成田君の裁判について

投稿日時 2009-11-05 | カテゴリ: 成田賢一さん(医療目的主張)

2012年7月12日追記
大麻を自己治療目的で使うことについての知識は、日本の社会にも、散発的なテレビ番組や週刊誌などのメディア報道や、当サイトを含むネット上の情報などを媒介として、少しずつ知られてきたように見える。難病の人を含む多数の方から大麻の医療的な使用についての問い合わせも受けている。
そのような問い合わせのなかに、「パスボートがあれば日本人でもアメリカで医療用大麻を合法的に使えるというのは本当か?」という内容がこれまで何度かあった。ネットでそのように謳って客引きをしている現地在住の日本人がいて、トラブルになっているという情報も伝聞で聞いた。
「彼のやっていることをどう思うか?」という質問を過日のスカイプカフェでももらった。

成田賢一君のことである。私は彼が捕まって保釈で出て裁判が始まる前、弁護士を誰にして弁護方針や支援体制をどうするかという最初の最初から彼の要望で手伝ってきた。本当は彼の裁判はこのサイトの「大麻取締法違憲論裁判録」のカテゴリーに入れるべきはずだったが、支援してくれた人たちに暴言を吐きまくり、挙句、裁判経過も判決すらも公開しないという彼自身の振る舞いによって、「逮捕された人たちの話」に鞍替えとなった。

彼の一審判決を受けて、私は次の記事を書いたのだが、気が変わってお蔵入りにしてあった。
「彼のやっていることをどう思うか?」という問いへの返事として、ここに再掲します。

成田賢壱さんの医療大麻裁判を支援する会」というサイトがある。まだ裁判が始まる前、私が提案して立ち上げた動きだ。サイトを作ったのは私ではないが、成田君の裁判を支援する組織として位置づけ、事件の経緯や公判のお知らせ・推移を広く社会に伝えるものとして機能させることができればと考えた。
成田君の裁判は、カンナビストが全面的な支援を表明し、傍聴や公判前のビラ配りなどを行っているが、特定のグループの枠を越えた支援組織を作り、さまざまな人たちが得意分野での協力を行うことで、より有効な支援が行えるだろうと私は考えた。この「支援する会」の代表者、「浅島浩」氏はTHCの読者でもあり、成田君の裁判を支援したいとのことだったので、代表になってくれるよう私からお願いし、快諾して頂いた。「浅島浩」は仮名で、当初は本人が「麻島」とする意向だったが、「麻」の文字はいかにも、といった印象なので、「浅」に落ち着いた。

だが、この「支援する会」は結局のところ機能しなかった。この動きを充実させることより、成田君は自分のブログとサイトを作って情報発信することに力を入れた。成田君はブログで寄付を求め、THCのスタッフや読者たちも応じたが、彼はブログで公判の経過報告すらまともにしてこなかった。それでいて寄付が少ないと文句を書くことに疑問を感じ、ちゃんと自分の言葉で公判の報告くらいするように何度も伝えてきた。

大麻とLSDの所持で逮捕された成田君は、大麻については自らが罹患している難病、クローン病の症状を緩和するための医療目的だから「無罪」だと主張した。もちろん本来は無罪であるべきだと私も思うが、現在の司法がそのような判決を下すことはあり得ないだろう。海外で大麻の有効性が認められている疾病を理由に、大麻使用を無罪とすれば、そのような難病患者は誰でも大麻を勝手に使ってよいことになってしまう。本来はそれが望ましいが、現実問題として、裁判所がそのような判決を出すとは考えにくい。だから、「医療大麻無罪」を主張する一方で、海外で認められている大麻の医学的有効性について、日本では厚労省がまったくデータも持っておらず、研究すら認められていない点を、行政の不作為として追及し、司法にそれを何らかの表現で認めさせることができれば、それで十分に「勝ち」だと私は考えていた。司法が行政の不作為を認めれば、それを根拠に厚労省(行政)や国会(立法)に改善を求める展開につなげることができる。

だが、残念ながら、一審では、医療大麻を問う裁判としてはあまりにもお粗末な公判が展開され、「予想通りの不当判決」で終わった。

この間、不特定多数の人に向けて支援を募り、寄付を得てきた成田君としては、当然のこととして論告や判決についても公開するものだと思い、本人に確認したが、そのつもりはないと言う。私に個人的に送るのは構わないが、彼のブログなりでオープンにはしないのだそうだ。いったい、彼の裁判を支援したいと思って寄付した人たちの思いをどう考えているのだろう。私も裁判前から何度も相談に乗り、長電話で私見を伝えてきたが、いったいなんだったのかという徒労感ばかりが残る。

しばらく前のこと、成田君は政治家に直談判するのだと言って、私が時間をかけて行ってきた政党アンケートを使わせてほしいと連絡してきた。公開している情報でもあり、いくらでも使ってくれと答えたが、他人に寄付を求めながら、自らの裁判の推移や判決文すら公開しない者には使ってほしくないと今では思っている。政党アンケートにしても、情報公開請求にしても、今後の展開を見据えて、布石として積み重ねてきたものなのだ。

職質で捕まって刑事被告人として起訴された裁判の一審で、他人に寄付を求めて公判を維持しながら、論告の内容も判決文も公表しないとは理解に苦しむ。因みに、6年前、私は敢えて逮捕されるような挙に出たが、他人に寄付を求めたのは一審で執行猶予が確定し、個人的にはやる必要のない控訴審になってからだった。

はっきり言って、呆れ果ててしまいました。

医療大麻の使用を認めるよう求める裁判は、職質で捕まって否応なく法廷に立たされるのではやはり限界がある。しっかりと準備をし、運動側から提訴して司法に問うのでなければ、社会的にも受け入れてもらえないだろうと、改めて痛感している。





大麻報道センターにて更に多くのニュース記事をよむことができます
http://asayake.jp

このニュース記事が掲載されているURL:
http://asayake.jp/modules/report/index.php?page=article&storyid=1507