乱用政策」では効果もないしやめるべきだ。ほんの少しドラッグコートに金をかけ民間自助グループに補助金を増やし、大麻についてハームリダクション政策を採用すれば経済効果は10兆円以上期待できる。「麻薬取締」などやめるべきだ。

しかし、アルコール依存症を含めるなら「薬物乱用問題」における被害者は数百万人と言うことで、これが大きな日本社会の負担になっているとはどの政党も知らないのだろうか。

(この項終わり)





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