また厚生省麻薬課長に対する丸井弁護士の証人尋問からほぼ20年後の今日、大麻の非犯罪化をめざす市民団体カンナビストの会員が行った厚生労働省に対する情報公開請求への回答によっても、依然として同省が大麻の有害性に関するデータ、海外の研究事例についてのデータすら持っていないことが明らかにされている。
(以下、前述のカンナビストのホームページから引用)
【大麻が原因の二次犯罪に関する請求】
まず、大麻が「犯罪の原因となる場合もあります」に、日本国内の事例があるのかを確認するため、厚生労働省に以下の内容で情報開示請求をしてみました。
・日本国内で発生した、大麻摂取による精神錯乱が原因の二次犯罪に関する一切の情報。但し、薬物事犯、アルコールを含む他の薬物との併用による事例、余罪としての大麻所持等を除く。
ところが、約30日後に「行政文書不開示決定通知書」が送られてきました。
不開示の理由は「開示請求に係る行政文書を保有していないため」でした。つまり大麻を摂取したことにより精神錯乱を起こし人を傷つけたり、事故を起こしたりしたような二次犯罪があったというような記録はゼロだというのです。
これにより、「日本国内で大麻が原因の二次犯罪は過去に一例も確認されていない」ことを厚労省が認めたということになります。
【大麻の身体的影響に関する請求】 次に、以下の記載内容を見てください。
■大麻の身体的影響
脳に対して;
心拍数が50%も増加し、これが原因となって脳細胞の細胞膜を傷つけるため、さまざまな脳障害、意識障害、幻覚・妄想、記憶力の低下などをを引き起こします。また、顕著な知的障害がみられます。
(参照:http://www.dapc.or.jp/data/taima/3-3.htm)
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*1971年にイギリスの研究グループにより「マリファナの常習は脳に損傷を起こす」という研究結果が発表されましたが、すべての対象者がマリファナ以外の薬物を使用しており、比較グループの適正及び診断技術に疑問があると非難された上、その後の各国での数度にわたる同様の研究で同じことが証明されず、現在は大麻による脳の構造的損傷に関する論争にはほぼ終止符が打たれています。
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これについても、日本国内に確認された事例があるのかを確認するため、厚生労働省に以下の内容で情報開示請求をしてみました。
・日本国内の医療機関により確認された、大麻摂取が原因の脳の構造的損傷に関する一切の情報。
しかし、これについても「行政文書不開示決定通知書」が送られてきました。
不開示の理由は、二次犯罪についての請求と同じく「開示請求に係る行政文書を保有していないため」です。これについても前項同様、大麻摂取が原因で脳の構造的損傷が起きたというケースはゼロだということを厚労省が認めたということになります。
さらに、いろいろなケースについて質問をしてみました。以下の17件の請求についても同様に「開示請求に係る行政文書を保有していないため」に不開示となりました。
・日本国内の医療機関により確認された、大麻摂取が原因の白血球の減少に関する一切の情報。
・日本国内の医療機関により確認された、大麻摂取が原因の免疫力の低下に関する一切の情報。
・日本国内の医療機関により確認された、大麻摂取が原因の副鼻腔炎に関する一切の情報。
・日本国内の医療機関により確認された、大麻摂取が原因の咽頭炎に関する一切の情報。
・日本国内の医療機関により確認された、大麻摂取が原因の気管支炎に関する一切の情報。
・日本国内の医療機関により確認された、大麻摂取が原因の肺気腫に関する一切の情報。
・日本国内の医療機関により確認された、大麻摂取が原因の慢性気管支炎に関する一切の情報。
・日本国内の医療機関により確認された、大麻摂取が原因の心不全に関する一切の情報。
・日本国内の医療機関により確認された、大麻摂取が原因の不整脈に関する一切の情報。
・日本国内の医療機関により確認された、大麻摂取が原因の胸痛に関する一切の情報。
・日本国内の医療機関により確認された、大麻摂取が原因の狭心症に関する一切の情報。
・日本国内の医療機関により確認された、大麻摂取が原因の胎児の大麻中毒に関する一切の情報。
・日本国内の医療機関により確認された、大麻摂取が原因の流産に関する一切の情報。
・日本国内の医療機関により確認された、大麻摂取が原因の死産に関する一切の情報。
