第4回公判-判決-

投稿日時 2003-12-03 | カテゴリ: 白坂裁判

開廷数分前、廊下の長椅子で弁護士と話していると、検事が通りかかったので立って声をかけた。

「こんにちは。」

素通りしてしまうかと思ったが、こちらに歩み寄って、

「この間、会っちゃいましたね」

と、憎めない笑顔で言葉を返してくれた。
前回の公判翌日、桂川さんの第2回公判を傍聴した後、
近くの喫茶店で知人と一休みしていると、テーブルを3つ隔てた席に検事氏が着席した。
こちらも気づいたが、前日に懲役4年を求刑された仲。
なんと挨拶したら良いやら、結局、言葉も視線も交わさなかった。
その時のことを言っているらしい。

「あ、お気づきでしたか、私も検事さんがいらっしゃるのは気が付いてはいたんですけど」

「ああいうとき、困っちゃうんだよね」

と、検事さんはにこやかだ。

「私もね、行って挨拶しなけゃと思ったんですけどね、このォ、よくもまぁ4年も求刑してくれましたねって。」

検事氏、尚も温厚な笑顔のまま言った。

「え、いやぁ、あれは、だって、僕が4年て決めたわけじゃないんですからね。」

「そうですか?」

「そうですよ、あれはもう起訴されてきた時に決まってるんですから。」

「それにしたってずいぶん重いじゃないですか。」

「ええ?そりゃ、まぁ、仕方ないですよ、そう決まっちゃってるんですから・・」

これ以上の会話はヤバイと思ったのか、検事はそそくさと法廷に入って行った。
続いて入り、俺は被告席に座った。

すぐに裁判官が入ってきて、全員が起立着席の儀。
裁判官、

「では、判決を言い渡しますから被告人は前に出てきて下さい。」

証言台の前に立つ。裁判官がぼそぼそとした声で言う。

「理由から言います。

犯罪事実

被告人はみだりに、

第1 平成15年4月中旬ころから同年6月下旬ころまでの間、長野県北安曇郡■■村****番地所在の被告人方及び同村■■****番地所在の畑地において、大麻を播種して発芽させるなどした上、同年7月30日までの間、同畑地において、発芽した大麻草339株(平成15年領第6212号の符号127ないし132)を育成させて、大麻を栽培した。

第2 同年7月30日、上記被告人方において、大麻草107.726g(同号符号1ないし3,37,74,75,87,402,103,110,111,125,126は鑑定後の残量である。)を所持した。

証拠の標目-かっこ内の数字は検察官請求番号を示す。

全事実について

 被告人の公判供述

 捜査関係事項照会回答書

第1の事実について

 被告人の検察官調書(乙21)、麻薬取締官調書(乙11,15)

 捜査報告書(甲12ないし14)

 領地調書(甲41)

 鑑定嘱託書謄本(甲17)

 鑑定書謄本(甲18)

第2の事実について

 被告人の検察官調書(乙18)、麻薬取締官調書(乙3ないし5,9)

 現行犯人逮捕手続書

 差押調書(甲36)

 鑑定嘱託書謄本(甲4,6)

 鑑定書謄本(甲5,7)

 写真撮影報告書(甲8,11)

法令の適用

罰条

 第1の行為 大麻取締法24条1項

 第2の行為 同法24条の2第1項

併合罪の処理 刑法45条前段、47条本文、10条(重い第1の罪の刑について加重)

刑の執行猶予 刑法25条1項」

 

(ああ、執行猶予が付くらしい、と思った。)

 

「没収 大麻取締法24条の5第1項本文

弁護人の主張に対する判断

1 弁護人の主張

大麻は、耐性もほとんどなく、身体的依存は皆無であり、毒性もなく、たばこと同程度かそれ以下の有害性しかなく、他者に対する危険性もない。しかるに、大麻取締法は、所持や栽培についてそれぞれ重罰を規定している。同法は、国民の保健衛生を保護法益としていて、保護法益が極めて抽象的である上、その制約は必要最小限度のものではなく、その法定刑は過度に重いから、憲法13条、31条に違反する。

