被告人本人による上告趣意書(1) 大麻の事実について(「マリファナの科学」など)

投稿日時 2004-06-29 | カテゴリ: 白坂裁判

平成16年(あ)第956号 大麻取締法違反被告事件

最高裁判所 御中

被告人 白坂和彦

上 告 趣 意 書

平成16年6月28日

下記の通り、大麻取締法は、日本国と日本国民の保護法益を侵害する人権蹂躙法であり、憲法違反であるから、原判決は破棄されるべきである。

1.大麻の事実について(医療及び嗜好目的の観点から)

逮捕当日から、取調べでも、検事調べでも、一審でも、二審でも、大麻取締法は生存権をも侵害する憲法違反の法律だと私は主張してきました。しかし、一審判決も、二審判決も、そのことは実に見事に完全に無視し、20年も前の判例を金科玉条のごとく引っ張り出して司法判断のまやかしを正当化しています。
大麻の無害性や有用性を証明する判例時点以降の研究データを提出しているにも拘らず、それらは都合よく一切黙殺し、新しい判断から逃げ、相も変らず司法の独立性を自ら葬っているのです。
念のため、もう一度書きます。大麻取締法は憲法25条に定める生存権をも侵害しています。それを裁判所が黙殺し、当方の主張を否定する根拠も示さないのでは判例主義ですらなく、単に司法の思考停止であり、司法府が三権分立に死刑を宣告しているようなものです。

以下、>印付きの行は二審判決の引用です。

> 各論旨は、いずれも弁護人の上記釈明のとおりであって、要するに、大麻取締法24
> 条1項及び24条の2第1項は憲法13条、14条、31条及び36条に違反し、無効であ
> るのに、これらを適用して被告人を有罪とした原判決には、判決に影響を及ぼすこと
> の明らかな法令適用の誤りがある、というのである。

私は生存権(憲法25条)をも侵害していると、逮捕されたその日から主張しています。
「要するに」とかいって要約しすぎです。まるで書いてなかったかのように一言も触れずに無視する司法。これが裁判所のすることですか。なんのための裁判所でしょうか。
大麻が各種の疾病に対し医療効果があり、歴史的にも古くから世界各地で民間療法的にも利用されており、現代ではその薬学的効果は科学的にも証明され、すでにオランダやベルギー、カナダなどでは薬剤として販売されていることは一審と二審でも述べた通りです。

大麻にはかつて考えられていたような強い毒性はなく、カフェインと同程度であることは下記の通り米国薬害研究所(NIDA)の研究報告でも明らかです。

(taima.org http://www.taima.org/jp/main.htmから引用)
ニール L. ベノウイッツ博士(カリフォルニア大学)による格付け

物質名

禁断症状

強化刺激

耐性

依存性

陶酔度

ニコチン

3

4

4

1

6

ヘロイン

2

2

2

2

2

コカイン

3

1

1

3

3

アルコール

1

3

4

4

1

カフェイン

5

5

3

5

5

マリファナ

6

6

6

6

4

 

大麻にはアルコールやニコチンほどの害もなく、カフェインと同程度の「毒性」があるのみです。大麻取締法はコーヒー愛好者を逮捕するに等しい悪法です。

> 大麻が一定の薬理作用を有することは公知の事実であり、国家が国民の生命、
> 精神の安全に対する危険を防止する見地から、法律をもって大麻の使用につな
> がる所持や栽培等の行為を規制し、その違反に対して罰則をもって臨むことには、
> 十分合理性が認められるところであって、当裁判所も、大麻取締法の前記各条
> 項が違憲のものとは考えない。

何度も言ってるように、その薬理作用には医療効果があります。痛みが緩和する、眠れるようになる、食欲が出る。そのような効果を求める病人が、大麻を使う機会を刑事罰をもって取り締まることのどこに合理性があるのでしょうか。

裁判所の言う「一定の薬理作用」は、何ら他者や社会の保護法益を侵害するような性質のものではないことを論証しているにも関わらず、一審・二審はそれを全く黙殺して「大麻が一定の薬理作用を有することは公知の事実である」と、ナントカの一つ憶えのように繰り返すのみです。