・日本国内の医療機関により確認された、大麻摂取が原因の精子数の減少に関する一切の情報。
・日本国内の医療機関により確認された、大麻摂取が原因の月経異常に関する一切の情報。
・日本国内の医療機関により確認された、大麻摂取が原因の肺癌に関する一切の情報。
これらの厚労省からの返答から、「『ダメ。ゼッタイ。』などで述べられている大麻の身体的影響について、日本国内で確認された症例が一例もない」ということが分かりました。これらは厚労省の正式な返答ですので、「ダメ。ゼッタイ。」の説明には遺憾なことに根拠がないということが明らかになったのです。
【海外の最新情報に関する請求】 「日本国内の事例がないかもしれないが、大麻の危険性については海外の研究や文献で確認されているのではないか」と考える人もいるかと思います。しかし、最近の海外の政府機関などが発行している信頼できる文献を見ると、大麻の有害性は低いという結論で一致しており、少量の個人使用については非犯罪化する国が増えています。
そこで、こうした事実について厚労省がどのような認識を持っているのか確認するため、海外の最新の研究報告書や非犯罪化の事例の厚生労働省内での扱いについても開示請求しました。以下に質問項目を列挙します。(実際の開示請求書には英原文題名、英語による正式機関名が付記されています)
1999年の米国アカデミー・プレス、医学研究所、神経化学および行動科学局の報告書「マリファナと医学---科学的根拠の評価」についての厚生労働省内の連絡・報告・検討に関する一切の情報。
2002年の違法薬物に関するカナダ上院特別委員会の報告書「大麻:要約レポート:カナダの政策に関する見解」についての厚生労働省内の連絡・報告・検討に関する一切の情報。
2002年の英国下院、英国下院内務委員会の「内務委員会第3報告書」についての厚生労働省内の連絡・報告・検討に関する一切の情報。
2001年の総理府ガンジャに関するジャマイカ国内委員会の「ガンジャに関する国内委員会報告書」についての厚生労働省内の連絡・報告・検討に関する一切の情報。
1999年のスイス公衆衛生局、スイス連邦薬物問題委員会の報告書「スイス連邦薬物問題委員会による大麻レポート」についての厚生労働省内の連絡・報告・検討に関する一切の情報。
1998年のニュージーランド議会健康特別委員会の報告書「大麻の精神衛生上の影響に関する調査」についての厚生労働省内の連絡・報告・検討に関する一切の情報。
1994年の豪州保健高齢福祉省、オーストラリア政府出版サービスの「オーストラリアにおける大麻に関する立法上の選択肢:連邦政府からの委託による報告書/州薬物政策閣僚評議会」についての厚生労働省内の連絡・報告・検討に関する一切の情報。
2002年のジョーゼフ・ラウンドトリー財団の「クラスB薬物としての大麻の取り締まり」についての厚生労働省内の連絡・報告・検討に関する一切の情報。
2000年の英国警察財団の「薬物と法律:1971年の薬物誤用法に関する自主調査報告書」についての厚生労働省内の連絡・報告・検討に関する一切の情報。
「少量の大麻製品の非常習的な自己使用目的の行為については、訴追を免除すべきである」と判示した、1994年3月9日ドイツ連邦憲法裁判所第2法廷決定についての厚生労働省内の連絡・報告・検討に関する一切の情報。
1997年の世界保険機関、精神衛生および薬物乱用防止局の報告書「大麻:健康に関する展望と研究課題」についての厚生労働省内の連絡・報告・検討に関する一切の情報。
2003年3月オランダで施行された新しい連邦規定により、薬局が合法的に医療大麻を仕入れ、医師の処方箋がある患者に対する販売することを可能としたことについての厚生労働省内の連絡・報告・検討に関する一切の情報。
2003年2月、ベルギー議会が多数決で、レクリエーション・ユーザーの5グラム以下のマリファナ所持、及び一本までのプラント栽培を認め、刑事罰を適用しないことを決定したことについての厚生労働省内の連絡・報告・検討に関する一切の情報。
2001年7月、カナダ政府が、患者に条件付きで医療目的でのマリファナの栽培と所持を認める法令を最終承認、7月30日から実施したことについての厚生労働省内の連絡・報告・検討に関する一切の情報。
2001年1月、ベルギー政府が大麻の個人使用を原則として訴追しない方針を閣議決定したことについての厚生労働省内の連絡・報告・検討に関する一切の情報。
2003年10月イギリス下院議会が大麻の法的分類をクラスBからクラスCに引き下げ、大麻の所持を「逮捕に値しない法律違反」とすることを承認し、2004年1月29日より施行開始したことについての厚生労働省内の連絡・報告・検討に関する一切の情報。
