●法改正して大麻種子を規制する意味[11/26特別委員会を読む]
11月26日の「青少年問題に関する特別委員会」の議事録から、大麻種子の規制に関する初鹿議員の質問と、それに対する山井厚労大臣政務官の答弁を見てみよう。
○初鹿委員 (前略)大学生の間で大麻が蔓延しているのには明らかに理由があります。それは、種を買うことが規制をされていない。インターネットを見ればわかりますけれども、観賞用といって十粒三千円、そして栽培の仕方はこうですよというものが至るところに書き込まれて、それで簡単に手に入るわけですね。これは本当に法律を変えないと防ぎようがないと思います。
ですので、ぜひ大麻取締法を、取り締まりといっても、これは取り扱いをどうするかということを書いてある法律であって、取り締まるものではないんですよね。だから、その点も踏まえて、薬物の蔓延を防いでいく、乱用を防止していくためにも大麻取締法を改正してもらいたいと思いますので、これは山井政務官、ぜひお答えください。
○山井大臣政務官 このインターネット等を用いた薬物の問題に関しては、本当に深刻な事態になってきていると思っております。
今の委員の質問でありますが、この法規制に関しましては、大麻の種子をまく前であっても不正栽培の予備行為として現行法で処罰が可能でありますし、また、種子を譲り渡す側も不正栽培の幇助や不正栽培のための種子の提供罪として処罰が可能。
さらに、今回問題になっておりますインターネット等を通じて観賞用と称して大麻の種子を販売していた者を不正栽培の幇助罪等として摘発も行っておりますし、現行法の中でも種子提供の人も逮捕をしておりますが、このようなことも取り締まりを強化していきたいと思います。
さらに、初鹿委員おっしゃいますように、やはり法規制が緩いのではないかということも非常に重要な御指摘だと受けとめてまいりたいと思います。
○初鹿委員 使用も禁止がされていないので、この点もぜひ検討していただきたいなと思います。
初鹿議員は、大麻種子の規制をしていないから大学生に大麻が蔓延している、これは法改正して種を規制対象にしなければ防げないと断じている。それに対し、山井政務官は、現行法の枠内で対応できているとの見解を示しているが、どうもご自身で問題を理解して答弁しているというよりも、官僚にレクを受け、そのまま発言しているような心許なさを私は感じる。また、山井政務官は「やはり法規制が緩いのではないかということも非常に重要な御指摘だと受けとめてまいりたいと思います。」と、法規制の強化に道を残すような発言もされている。
初鹿議員も、山井政務官も、民主党の議員である。お二人は、民主党の政策INDEX2009で、同党が薬物問題についてどのような政策を提言しているかご存知なのだろうか。そこには次のように書かれている。
麻薬・薬物対策
薬物依存・中毒者への治療と自立支援、家族への相談支援を整備します。省庁横断的な薬物取締体制を強化し、薬物の供給源の根絶に取り組みます。また、覚せい剤、大麻のみならず、「MDМA」など錠剤型合成麻薬や、いわゆる脱法ドラッグの乱用が、青少年を中心に広がっていることを受け、薬物乱用の低年齢化を防ぐため、薬物依存からの回復者の体験談等を通じて、薬物依存のおそろしさが実感できる中高生への教育・啓蒙活動を実施します。
今年の総検挙前にTHCが行った政党アンケートでも、「ハームリダクション政策について、どうお考えですか?」という設問に、民主党は以下のように回答している。
薬物依存・中毒者への治療と自立支援、家族への相談支援を整備すべきだと考えています。省庁横断的な薬物取締体制を強化するとともに、外国の例を参考にしながら実効性のあるアプローチを検討すべきだと考えます。
民主党は、「麻薬・薬物対策」の基本として、まず「薬物依存・中毒者への治療と自立支援、家族への相談支援を整備します。」と述べ、その次に「省庁横断的な薬物取締体制を強化し、薬物の供給源の根絶に取り組みます。」としている。
しかし、上記特別委員会でのやりとりを見ると、初鹿議員の発想には「薬物依存・中毒者への治療と自立支援、家族への相談支援を整備」という観点がまったく見られず、外国の例を参考にした様子もない。山井政務官の答弁も同様だ。山井政務官は、「やはり法規制が緩いのではないかということも非常に重要な御指摘」だと述べているが、大麻の規制に関して他の先進国など「外国の例を参考」にすれば、このような答弁はあり得ないのではないだろうか。
「民主党政策INDEX2009」はマニフェストの基礎となる政策集だ。つまりこれは政権公約でもあり、また、アンケートへの回答も民主党としての政策を示したものだ。しかし、初鹿議員も山井政務官も、上述の通り、それを充分に理解しているとは思えないのである。
そして、最大の問題は、大麻にどのような有害性があるのか、医学的・薬学的な検証が一切なされず、単に規制を強化するという厳罰政策の観点からのみ語られていることである。
私は、民主党議員たちによる、国会におけるこのような議論の流れに、強い懸念を覚える。
(この項つづく)
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