クローン病の治療目的で大麻を所持していたのだから、大麻については無罪だと主張していた成田さんの裁判で、昨日、東京地裁が判決を言い渡した。LSDと大麻の所持に対する求刑は1年6月で、判決は懲役1年執行猶予2年だったとのこと。大麻所持についての無罪主張を裁判所は認めなかったようだ。「予想通りの不当判決」といったところだ。
成田さんは控訴して争う意思のようだ。健闘を期待したいが、厳しい展開が予想される。日本の裁判は、強調的に言えば「一審が全て」のような面があるからだ。「予想通りの不当判決」を予め防御するための論陣を張っておかなかった弱点は、一審の判決に如実に示されているようだし、控訴するにあたっても不利な材料となるだろう。
成田さんの裁判については何度か論評してきたが、私個人の感想としては、公判戦略に首を傾げざるを得ない点が多々あった。その懸念は本人に何度も直接伝えてきたし、弁護士にも伝えた。弁論を読むと私の提言は一部採用されたようだが、全体としては彼らの弁護方針と相容れなかったようだ。
また、弁論には、「大麻取締法が制定された昭和23年当時,大麻を医薬品として使用することが全く想定されていなかった」という記述がある。これは、丸井英弘弁護士の「地球維新vol.2」や、これまでの大麻取締法違憲論裁判の記録を読んでいればあり得なかったような、医療大麻の是非を問う裁判としてはあまりにお粗末な、致命的な事実誤認だ。当時、大麻由来の薬は薬局方にも記載されており、その大麻由来の薬による薬害などもなかったと、厚生省麻薬課(当時)の課長が法廷で証言している。それまで薬害もなく使われていた大麻由来の薬が、まったく根拠もなく懲役刑で禁止されたことが問題なのだ。この事実に立脚すれば、当然そこから導かれる立論も異なったものになっただろう。
控訴するのであれば、立法論で片付けられることが明白な、「難病患者による医療大麻使用の無罪」を主張するだけでは不十分だと思われる。
このままの戦略では、控訴審でも「予想通りの不当判決」の可能性が高いのではないか。それを打破するための、先手を打つ弁論が構築できるかどうか、そのための労力とコストは一審を上回る大変なものになるだろう。
「医療大麻の使用を認めるよう求める裁判」は、職質で逮捕されて被告人として否応なく法廷に立たされる刑事事件では、大きな限界があることも、成田さんの裁判は示しているように思われる。
裁判に限らず、成田さんの今後の活躍と健闘に期待したい。
【参照】
●医療大麻解放戦線:地裁判決。取り急ぎ報告☆ 2009-11-02 19:34:38
●マリファナ青春旅行:成田君裁判速報
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