条例改正案19号 - 賛成せよ、大麻の禁止を終わらせよ
デブラ J. サンダース (情報源: San Francisco Chronicle)
2010年9月19日
カリフォルニア
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「考え得る限り最も好意的に表現したとしても、禁酒法は失敗だった」。前任のニューヨーク・タイムズ編集長であったダニエル・オクレントは彼の最新の著書 "Last Call: The Rise and Fall of Prohibition (最終案内: 禁酒法の盛衰)" をこのように締め括った。「それは犯罪行為を奨励し、偽善を制度化した。それは政府から歳入を剥奪し、個人の権利への深刻な制限を画策した。」
大麻に対するアメリカの法規制も同じような結果をもたらした。アメリカ人のおよそ40パーセントが大麻を試した経験を持つ。三月、the Parnership for a Drug Free America(ドラッグの無いアメリカのための同盟)の報告したところによれば、2009年において9年生から12年生までの子供達(訳注: 日本の制度における中学3年生から高校3年生まで)のうち38パーセントが調査の前月に大麻を喫煙していた。
過去三回の大統領らは大麻の合法化に反対している。オバマ大統領などは大麻の喫煙経験があると明かしているにも係らず、ジョージ W. ブッシュ前大統領もその経験がある事を仄めかし、ビル・クリントン元大統領は「肺にまでは吸い込まなかった」などと話しているにも係わらず、みな反対している。アーノルド・シュワルツェネッガー州知事はカメラの前で喫煙した事があり、今や彼の最も言いそうな事は条例改正案19号を「議論すべき時が来た」というものだ。これは11月に住民投票を実施する予定になっている条例案であり、(連邦法ではないにしても)州法の下で大麻を合法化するものである。
2005年、ハーバード大学の経済学者ジェフリー A. ミロンは大麻禁止法の為に必要となっているコストを調査した。彼の見積りによればアルコールや煙草と同様に大麻を合法化、課税した場合、国家が毎年得られる税収は62億ドルにも及ぶ。それに加えて法の執行に必要なコストを連邦政府は毎年24億ドルも節約可能であり、州および地方自治体は53億ドルを節約できる。
ミロンはまた、大麻が合法になってもその使用率は必ずしも上昇しない事を論じた。私はそれは上昇すると思っていて、条例案19号の提議者らもこれが成立すれば恐らく価格が下降するであろうと認めている。合法化の対象は条文の上では21歳以上の成人に限られる事になっているが、10代の未成年者の一部がこれまでよりも容易に大麻を入手できる可能性について、これを隠す事はできない。そしてこれは良い事ではない。
ただし、大麻の禁止によって未成年者による使用を抑制できるわけではない。同じ調査結果から調査の前月に高校生の38パーセントが大麻を使用しており、39パーセントがアルコールを消費していた事が判明している。
オクレントは大麻の合法化とその上での規制により未成年者の大麻の入手が難しくなるであろうと考えている。禁酒法の撤回により可能になった閉店時刻の規定、年齢制限、そして政府がこれらに違反している店に営業停止命令を出せることにより、未成年者の飲酒は困難になったのであって、容易になったのではない。
プレザントヒル警察署長ピート・ダンバーがザ・クロニクル紙の編集委員に語ったところによれば、大麻の取引に関連する暴力こそが大麻を「最も危険なドラッグ」にしているとの事だ。だから彼は条例改正案19号に反対している。
だが Law Enforcement Against Prohibition (禁止法に反対する法執行機関)と称する団体は、その会員に改正案19号を支持する元警察官や検察官が増え続けており、それは犯罪組織を餓死させる事が出来るであろうとの期待からである。
元ロサンゼルス警察本部長補佐であったスティーヴン・ダウニングは麻薬犯罪組織をヒトデに喩えている。足を一本切り取れば、別の足を生やすのだ。「もし麻薬カルテルによる流通の60パーセントを取り上げる事ができれば、彼らの得られる利益は大きく減じられる」。彼はこのように私に語った。
彼は「カリフォルニアにおける最も有望な換金作物は大麻だ」と付け加えた。「規制を守り税金を支払うカリフォルニアの栽培者らは、メキシコの麻薬カルテルを市場から締め出す事が出来るであろう。」
ダウニングは私に、改正案19号の為に戦うことは彼にとっての「愛国的義務」であると述べている。
ダンバーはこの条例案を「緩過ぎる」としている。条例改正案19号は大麻の生産と流通に規制を掛けたり課税したりするかどうかを各々の地方自治体の決定に任せる事になっており、これは異なる地域では異なる規制になる事を意味する。
しかし条例案を作成したジェームズ・ホイートン弁護士が説明している通り、「オークランドはハンボルト郡とは完全に異なった問題に直面している」。もし特定の地域が大麻の販売を禁止したければ、自由にそうする事ができる。
私の若い頃、ドラッグの使用を始めた子供達を私は見ていたが、彼らはその為にその潜在能力を充分に発揮できなかった。
今日私には何名もの成功した友人がおり、彼らは若い頃に大麻を喫煙していたのだが、彼らが逮捕されなかった事を嬉しく思っている。しかし彼らは誤ったメッセージを送る事を避けるために、改正案19号に反対するであろう。私が思うに、一つには、彼らは政府に教育をして貰いたがっているのだ。だが、メッセージを送りたいが為に人の行動を犯罪化する事は――現時点のカリフォルニアでは医療を目的とせずに1オンス(約 28.3 グラム)までの大麻を所持することは軽犯罪とされたままであるが――それは間違っている。治安を脅かす行動をこそ犯罪化すべきなのだ。大麻の使用によって治安を脅かされる事はあるかも知れないが、どのような観点からも、大麻に対する現在の法律は犯罪組織への利益誘導となっている。
どのような利益があるのか? 子供らがドラッグを使用する機会を狭める。どのくらい? 1パーセント? ――何年もの間、国民は違法行為を支援するような法律を容認してきたのである。
禁酒法が廃止される二年前、禁酒法は決して覆らないだろうと主張する利口な人々が居た。彼らが著書で宣告したところでは、その法律が撤廃される可能性はハチドリがワシントン記念塔を尻尾に結び付けたまま火星へ飛んで行ける可能性と同程度でしか無いというものだった。
オクレントは彼の著書の宣伝を始めるまで条例改正案19号を知らなかったそうだ。「この本は売れるだろう」と彼は私に語った。
これほど単純な事なのだ。だから禁止法は機能しないのである。
Source: NORML NEWS
PROP. 19 - END MARIJUANA PROHIBITION, VOTE YES
by Debra J. Saunders, (Source:San Francisco Chronicle)
19 Sep 2010
翻訳とコメント by PHO
煙草やアルコールが成人に対して有害であるのは勿論、未成年者に対しては特にそうである事は明らかになっているが、では大麻はどうなのだろう。未成年者に大麻は本当に有害なのか? そのようなデータは見たことが無い。
私はこの条例案自体に文句を付けたいわけでは決してないけれども、未成年者を除外するには合理的な理由が必要だろうと思っている。もし「未成年者には判断力が無く、大麻の次はきっとコカインだから」などと言うのならば、それではこれまで大麻を禁止してきた立場と何も変わらないからだ。その部分の事がはっきりしないのは残念だ。
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