大麻が一定の薬理作用を持つことは公知の事実です。そしてその薬理作用は、刑事罰をもって取り締まる性質のものではないことも公知の事実です。

大麻を嗜好目的で利用しても侵害される保護法益はないし、使用者本人にとってもカフェインと同程度の毒性しかない。
その大麻の所持や栽培を、最高で懲役7年という刑事罰で取り締まりることに、どのような合理的根拠があるというのでしょう。

前提となる最新の科学的知見を認めようとせず、相も変わらず20年も前の決定に固執する司法の硬直した権威主義にはほとほと呆れ返ると同時に辟易するばかりです。
先進各国では民間の製薬メーカーを含め、多数の研究機関が大麻の人体への影響についてさまざまな研究を行っており、産業面でも利用され、環境面からも注目されているのに、わが国では大麻取締法という足枷で研究すら禁じています。
それこそが我が国の国益を大きく損なうものであり、大麻取締法こそが国民の保護法益を侵害しているのです。

> 所論の前提とする大麻に有害性がないなどといった主張は、過去同種事案において
> 何度も繰り返されてきたものにすぎず、その理由のないことも、原判決が引用するもの
> を含め、多くの裁判例が示すとおりである。したがって、所論は採用の限りではない。

大麻にはさしたる有害性がないことは科学的な公知の事実であるにも拘らず、 司法はそのことを認めず、「過去同種事案において何度も」事実誤認に基づき、平穏に暮らす者たちの生活・人生を破壊する保身的な逃げの判決を繰り返してきたというに過ぎません。
原審で判決が引用しているのは昭和60年の最高裁決定です。私は、それ以降の世界各国の、多種の研究機関の研究結果を報告書として出しているのに、それを全く無視しておいて、主張には「理由がない」と平然と言って退ける。理由を提示しているのに黙殺する裁判所。「理由がない」のではなく、明白な理由を裁判所が黙殺しているだけです。20年もの間、「同種事案において何度も」司法は誤謬に満ちた判決を下し、平穏に暮らす国民の生活を破壊し続けてきたのです。前提となる事実を黙殺したこんな判決、採用の限りではありません。

> 所論はまた、飲酒や喫煙についてほとんど規制されていないのに、それらよりも危険
> 性や有害性の低い大麻の所持や栽培について懲役刑を科すことは、法の下の平等
> を定める憲法14条のほか、罪刑が適正であることを要求する同法31条や残虐な刑
> 罰を禁止する同法36条にも違反する、と主張する。しかし、大麻の有害性が低いな
> どという前提自体が失当であることは前記のとおりであり、また、大麻取締法の法定
> 刑が過度に重いとはいえないことも原判決が説示するとおりである。したがって、この
> 所論も採用できない。

「大麻の有害性が低いなどという前提自体が失当」であるとするなら、司法は、大麻が刑罰をもって取り締まるほど有害である根拠、下記に列挙する研究事例等を覆す根拠を示すべきです。

一審で提出した「文字通り世界の医師のバイブルとして無数の人々の治療に役立ってきた」医学書の権威である「メルクマニュアル」(第17版日本語版)には次のような記載があります。

「マリファナを批判する人々は有害作用に関する数多くの科学的データを引き合いに出すが、重篤な生物学的影響があるとする主張の大部分は、比較的大量の使用者、免疫学的、生殖機能についての積極的な研究においても、ほとんど立証されていない」

「大麻の慢性的ないし定期的使用は精神的依存を引き起こすが、身体的依存は引き起こさない。」

「多幸感を惹起して不安を低下させるあらゆる薬物は(精神的)依存を惹起することがあり、大麻もその例外ではない。しかし、大量使用されたり、やめられないという訴えが起きることはまれである。」

「大麻は社会的、精神的機能不全の形跡なしで、時に使用できることがある。多くの使用者に依存という言葉はおそらく当てはまらないであろう。」

「この薬をやめても離脱症候群はまったく発生しない」

また、「著者であるアイヴァーセン博士は大麻問題で英国上院委員会顧問を務め、これをきっかけに文献の総括的検討に着手することとなり、それが今回の本となって結実した」書籍、「マリファナの科学」(抜粋を「報告書4」として一審で提出済み)には次の記述があります。

「大麻の吸引によって進行癌患者が痛みに耐えることができるようになった、癌治療に使う化学療法薬によって起こる悪心が和らげられた、緑内障患者の眼圧を下げることができた、といった事例を報告する研究がますます多くなっている。」

