医療大麻に関する最近の研究報告 2000-2009

投稿日時 2009-11-07 | カテゴリ: 最新科学文献レビュー 2000~2009

医療大麻に関する最近の研究報告
近年明らかになった大麻草およびカンナビノイドの医療適応について
2000年-2009年までの学術論文のレビュー

医療大麻を合法と見なすかについての政治的な議論は今まさに繰り広げられているところであるが、カンナビノイドの治療目的での臨床研究は歴史上例のないぐらい広く一般に行われている。米国医学図書館のPubMedウェブサイトで検索してみるとその量がよくわかる。"cannabis, 1996"というキーワードで検索してみると(1996年はカリフォルニア州が、現在医療大麻が認められている13州のうち、初めて医療大麻を許可した年)、大麻について研究し、同年発表された科学雑誌の掲載論文として258本がヒットしてくる。これを2008年について同様に検索してみると、実に2100以上の学術論文が発表されている事実がわかる。

カンナビノイドによる治療に対して寄せられる新たな関心のうち、多くはエンドカンナビノイドの調節システムの発見の結果であるが、中には医療大麻を利用している患者や彼らの主治医からの声の増加によるものもいくつかある。これだけの逸した研究結果があふれているにもかかわらず、それでもなお現在の研究では、実験動物を用い、個々のカンナビノイド(例えばTHCcannabidiol)あるいは合成されたカンナビノイド受容体作動薬(dronabinolWIN 55,212-2)を対象にしているもの がほとんどで、大麻草そのままを用いた臨床での治験についての研究は多いとはいえない。どんな目的の使用であろうと許さないという連邦政府の強権な大麻取締り政策のせいで、案の定、そういう研究の大半はアメリカ国外で行われている。

大麻の治療効果に迫った臨床的な研究が増えているのに伴い(今日では大麻とその成分について分析した研究論文が17,000本以上もある)、病気と闘うために大麻の持つ独特な効能について勉強することもまた莫大な量となっている。1970年代、80年代、90年代と、研究者はその第一歩として、抗癌剤治療の副作用としておこる吐き気をはじめ、大麻が様々な病気の症状を一時的に緩和することについて評価してきた。これに対し今日の研究者は、カンナビノイドが病気自体を治療する可能性について研究を行っているのである。

多発性硬化症関節リウマチ炎症性腸疾患などのような自己免疫性疾患の症状を大麻が改善するとして特に注目され、アルツハイマー病筋萎縮性側索硬化症(ALS、別名Lou Gehrig's 病)など神経疾患における 大麻治療の役割と同様に研究が行われている。

大麻の抗腫瘍効果についてもまた研究が行われている。特定の癌細胞においてはアポトーシス(プログラム細胞死)を誘導したり血管新生を抑制することによって癌細胞の広がりを抑える可能性があるという前臨床および臨床データなどはどんどん蓄積されてきている。近年のこの傾向は、議論の余地はあるにしても、研究者たちも30年前、いや、20年前でさえ想像もつかなかったほどに、大麻による治療がかなり幅広く、より重要なものと考えられていることはほぼ間違いないといえよう。

医療大麻の安全性

カンナビノイドは、特に他の治療薬とくらべた場合においても、安全性は折り紙付きである。特に重要なことであるが、大麻は量や効力に関係なく、致死的な過量摂取を引き起こさない。1995年にWHO(世界保健機構)から出された報告書によると、「大麻には過量死の報告がない。また、動物実験から試算され人間の致死量はあまりにも高値(high)で、吸ったり食べたりで ユーザーがそこまでいってしまうことはない。」とある。

2008年、マギル大学ヘルスセンター、マギル大学、およびブリティッシュコロンビア大学の研究者たちは、医療用カンナビノイド製剤(経口THC製剤や液体カンナビス抽出物など)についての23の論文と、1966年から2007年までにまとめられた観察研究8つについてレビューを行った。彼らは大麻比使用群と比較し、30年以上(積み重ねられた研究をもってしても)”医療大麻使用による深刻なマイナスイベント発生率の上昇はみとめられなかった。”のである。