以上16項目の質問に対し、最後のイギリスの事例に関する開示請求を除き、すべて「開示請求に係る行政文書を保有していないため」に不開示となりました。前述したように質問項目に該当する行政文書を保存していないということは、それらについての情報を何も持っていない、知らないということを意味しています。
イギリスの事例についても「2002~2003年海外情勢報告」なる小冊子の、ほんの一部分であり(現在開示手続中)、それが「連絡・報告・検討に関する一切の情報」とのことです。
これにより「政府当局は海外の最新の研究報告書や非犯罪化の事例について連絡・報告・検討は(ほとんど)していない」ということが遺憾ながら明らかになりました。
【国内の研究に関する請求】
また、以下の開示請求も同時に行いました。
・日本国内の研究機関によって行われた、大麻が人間に及ぼす危険性についての研究に関する一切の情報。但し、動物実験とそれに基づくもの、海外の研究の翻訳・海外の研究を単にまとめたものは除く。
これについては
「大麻乱用者による健康障害」(依存性薬物情報研究班)のうち、「IV 大麻精神病」の部分
「大麻乱用事例の特徴」(依存性薬物情報研究班)
が該当する行政文書に当たるとのことです(他は日本国内の研究ではないとのことです)。本件については「法第13条の規定に基づき第三者から提出された意見書の検討等を行うことにより、開示・不開示の審査に時間を要するため」に開示決定期限を30日間延期されました。
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*情報公開法条文:
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H11/H11HO042.html
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今後、開示されるであろう内容については
・大麻精神病とされている疾患は大麻が原因であると証明されたものなのか
・大麻精神病とされている疾患は他の精神疾患(分裂症など)ではないと証明されたものなのか
といった点に注目したいと思います。
また、場合によっては開示された行政文書に基づき新たな開示請求を行う予定です。
【まとめ】
冒頭でふれたように、「(財)麻薬・覚せい剤乱用防止センター」は厚労省所管の公益法人であり、そのホームページ(「ダメ。ゼッタイ。」ホームページ(http://www.dapc.or.jp/))は厚労省の委託を受けて運営されています。そこで大麻は危険な薬物であると述べているからには、それを裏付ける確かな情報があって然るべきです。それを確かめようとして上記のような36件の情報開示請求を厚労省に出したのですが、34件が「開示請求に係る行政文書を保有していないため」に不開示となりました。
結局、「ダメ。ゼッタイ。」で述べられている大麻が危険な薬物だという見解には、裏付け、根拠がないということが明らかになりました。国民に対し「社会問題の元凶ともなる大麻について、正確な知識を身に付けてゆきましょう」などと呼びかけていながら、自らの知識の方が不確かだったという無責任さには到底、納得できません。
「(財)麻薬・覚せい剤乱用防止センター」は、国民の税金を使いながら、このような不確かな情報・知識を広め、大麻についての誤解と偏見を助長し続けていく姿勢を早急に改めるべきではないでしょうか。
また国(厚労省)は、大麻が人体に与える影響に関する海外の最新の研究報告書や非犯罪化の事例について、連絡・報告・検討など(ほとんど)していないということが明らかになりました。EU(欧州連合)をはじめとする世界の主要先進国で行われた研究や調査について情報がないというのでは、自らの職務について怠慢の誹りを免れません。
厚労省は、一方で大麻取り締まりを行っていながら、大麻の有害性がそれほど高くないということが明らかになってきた海外の新しい研究や調査のことは知らないというのでは、公正さを欠いているのではないでしょうか。厚労省がそのような硬直した官僚組織体質を改め、大麻問題について公正な検討をはじめるよう望みます。
-引用終わり-
上に引用したカンナビスト会員氏の情報公開請求に対する厚生労働省の回答を確認する意味で、私は「(財)麻薬・覚せい剤乱用防止センター」の「薬物乱用防止 ダメ。ゼッタイ。ホームページ」にある大麻に関する記述について、その根拠を確認すべく、公開質問状として下記の通り問い合わせた。