「英国上院は大麻の是非を問う調査を行い、米国科学アカデミー医学研究所でも同様の調査が行われた。両調査とも、大麻にはプラスとマイナスの両面があるとの結論を示しながら、一般社会や立法機関に対して、あくまでバランスのとれた見方をとるように勧告している。娯楽目的での大麻の吸引には有害なケースもあるが、コカインやアルコール、タバコほど危険なものではない。」

「大麻には悪い側面と良い側面があり、適量が用いられる限り、娯楽利用の価値もあるとともに、治療上から見ても有望である。」

「マリファナの使用はヘロインやコカインの中毒につながるものではなく、吸引の慣行を促すことによってマリファナ中毒者の市場を作ろうとする動きは見られない。」

「オランダでは20年以上も前からマリファナを個人的使用のために入手でき、カナダやスイス、デンマーク、ギリシャ、スペインでもオランダと同様の方針をとる動きを見せている。」

「近年では、後天性免疫不全症候群(AIDS)や多発性硬化症など、さまざまな肢体障害をもたらす病気を患う数千人の患者が、症状を和らげてくれると確信して、非合法でのマリファナの吸引を始めている。」

「1997年秋、英国の新聞『インディペンデント・オン・サンデー』は、大麻の非犯罪化をめざすキャンペーンをはった。キャンペーンは医学界のほか、あらゆる分野から数千人にのぼる支持者を集めている。」

「中国では大麻は重要な食用植物で、五穀のひとつに数えられていたほどである。」

「大麻は現在、精神活性薬THCとの関係で論じられるのが普通だが、人間の農業活動で数千年にわたって大変重要な役割を果たしてきた多目的品種でもある。」

「大麻製品は何千年にもわたって、さまざまな文化圏で消費されてきた。古来から今日にいたるまで、その形態にはありとあらゆるものがある。」

「大麻がもつ薬効や陶酔性の最初の記述は、紀元前およそ1~2世紀、古代中国の草本誌『神農本草経』に見出すことができる。」

「19世紀中頃~1937年までの百年近くの間、大麻は西洋医学界で短い間だが流行している。大麻がインドの民間療法から、初め英国に、次いでほかのヨーロッパ諸国や米国に紹介されたのに続き、さまざまな医療用大麻製品が利用されるようになったのである。一方、大麻は早くも15世紀前半に、アフリカから連れてこられた奴隷によってラテン・アメリカやカリブ海諸国に伝えられている。この地域の多くの国では娯楽用薬物として、またさまざまなネイティブ・インディアンの宗教的儀式に用いる道具として、その精神活性効果を利用すべく、いたって広範に使われるようになった。」

「20世紀初頭の数十年間に米国南部へメキシコ移民者の波が押し寄せ、そのさい彼らがマリファナを持ち込んだことから、大麻は米国で初めて注目を浴びる存在となり、さらにその後の禁止へとつながっていく。(中略)連邦麻薬局長官、ハリー・アンスリンガーはマリファナを非合法化すべく、熱のこもったキャンペーンに乗り出した。彼は当時、特定の政策や党派に肩入れする役人として知られ、大麻の害悪として考えられる事柄をショッキングな風説に仕立て上げることで、ほかの官庁や世論、メディアを巧みに操っていった。1937年、米国議会はほとんど欠席裁判的にマリファナ課税法を可決する。これは医学でのマリファナの利用を事実上禁止し、マリファナを危険な麻薬として非合法化するものであった。」

「1937年の時点で、米国国内の医師が入手することのできる大麻製剤は、大麻抽出物を含有する丸薬、錠剤、シロップから、大麻とほかの薬物-モルヒネ、クロロフォルム、クロラールなど-との混合品まで、28種類に及んでいた。米国の製薬会社は、大麻製剤の研究に積極的な興味を示すようになっていた。急ぎ可決されたマリファナ課税法は、それ以降の大麻の医療利用をすべて打ち切らせ、以降25年ないし30年にわたってこの分野でのあらゆる研究に本質的に終止符を打つものであった。ラテン・アメリカから米国に到達するなり行われた大麻の悪魔化によって、それ以降北米だけでなく世界規模でマリファナに対して歪んだ見方が取られるようになっている。」

