大阪地方裁判所605号法廷。午前10時ちょっと前。
傍聴席に座っていた私は、既に弁護人席に就いていた弁護士の手招きで被告人席に移動した。
保釈が認められていなければ、今朝、大阪拘置所の独房を出て、手錠と腰縄をされて、裁判所行き被告人たち多数と数珠繋ぎにされて、マイクロバスで護送されてくることになったのだろう。
被告人席は長椅子だった。拘置所から来る場合は被告人の両隣に官吏が付く。
検事席で書類に目を落としている検事は物腰の柔らかそうな小柄な男で、歳は俺より少し上くらいだろうか。
突如、正面の高い所、裁判官席の壁にあるドアが開いて裁判官が入ってくる。全員起立。着席。
朝山芳史裁判官が「被告人は前に出てきてください」と促し、俺は証言台に立つ。氏名、生年月日、本籍、現住所、職業などを問われ、問われるまま答える。
村岡正三検事による検察の冒頭陳述
1.被告人の身上経歴
2.犯行の経緯等
被告人は、合衆国内を放浪していた際、大麻の吸煙を始め、帰国後は友人が密かに外国から持ち帰った大麻を吸煙したり、友人からもらった大麻の種子を生育させて収穫し、その葉を週1回ほどの頻度で約1年半にわたり吸煙したが、やがて「マリファナX」なる本の著者であり、大麻使用人口を増加させて大麻取締法を無効化することを目指して活動している桂川と面識ができ、■■市内に転居した後は月に一度ほどの頻度で同人宅を訪ね、一度に20グラムほどの大麻をもらい、平成15年4月末ころからは十数回前記桂川方に出かけ、一度に5グラム前後の大麻をもらってこれを吸煙していたほか、メール仲間に宅急便で大麻を送付してやるなどしていた。
その一方、被告人4年ほど前に当時の借家の庭で大麻を栽培したほか、前記桂川の思想に共鳴し、平成15年には自宅大家から使用を許された■■郡■■村****番地の畑地において、4月中旬ころから大麻草の栽培を始めた。
3.犯行状況
本件犯行状況は各公訴事実記載のとおりであるが、平成15年8月19日付け公訴事実における大麻草の所持量は、株状の大麻草以外の大麻重量18.906グラムと、株状の大麻草の茎を除いた重量88.82グラムを合計したものである。
準備が間に合わないとかで現物339本は登場しなかった。
起訴事実を認めるか、と裁判官。俺は認めた。
俺に対する質問などはそれだけだった。
次回、弁護側の弁論等を含めて1時間を予定することになった。
約30分。初公判はそれで終わった。
傍聴席には裁判見学ツアーらしき一団がいたが、どう思って聞いていたのだろう。
聞いてみたい気がした。
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