ヨーロッパにおける大麻規制(4)

投稿日時 2009-10-14 | カテゴリ: 大麻便覧.グローバルな課題と地域の経験(抄訳)

2001年のINCB年次報告には、'附表IVに含まれるには、薬物が特に乱用される可能性が高く、悪影響を引き起こすと思慮され、そのような負の性質が実質的な治療上の利益で相殺されないもの'と明記されている。1961年の条約を作成する全権委員会議に出席した代表委員団の見解では、大麻は確かにそのような特性を示した(例えとして、コカインはそうでなかったが)。THC、大麻の主要な精神賦活性の成分は、1971年の向精神薬に関する条約の4つの付表の第一にもまた掲げられており、その使用は学術上と非常に限られた医療上の目的を除いて禁止されている(第7条a)(6)。
この分類構成は、大麻の乱用に関わる懸念と各国に国家の法律の下で大麻に対して最も厳しい規制を設計するよう勧告する条約立案者の要求を反映する(7)。実際に、この二重分類法(附表Iに加えて附表IV、1961年の条約)は、加盟国に附表IVに掲げられる薬物の'特に危険な特性'のために、使用の禁止を含む、必要と認める如何なる特別な規制措置をも採択することを許可する。しかしながら、加盟国は、附表IVに掲げる薬物の特に危険な特性に照らして、必要であると考慮されるならば、あらゆる特別な規制措置を採るものである(8)。この基準の非義務性は、実際にその履行のための条件であり、加盟国は’それが必要であると信じる場合にのみ、特別な措置を適用する義務がある’と再び述べる1961年の条約に関する国連のコメンタリーによって確証される(9)。

[脚注]
(6)1971 年の向精神薬に関する条約のもとには四つの付表がある;付表I ― 乱用されやすい性質が公衆衛生に対して特に深刻な危険性を与え、あるとしても非常に限られた治療的な有用性を有する物質;付表II ― 乱用されやすい性質が公衆衛生に対して重大な危険性を与え、小から中規模の治療的な有用性を有する物質;付表III ― 乱用されやすい性質が公衆衛生に対して重大な危険性を与え、中から大規模の治療的な有用性を有する物質;付表IV ― 乱用されやすい性質がより小規模ではあるが、それでも尚、公衆衛生に対して有意な危険性を与え、小から大規模の治療的有用性を有する物質。

(7)1961 年と1971年の条約の締約に先立つ国連の文書は大麻に対して特定の懸念を確証する。1959年に、各国は'大麻の違法な栽培を抑制する努力の増進'を要請された(CND Decision 14 December (XIV) April/May 1959)。1968年に彼らは、'大麻の乱用と不正取引を撲滅する努力を増進する'こと、あるいは'大麻に関する研究を促進し、更なる医学的、社会学的情報を推進し、大麻の無害な薬物としての非医療的な使用の合法化、あるいは認容を主張する広報に効果的に対処する'ことを勧告した(Economic and Social Council E/ RES/1968/1291(XLIV), 1520th Plenary Meeting, 23 May 1968, on the abuse of cannabis and the continuing need for strict control)。E/RES/1959/730(XXVIII)E 1088th Plenary Meeting, 30 July 1959からの抜粋は以下に示す:'麻薬単一条約の第三の草案は、土着医療の特定のシステムを除いて、大麻の医療使用の禁止のための明文を含むことを回想すべきである'。1957年4月/5月の大麻に関する疑問についての経済社会理事会決議IV(XII)からの抜粋、'全ての政府に医療上(アーユルヴェーダ、ユナニー、Tibbi系)及び学術上の目的を除いて、それまで行われていなかった地域での大麻ベースの全ての物質の合法的な消費を適当な期間内に廃止することを要請する'。

(8)1961年の条約 第二条5(a)。

(9)1961年の単一条約に関する国連のコメンタリー(p. 65)。

[本文]
したがって、1961年の条約は大麻に最も厳しい規制制度を適用することを提唱するが、その様な規制の必要性の解釈において、加盟国にある程度のフレキシビリティーを委ねるようである。この分類によると、大麻の使用と所持は、正式に許可された医療上あるいは学術上の目的を除いて許されてはならない(1961 年の条約 第四条(c)、第三十三条、第三十六条)。加盟国はその不正使用を防ぎ(1961年の条約 第二十八条)、乱用を防止するために全ての実行可能な措置を執ることを要請される(1961年の条約 第三十八条)。彼らは、その所持もまた許可してはならず(1961年の条約 第三十三条)、彼らがそれをすると決めたならば、大麻の所持を処罰すべき犯罪とする権利を与えられ(1961年の条約 第三十六条)、不正取引目的の為の所持を犯罪的な性質の違反とする権限を負託される(1988年の条約 第3条 第1項 (a)(iii))。個人消費のための所持もまた犯罪とみなされる可能性がある(1988年の条約 第3条 第2項)。

この規定の制度の大麻に対する要求の過酷さは疑う余地が無く、調印した加盟国が国連条約を破棄することなく、仮定的な合法化制度のような大麻の非医療的な使用を許可することが出来ないことは明白である。 彼らは大麻の個人使用を妨げ、防ぎ、あるいは― 必要であると考慮されるならば ― 禁止し、処罰する措置を設けなければならない(10)。

しかしながら、こうしたことの全ては主として調印した加盟国による条約の受諾に基づくものである。これは、加盟国が条約の基準を適用する機会と必要性を判断しなければならないことを意味する。条約は実際に自動発効ではなく、国際的な命令の国内法への転位において、加盟国は自由裁量権を与えられ、同時に国際的合意の解釈において、信義誠実の原則を適用する。これは、条約の文書における保障条項の存在を通して見ることが出来る:憲法上の制限に従うことを条件として(1961年の条約 第三十六条1);自国の法制の基本的な概念に従うことを条件として(1988年の条約 第3条 第2項);締約国はできる限り実施するものとする(1961年の条約 第二十六条 第2項);、これらの措置が必要であり又は望ましいと認めるときは(1961年の条約 第二十二条並びに第三十条第2項及び第4項)。1969年の条約法に関するウィーン条約第三十一条によれば、それでも、各国は条約をその趣旨及び目的に照らして誠実に解釈しなければならない。

エビデンスの不断の探求
1970年までに、64の国が麻薬に関する単一条約を批准し、それと共に大麻に対する規制制度は要請された。それでも、大麻がより危険であると認められる他の物質と何ら相違なく、より厳しくさえ取り扱われた事実は、政府と議会の内部に疑念を引き起こした。


[脚注]
(10)国は考慮されるならば、という表現は、大麻の使用あるいは大麻の少量の個人使用のための所持、あるいはその両方を意味する可能性がある。

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Source:Addiction neurobiology: ethical and social implications
EMCDDA, Lisbon, June 2009
A cannabis reader: global issues and local experiences
http://www.emcdda.europa.eu/attachements.cfm/att_53377_EN_emcdda-cannabis-mon-vol1-ch7-web.pdf

[ 翻訳:野中 ]





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