「1960年代の米国で突然、若者に間にマリファナが流行したことで、この薬の効果についての科学的調査が盛んに行われるようになった。数多く現れた研究報告書のなかには人々を混乱させるようなものも多いが、これは一部には、当初からこのテーマが政治色濃厚で、明らかに偏った見方がいくつかの研究に影響したためであった。研究者によっては、マリファナが有害な薬であることを証明しようと躍起になっていたようである。」

「1970年代と1980年代のいくつかの研究は、人類学的・神経心理学的テストを行うことで頻繁なマリファナ使用者と非使用者を比較しているが、そこに見るべき相違は認められていない。」

「ジャマイカやギリシャといったマリファナの大量使用が日常的となっている国々での長期大量使用者についても、これと同様の研究が行われているが、マリファナ使用者と非使用者の間に何ら認識機能上の相違をみいだすことができずに終わっている。」

「とりわけ有名なランブロス・コミタスの研究(1976)により、当時一般的だった大麻摂取が『無動機症候群』につながる考え方に異論を唱えるようなデータが、当時の思い込みとは裏腹に公表されている-
言葉上の反応に示されているように、下層階級の大麻使用者が抱くガンジャと仕事についての考え方、態度は決して曖昧模糊としたものではない。一般にガンジャは無気力や行動不能につながる弱体物質などではなく、エネルギー源、原動力と考えられている。ガンジャはジャマイカでは、少なくとも観念的なレベルでは、その使用者にもっとも困難で不快な単純労働に立ち向かい、とりかかり、やり遂げさせる代物なのである。(Comitas,1976)
コミタスはこのあと客観的な測定法によって、ガンジャ吸引者と非吸引者を比較した場合、サトウキビ刈り入れ作業の生産性にまったく差がないことを示している。」

「マリファナはその使用者をリラックスさせ、気持を落ち着かせるが、アルコールはときとして攻撃的で暴力的な行動を引き起こす。」

「大麻は何千年にもわたって医薬として使われてきた。中国で紀元前2800年頃、初めて出版された漢方薬の概説書『神農本草経』は、大麻を便秘、痛風、リウマチ、生理不順の治療薬として推奨している。大麻製剤はその後何世紀にもわたって中国の本草書で推奨され続けてきたが、特に鎮痛効果は外科手術の際、痛みを抑えるために利用された。」

「インド医学も中国と同じくらい長い大麻利用の歴史をもっている。紀元前2000~1400にさかのぼる古代医学書『アーユールヴェーダ』はバング(マリファナをさすインド語)に触れ、その後の記述はこれにパニーニ(紀元前300年頃)が筆を加えるかたちで行われている。
大麻は古代アーリア人のインド入植者たちによって鎮静・冷却・解熱効果をもつと信じられていたと見て間違いないようである。古代アーユールヴェーダ体系では大麻はヒンドゥー人のための医薬品として重要な役割を果たし、今日でもアーユールヴェーダ実践者たちによって利用されている。アーユールヴェーダ体系のさまざまな医学書では、大麻の葉や樹脂が鬱血除去、収斂剤、鎮静剤として、また食欲を刺激し消化を促す薬剤として推奨されている。大麻は睡眠導入剤や外科手術のさいの麻酔薬としても使われてきた。」

「アラブ医学やイスラム系インド人の医学ではハシーシュ(大麻樹脂)や「ベンジ」(マリファナ)について多くの記述が見られる。大麻は淋病や下痢、喘息の治療薬として、また食欲増進剤、鎮痛剤として利用された。」

「インドの民間療法ではバング(マリファナ)やガンジャ(大麻樹脂)が激しい活動時や疲労時にスタミナをつける刺激薬として推奨されてきた。傷や腫れ物に貼る湿布はその回復を促し、炎症(例えば痔)のさいには鎮痛・鎮静剤として働くものと考えられた。ガンジャ抽出物は眠気を誘い、神経痛や偏頭痛、生理痛を治す薬剤として利用された。今日でもインド農村部の民間療法では大麻抽出物とほかのさまざまな漢方薬からなる多種多様な調合薬が使われ、その数ある適応症のなかには消化不良、下痢、腸吸収不全、赤痢、発熱、腎疝痛、月経困難症、咳、喘息などが含まれる。」

