被告人本人による控訴趣意書

投稿日時 2004-02-19 | カテゴリ: 白坂裁判

平成16年(う)第57号大麻取締法違反被告事件
被告人 白坂和彦


控 訴 趣 意 書


平成16年2月19日

大阪高等裁判所第4刑事部 御中

被告人 白坂和彦

頭書被告事件の控訴趣意は下記の通りである。


原判決には事実誤認の判断があり、その誤認は明らかに判決に影響を及ぼしているから破棄されるべきである。


1. 大麻の事実について

原審で弁護人が提出した「報告書(1)」、「報告書(4)」、「報告書(6)」でも明らかなように、大麻にはアルコールやタバコほどの害もなく、大麻の使用それ自体は、他者の生命や財産を侵害する危険を持たない。

英国においても、本年1月29日から個人使用目的の大麻少量所持は逮捕しない改正法が施行された。

それにも関わらず、原判決は、大麻の持つ薬理作用が、あたかも「国民の生命、精神の安全」に対して危険なものであるかのように立論し、取締を合理化している。

原判決は次のようにいう。

「国家が国民の生命、精神の安全に対する危険を防止する見地から、法律をもって大麻の使用につながる所持や栽培等の行為を規制し、その違反に対して罰則をもって臨むことは、十分合理的であり、大麻取締法の保護法益が極めて抽象的であるとか、その法定刑が過度に重いということもできない。」

その立論は、原審において弁護人が提出した報告書でも明らかな、大麻についての現代の科学的知見をまったく無視した独断と偏見に立脚するものでしかなく、大阪ちほう裁判所内でしか通用しない、井の中の「公知の事実」である。

「マリファナを批判する人々は有害作用に関する数多くの科学的データを引き合いに出すが、重篤な生物学的影響があるとする主張の大部分は、比較的大量の使用者、免疫学的、生殖機能についての積極的な研究においても、ほとんど立証されていない」(報告書(1)「メルクマニュアル」)。

また、一般に大麻の有害性が誇張捏造されて「公知の事実」化しているのは、公教育の場においてさえ「ダメ、ゼッタイ」として事実誤認に基づく情報を流布している教育効果・宣伝効果であって、大麻の現実に基づくものではないことも、報告書に明らかである。

以上のように、原判決は、大麻の事実について明白に事実を誤認しており、その判断は何ら根拠を持たない。だから、全く受け入れることはできない。お話にならない。破棄すべきである。

「1.大麻の事実について」は補充書で補足説明する。 

2. 大麻の医療使用について

私が無償譲渡していた大麻の医療的利用について、弁護人は、大麻の医療利用の世界的現実や有効性、また低毒性について、報告書の資料で明らかにしたうえ、原審弁論で次のように述べた。

「大麻が医療利用され、大麻を使って自己治療している患者が医療効果を享受しているにもかかわらず、大麻取締法を持ってこれを禁ずることは患者の生存権を侵害するものである。よって、大麻取締法の罰則規定は、幸福追求権(憲法13条)、生存権(憲法25条)を侵害し、その制約は必要最小限のものではなく、さらにその法定刑は過度に重いから憲法13条、25条及び31条に反し違憲である。」

それに対し、原判決は、「弁護人の主張」として憲法13条、31条について触れながら、25条の生存権を侵害している点について全く触れず、判決においても何の判断も示していない。

大麻が医療利用され、大麻を使って自己治療している患者が医療効果を享受しているにもかかわらず、大麻取締法を持ってこれを禁ずることは患者の生存権を侵害するものである。そうでないと判断するなら、司法はその理由を示すべきである。

「大麻取締法は生存権を侵害している」という主張を認めない理由すら示さずに黙殺するのは、司法の判断放棄であり、司法自身による三権分立の否定である。到底受け入れることはできない。

証拠に基づいた弁護人の主張を黙殺した原判決は破棄されるべきである。

 

3. 予断と偏見に基づく判断について

「被告人が大麻についていかなる考え方を持とうと被告人の自由であり、大麻取締法の違憲性を主張してその改廃を求める運動を展開するのも何ら非難されるべきことではない」。

原審論告で検事は上記の通り述べている。

ところが、原判決は「量刑の理由」として、

「被告人は、捜査、公判を通じて、大麻取締法の非合理性を主張するなど、その態度はよくなく」

と述べている。
大麻取締法の非合理性を主張することそれ自体は、まったく非難されるべきことではないにも関わらず、原判決はそれを「態度はよくなく」と「量刑の理由」としている。これは思想と良心の自由に対する無自覚な侵害である。

従って、「大麻取締法の非合理性を主張するのは態度がよくない」という、思想と良心の自由を侵害した、予断と偏見に根ざした原判決は、破棄されるべきである。


4. 大麻の使用と思想の自由について

大麻の使用は、それ自体がひとつの思想である。
大麻とさまざまな宗教が密接に関係していることは、公知の事実である。

大麻の宗教性を確信する者にとって、大麻の使用は、思想の自由、表現の自由、良心の自由の具体的行為に他ならない。

大麻の使用が、アルコールやタバコ以上には、他者や社会の保護法益を侵害する危険性を持たないことが科学的にも明らかな以上、大麻を取り締ることは、思想の自由を取り締ることと同義である。

大麻取締法は、憲法19条に定めた「思想及び良心の自由」を侵害している。

上記4点の通り、大麻取締法は憲法違反であり、原判決は破棄されるべきである。

以上






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