「麻薬・覚せい剤乱用防止センターへの公開質問状」
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財団法人麻薬・覚せい剤乱用防止センター御中
平成16年6月15日
白坂 和彦
住所/携帯電話番号
記
「薬物乱用防止ダメ。ゼッタイ。ホームページ」を閲覧し、下記に疑問があるのでご教示頂きたく、お願い申し上げます。
私は大麻取締法で逮捕され、現在公判中の者です。
お返事頂いた内容は裁判の資料として利用するのと同時に、インターネットでも公開しますので予めお伝えいたします。
下記URLに記載の内容についてご教示下さい。
http://www.dapc.or.jp/data/taima/2.htm
「大麻とは」の項に次のような記述があります。 これについて教えて下さい。
第1点
「大麻(cannabis、カンナビス)を使用しますと短時間の記憶力や理解力が低下したり時間感覚に変調を来したり、車の運転などのように、身体各器官の調整や神経の集中を要求するような仕事を行う能力が低下します。研究結果によりますと、学生が(大麻で)「ハイな状態」(恍惚状態)になっているときには、知識を記憶できていません。動因(motivation。心理学用語で欲求の満足や目標の達成に向けられる行動を抑制する力の総称)や認識に異常を来たし、新たな知識の吸収を困難にします。大麻も偏執病等の精神病を引き起こすことがあります。 」
上記、「研究結果」とありますが、いつ、なんという機関が行った研究かご教示下さい。
また、その研究結果が発表されている媒体をご教示下さい。
第2点
「長期間乱用していますと精神的な依存ができあがり、同程度の効果を得るためにより多くの大麻を必要とする状態になります。この薬物が彼らの生活の中心を占めるようになるのです。 」
上記の耐性向上についての記述の根拠となる研究結果をご教示下さい。
いつ、なんという機関が行った研究かご教示下さい。
また、その研究結果が発表されている媒体をご教示下さい。
第3点
「大麻の煙に直接接触している部位以外の場所にも様々な危険が存在しています。心拍数は50%も増加し、これが原因となって脳細胞相互の伝達に重要な役割を持つ小さな髪の毛状に長く伸びた脳細胞の細胞膜を傷つけるため、脳障害が発生します。更に有毒成分はその他の脳細胞にも蓄積されます。長期間の乱用では再生不良性の脳障害を生じることがあります。また免疫性も著しく低下します。人格や性格の変化もみられます。重度の乱用者にあっては、偏執病的思考を示し、労働の生産性、学業の成績、運転能力はいづれも低下します。 」
上記の記述の根拠となる研究結果をご教示下さい。
いつ、なんという機関が行った研究かご教示下さい。
また、その研究結果が発表されている媒体をご教示下さい。
第4点
「マリファナは、生殖能力にも障害を生じさせますので、遺伝子の異常や突然変異をもたらします。男性ではテストステロン(性ホルモン)を44%も低下させます。また女性では生殖細胞に異常を生じます。(大麻の有害成分は)胎盤関門(母胎血液と胎児血液の間に胎盤膜によって形成されている半透過関門)をも通過して胎児にも影響を及ぼしますので、胎児の大麻中毒や流産、死産の原因にもなります。」
上記の記述の根拠となる研究結果をご教示下さい。
いつ、なんという機関が行った研究かご教示下さい。
また、その研究結果が発表されている媒体をご教示下さい。
裁判資料で使う都合上、6月25日までのご回答をお願いいたします。
よろしくお願いします。
以上
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上記の質問状を郵送すると同時にファックスでも送付した上、同センターに電話をしたところ、元厚生大臣官房付・糸井専務理事は私に対し、「10年くらい前のさまざまな研究を要約した」とのあいまいな説明をするのみで、その根拠を示さず、「当センターは公益法人だから裁判に使う資料ということになると、お答え申し上げることができないかもしれない」と、公益法人であるからこそ根拠を明確に示すべきであるのに、意味不明な回答をするばかりであった。
さらに同センター糸井専務理事から本年6月25日に電話での回答があった。私は「言った、言わない」の誤解を避けるため、文書での回答を要求したが、文書では回答しないとのことで、その電話での口頭による説明をもって回答とする旨、通告された。その電話による口頭での回答は下記の通りであった。