「大麻は中世ヨーロッパの民間療法でも広く知られ、ウィリアム・ターナー、マッティオーリ、ディオスコバス・タベラエモンタヌスの本草書でも治療効果のある植物として記述されている。」

「何世紀にもわたって大麻が安全な医薬品として使われてきて、欧米諸国で何千人という患者がその薬効を信じて疑わないのに、どうしていまさら問題がありえよう。なぜ欧米諸国は、医師が患者に処方できるように大麻を合法化しようとしないのだろうか?」

「患者に安全で効果のある薬剤を認めない根拠が、果たしてあるのだろうか。」

「大麻は多くの人たちにとって、何世紀もの間、民話や民間医療に根付いてきた自然療法・薬草療法として、付加的な魅力を備えている。」

「大麻がもたらしたメリットを語る人たちのしばしば感動的な報告は抗いがたい力をもっている。これ以上、いったい何が必要なのだろうか。」

「吸引マリファナが一部の患者に実際の薬効をもたらしていることは、疑いようのない事実なのである。」
「中枢神経系のなかのカンナビノイド系が活性化することで、とくに痛みに対する感受性が低減するという動物実験の結果が、ますます数多く報告されるようになっている。」

「また大麻が持つ鎮静性は、痛みをともなう筋痙攣や頻繁な排尿の必要のために度々眠りを妨げられる患者に熟睡をもたらす効果がある。大麻が痛みをともなう様々な形態の筋痙攣の治療に役立ったという言い伝えも多い。言い伝えにはいずれも、しっかりした科学的根拠がある。」

「大麻は鬱病や不安症、睡眠障害の治療薬として推奨されてきた。西洋医学でも大麻の利用法として最初に推奨されたのが鬱病や内因性鬱病(重症型の鬱病)の治療で、現在の抗鬱剤が開発される以前、20世紀半ばまでは実際にこうした目的で大麻が使用されていた。」

「一部の科学者は大麻が有害であることを証明しようという道徳的方針のもとに研究を行っている。おおげさな警告が発せられ、大麻は染色体異常やインポテンツ、不妊、呼吸器疾患、免疫系反応の抑圧、人格変化、また永続的な脳損傷をもたらすきわめて危険な薬剤だと吹聴された。こうした警告のほとんどはその後まやかしであることがわかったが、ホリスターによるバランスのとれた論評(1986、1998)やL,ズィマーおよびJ.P.モーガンによる愉快な著作『マリファナの神話、マリファナの事実』(1997)では、これらの警告の多くが次々と効果的に論駁されていった顛末が記されている。」

「テトラヒドロカンナビノール(THC)はきわめて安全な薬剤である。実験動物(ラット、マウス、イヌ、サル)は最大1000mg/kgまでの忍容性をもつ。これは体重70kgの人間がTHCを70g服用した場合に相当し、ハイ(精神的高揚)を引き起こすために必要な容量のおよそ5000倍である。大麻の不法使用は広く行われているが、大麻の過量摂取で死亡した例はほんのわずかしかない。英国では、政府統計で1993年から95年までの間に大麻による死亡例が5件挙げられているが、くわしく事情を調べると、いずれも嘔吐物が喉に詰まったことが原因で、大麻に直接起因するものではない(英上院報告1998)。ほかの一般的な娯楽用薬物と比較すると、この統計は際立ってくる。英国では毎年、アルコールによる死亡者が10万人以上、タバコに起因した死亡者が少なくともこれと同数だけ発生している」

「どんな基準に照らし合わせても、THCは急性効果、長期的効果の両面で、きわめて安全な薬剤だと考えなくてはならない」

「動物実験から得られたデータは人間用薬剤としてのTHCの認可を正当化するに十分であり、実際に米国食品医薬品局(FDA)はTHCについて、特定の適応症に限定したかたちで認可を下している。」

「以下のような点の論争については、もはや終止符を打つべきだろう。

1.大麻はいくつかの報告が指摘しているような、動物の脳への構造的損傷をもたらすことはいっさいなく、服用をやめたあとに残る若干の認識機能の障害を除いては、人間の脳に長期的損傷をもたらすという証拠はない。