2 当裁判所の判断

大麻が、人体に対し、個人差はあるものの、思考分裂、時間・空間感覚の錯誤、離人体験当をもたらし、長期の常用により、無気力・無感動を呈し、判断力・集中力・記憶力の低下をもらたすなど、一定の精神薬理作用を有することは、公知の事実である。それゆえ、国家が国民の生命、精神の安全に対する危険を防止する見地から、法律をもって大麻の使用につながる所持や栽培等の行為を規制し、その違反に対して罰則をもって臨むことは、十分合理的であり、大麻取締法の保護法益が極めて抽象的であるとか、その法定刑が過度に重いということもできない。したがって、大麻取締法の違憲をいう弁護人の主張は、前提を欠くものであって、採用し得ない。(最高裁-小法廷昭和60年9月10日決定・裁判集(刑事)240号275頁、東京高裁平成6年2月23日判決・高裁時報(刑事)45巻1-12号7頁等)。

量刑の理由

本件は、被告人が自宅及びその周辺で大麻を栽培し、自宅で大麻を所持したという事案である。本件で被告人が所持ないし栽培していた大麻の量は多量である上、被告人は、これらの大麻を自ら使用していたばかりでなく、他人にも譲渡していたものであって、本件は軽視できない事案である。また、被告人は、大麻解放論者である桂川の主張に共鳴して、大麻解放運動に携わり、大麻取締法を事実上無効化しようとの考えから、公然と本件犯行を敢行したものである。しかも、被告人は、捜査、公判を通じて、大麻取締法の非合理性を主張するなど、その態度はよくなく、その刑責は到底軽視し得ないものである。

しかしながら、被告人は、今回の逮捕、勾留、訴追を経て、今後は家族のためにも2度と同様の行為に及ばないと述べている上、前科・前歴もない。

以上の事情を総合考慮すると、被告人に対しては、今回に限り、刑の執行を猶予し、今後の戒めとするのが相当であると判断した。

主文

被告人を懲役3年に処する。この裁判が確定した日から5年間その刑の執行を猶予する。大阪地方検察庁で保管中の大麻草(平成15年領第6212号の符号1ないし3,37,74,75,87,102,103,110,111,125ないし132)を没収する。

分かりましたね?」

「はい。」

「もう一度主文を言います。」

そう言って裁判官が同じぼそぼそ声で読み返して、付け足すように言った。

「あなたの罪は懲役に値するけれども、あなたが法廷で二度と違法行為を行わないと証言していることや、家族のために頑張ると話していることを考慮して、今回に限り、刑の執行を5年間猶予しましょうというものです。いいですね?」

「はい。」

「それではこれで終わります。」

あら?終わり?終わっちゃったらしい。

俺としては、これから裁判官に対して反対弁論を行いたい思いだった。

裁判官は、弁護人の主張として、憲法13条(幸福追求権)と31条(適正手続の保障)について触れ、判例を示して違憲論を退けている。

だが、弁護人が同時に主張した「生存権(憲法25条)の侵害」という点については一言も触れていない。そこがこの裁判の味噌なのに。判例にないのかな?

最終意見陳述の際、日本では病人ですら大麻を利用できないことを司法としてどう考えているのか聞きたい、とまで言ったのに。裁判官は黙秘権を行使した。

俺には「裁かれた」という感覚が全くなかった。「当裁判所の判断」についても、予想通りだとはいえ、全く納得がいかない。相変わらずの古い判例を引いているだけ。

法廷を出て、弁護士控え室でちょっと打ち合わせ。

控訴期限は12月17日だけど、その日に言われても手続きできないから、早めに連絡を。保釈金300万が返還されたら諸費用を差し引いて指定口座に返金。費用明細はメールと郵便で送るとのこと。

控訴すると弁護費用が70万。最高裁まで考えると、裁判費用を合わせて150万はかかりそう。

大麻取締法は生存権(憲法25条)を侵害している。その主張に裁判所は全く何も答えなかった。

それでいて、「その態度はよくなく」懲役3年執行猶予5年?

それでいて、控訴するとまたカネかかるの?

ちゃんと答えなかったのは裁判所の責任なのに。

しかし、本当に、この世の沙汰って、カネ次第。

今回の逮捕で痛感しています。

どうしたものか。

12月12日までに連絡することにする。






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