同センターのホームページに記載がある大麻の説明については、同センターで発行している「薬物乱用防止教育指導者読本」という冊子から引用・編集したとのことで、その冊子の現行版は2001年に改定されたものであり、初版は1996・7年頃だそうだ。
この冊子の元になっているデータは、米国の「ドラッグ プリベンション リソース インコーポレーション」発行のブックレット、「ドラッグ エデュケーション マニュアル」であるという。このブックレットの発行年月日は不明だとのこと。
日本国内において、大麻の有害性をプロパガンダする担当省およびその委託を受けて運営されている「(財)麻薬・覚せい剤乱用防止センター」は、自ら垂れ流している大麻有害論について、根拠となるブックレットの発行年月日すら明示できないのである。大麻弾圧の総本山ともいうべき、「動物園の猿のほうがマシ(フジテレビ系列ニュースジャパンで報道された米国内での一評価)」なジョージ・ブッシュ率いる戦争中毒国家米国で発行された一冊の冊子のみを根拠に、多数の研究が否定している大麻についての有害性を、税金を使って流布していることが明確である。
同センターの冊子に記載の大麻に関する内容が近年の海外の研究者による研究結果と著しく異なり、正確ではなく、現在は大麻にそれほど毒性がないことが明らかになっており、医療分野でも利用されている現状について問うと、元厚生官僚糸井専務理事は、「各国によって事情が異なりますから。オランダなどでは他の薬物なんかが蔓延している事情もございますし」としか答えられないのである。
同センター独自に、または厚生労働省として、大麻についての学術的研究を行っているのかという質問に対しては、「そのような研究を独自に行っているということはない」そうである。
大麻の有用性、低害性について、海外で行われている近年の研究結果を反映させた記載に改定する必要があると思うが、その予定はないかと糸井専務理事にお聞きしたところ、「現在のところ改訂の予定はない」とのこと。それは、税金を使って間違った情報を垂れ流し続ける行為を止めるつもりがないということである。
つまり、「動物園の猿のほうがマシ」なジョージ・ブッシュ率いる米国発行の一冊の冊子以外、日本の行政当局は大麻の有害性に関する根拠を持っていない。各国の研究者によって既に科学的に否定されている内容の、発行年月日や出典不明のブックレットのみを根拠に大麻を取り締まっているのである。
そして、それを司法は「大麻に一定の薬理作用があることは公知の事実である」と盲目的に追認している。
20年前、厚生省麻薬課長の証言では、大麻に関する情報は海外の文献に頼っているとのことだった。
2004年現在、厚生労働省および(財)麻薬・覚せい剤乱用防止センターは、大麻の有害性を証明する独自の調査はまったく行っておらず、大麻有害論の根拠は発行年月日も不明だという米国で発行されたブックレット一冊のみなのである。
現在、海外で行われている多種多様の研究は、ますます、大麻にはカフェインと同程度の毒性しかなく、その使用は短期的にも長期的にも極めて安全で、犯罪の原因になることも、暴力的になることもないことを明らかにしている。
それにも関わらず、日本の司法当局は、「大麻に一定の薬理作用があることは公知の事実である」と、その薬理作用についての内容も検証せず、20年前の最高裁決定にのみしがみついている。
医療的にも有効性が確認され、産業面からも、環境面からも、大いに注目されている大麻を、厳しく取締り、逮捕し、懲役刑を課すことは、国家権力による人権侵害以外のなにものでもなく、我が国の産業や環境といった国益・保護法益を著しく損なうものである。
> 以上のほか、所論がるる主張するところにかんがみ、更に記録を調査、検討しても、
> 大麻取締法が違憲無効であるとする根拠はなく、各論旨はいずれも理由がない。
判決は、大麻取締法が生存権を侵害しているという私の主張をまったく黙殺したうえ、出典を明らかにしたうえで明示している近年の大麻研究の報告についても読んでいないかのごとく完全に無視し、その一方で、20年も前の判例に拘泥し、根拠も示さずに大麻有害論を是認しているだけだ。判決の各論旨にはいずれもまったく根拠がない。あるのは20年前の判例だけである。
量刑は運用によってなんとかなるし、立法の方で扱う裁量権の問題だし、といった司法の逃げ腰が、今日のような大麻取締法による人権蹂躙を増長させている側面があることを、この際、あなたたち最高裁の判事さんたちには自覚してもらいたい。
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