2.多量の大麻やTHCは動物の免疫機能を抑圧する場合があるが、大麻が人間の免疫機能に著しい損傷をもたらすという証拠はない。

3.多量の大麻やTHCは動物の性ホルモンの分泌を抑制するが、人間では男性の場合にも女性の場合にも、大麻が受胎能力や性機能に損傷をもたらすという証拠はない。

4.大麻の使用が染色体異常につながりうるという証拠はあるが、こうした変化はほかの一般的な薬剤(例えばタバコやアルコール)の場合に見られる変化と何ら違いはなく、生殖にかかわる生殖細胞には変化は見られない。こうした変化に臨床的な意味があるものとは思えない。」

「大麻使用と長期的な精神疾患との間の因果関係は、ほとんどの人間にとっては無縁だと考えてよさそうである。大麻の使用が分裂病を引き起こすとすれば、西洋で過去30年間にこの疾患の患者数が大幅に増加していなければならない。」

「習慣的にマリファナを吸う者はTHC含有量の高いマリファナ煙草を使うことによって健康上の危険を小さくすることができるといえそうだ。」

「平均して19年間、習慣的にマリファナを吸引した被験者の場合、一般の人たちに比べて喘息や気腫の罹患率が低いことがわかったのである。カリフォルニアのカイザー常設健康管理協会では、毎日マリファナを吸うがタバコは吸わない452名と、両方ともまったく吸わない450名を丹念に比較した結果、マリファナ吸引者では呼吸器疾患で外来患者として通院する危険の増加率が低く抑えられている。」

「テトラヒドロカンナビロールには発がん性はないものと思われる」

「がんの化学療法にともなう疾患の治療や、食欲減退やエイズの消耗症候群を抑えるための使用については、マリファナの効用について厳密な科学的証拠がある。」

「大麻の活性成分であるTHCの安全性は高い。短期的に見ても長期的に見ても毒性はきわめて低い。」

「患者によっては大麻の抗不安効果がプラスに働くのである。」

「エイズや癌、多発性硬化症に苦しむ患者たちは、これらの疾患ゆえに推定寿命がきわめて短くなっており、こうした患者にとって吸引マリファナによる長期的な健康上のリスクはもはや二義的なものにすぎないというのも尤もな意見である。既存の薬を使っても何ら効果がなく、担当医師がマリファナに効ありと認めた場合、どうして法律がしゃしゃり出る必要があろう。1998年、英上院・科学技術委員会はこうした恩情によるマリファナの考え方をとり、医師が患者を特定して処方できるよう、大麻の等級づけを改めることを勧告している。同報告では次のように述べられている

法律を変え、大麻の医療目的での利用を合法化するよう我々が勧告する主な理由は、恩情にもとづくものである。大麻の非合法の医療利用はいたって広範に行われている。それは時に黙認され、保健専門家によって奨励される場合すらある。だがそれでも尚、大麻を非合法で使う患者、そして一部のケースではその介護人までもが、刑事訴訟にともなうあらゆる苦しみを受け、重い刑罰を科される危険にさらされているのである。」

「大麻はヒンズー教やゾロアスター教、ラスタ主義、仏教、道教、スーフィズムだけでなく、アフリカのダッガ信仰(ダッガは大麻のこと)やエチオピアのコプト教など、多くの宗教で聖体として使われている。アルコールと違い、大麻はコーランでもとくに禁忌となっていないため、多くのイスラム国でアルコール代わりに使われる傾向がある。」

「ヒンズー社会ではアルコールは禁忌となっているため一般に見下される傾向があるが、大麻の使用は社会的に是認されている。」

「チベットでは、大麻は一部の仏教行事では重大な役割を担っている。インドの伝説や書物によれば、シッダールタ(釈迦の別名)は紀元前5世紀に真理を告げ、釈迦となる直前の6年間、もっぱら大麻草とその種だけを使い、食べていたという。」

「大麻の長期的使用は肉体的・精神的・道徳的な退行につながらず、継続的に使用した場合でも何ら永続的な有害効果は認められない。」

「最初の大麻禁止法はその使用が犯罪行為につながるという考え方に基づくものだったが、その後、この考え方は誤っていることがわかり、もはや理屈としても通用しない。大麻に絡んでわれわれが現在かかえる問題の多くはは1920代~30年代にかけて大麻を等級Ⅰの麻薬に規定した性急な政策と、この規定がその後、チャンスがあったにもかかわらず変えられなかったことに起因している。」






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