ただ、その報告書には大麻は必ずしも「無害」とはかぎらない、とある。大麻の活性成分は様々な生理的効果、精神活性を引き起こす可能性があり、その結果として、青少年妊婦、授乳婦精神疾患の家族歴を持つ患者など、悪影響を与えるグループというものが存在する可能性がある。C型肝炎の患者、COPDのような肺機能障害をもつもの、心臓病や脳梗塞の既往があるものもまた、マリファナの副作用が起こるリスクが他より高いかもしれない。他のどんな薬物も同様ですが、大麻の使用が安全で適切であると判断する前に、主治医とよく話し合わなければいけません。

このレポートの利用方法

医師の監督のもとで医療大麻の使用を可能とする州法が続々と制定されていることに伴い、多様な疾患を患う患者たちは治療目的の大 麻の利用法を追求してきた。患者や医師の中には現在初めて医療大麻ついて議論をしているものも多く、大麻の利用が望ましいのか、そうでないのかについての手引きを求めている。このレポートは、最近(2000-2009年)発表された研究論文を要約し、医療大麻やカンナビノイド療法の19の臨床適応についてまとめた手引きである。

アルツハイマー病 Alzheimer's disease
筋萎縮性側索硬化症 Amyotrophic lateral sclerosis
慢性疼痛 Chronic Pain
糖尿病 Diabetes mellitus
ジストニア Dystonia
線維筋痛症 Fibromyalgia
消化管障害 Gastrointestinal disorders
グリオーマ Gliomas
慢性C型肝炎 Hepatitis C
HIV Human Immunodeficiency Virus
高血圧 Hypertension
失禁症 Incontinence
メチシリン耐性ブドウ球菌 Methicillin-resistant Staphyloccus aureus (MRSA)
多発性硬化症 Multiple sclerosis
骨粗鬆症 Osteoporosis
掻痒症 Pruritus
関節リウマチ Rheumatoid arthritis
睡眠時無呼吸症 Sleep apnea
トゥレット症候群 Tourette's syndrome

これらの中には、医療大麻利用者によって永年逸話のように報告されてきた事柄で、近年科学によって正当性が肯定されたものがいくつかある(例、消化管障害を改善するために大麻を利用することなど)。他方では、研究によって脚光を浴びることになった全く新しい臨床的利用方法もある(例、糖尿病の進行を抑えるためのカンナビノイドの利用)。

このレポートにプロファイルされた病気は、カンナビノイドを用いたその治療について、患者からしばしば訊かれる疾患である。しかもこれらの多くの徴候は大麻によって緩和される可能性がある。いくつかのケースでは、臨床前および臨床データによって、現在利用可能な医薬品よりももっと有効に病気の進行を止める可能性があることが示されている。このレポートが、実質的に全てのケースにおける、大麻やカンナビノイドでの治療についての最もしっかりとした、包括的なレビューなのである。

患者とその主治医にとっては、医療大麻を利用するか、あるいは推薦するか考えている人々への入門書となるように。他の人にとっては、大麻とその化合物の新しくて幅広い臨床応用について知るためのイントロダクションとなるように。

Paul Armentano
Deputy Director
NORML | NORML Foundation
Washington, DC
January 15, 2009

* The author would like to acknowledge Drs. Dale Gieringer, Gregory Carter, Steven Karch, and Mitch Earleywine, as well as Bernard Ellis, MPH, NORML interns John Lucy, Christopher Rasmussen, and Rita Bowles, for providing research assistance for this report. The NORML Foundation would also like to acknowledge Dale Gieringer, Paul Kuhn, and Richard Wolfe for their financial contributions toward the publication of this report.

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Source: NORML Library
Recent Research on Medical Marijuana
Emerging Clinical Applications For Cannabis & Cannabinoids
A Review of the Recent Scientific Literature, 2000 ― 2009

 

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翻訳とコメント by 小さな外科医

この自信に満ちた序文が大げさでないのだとしたら、国によってここまで違うものなのか、という大きな驚きとがっかりは隠せません。今回改めて感じたのが、欧米と日本では、「あたりまえ」の水準がまったく異なっているということ、および「一歩外のことは知らん顔」という一部の日本人のカエルさでした。それに日本産のカエルは大抵謙虚さがまるでなく、排他的なのは、一体どういうわけなのでしょうか。私は残念ながら医療大麻の実際を見たことがないので、視察する機会があれば是非してみたいという気持ちが強まりました。

 





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