証人として裁判官宛てに抗議文を送付

投稿日時 2010-10-08 | カテゴリ: KYさん事件簿

KYさんの一審について裁判官に下記の抗議文を送付しました。



東京地方裁判所 刑事第10部
裁判官 本間敏広様

平成22年10月7日

長野県米米米米米米
白坂和彦

KY一夫さん公判【平成22年特(わ)第541号】についての抗議


標記、KY一夫さんの公判と判決について、司法手続としては控訴審に場を移すことになりましたが、法廷で証言させて頂いた者として、抗議の気持をお伝えしたく、申し上げます。

判決文には、弁護人の主張に対し、「当裁判所の判断」として、次のように書かれています。

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そこで、検討すると、大麻はその薬害等の詳細がいまだ十分解明されていないのであるから、国民の保健衛生の向上と社会の安全保持をもその責務の一つとする国家が、大麻の使用やそれにつなかる輸入等の行為を刑罰で規制することは、合理的根拠を有するのであり、立法における裁量の限界を逸脱しているものとはいえない。
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「そこで、検討すると」??? そこで? どこで? どこで検討したのですか?
検討した内容が書かれていないのですが、結論は、「大麻はその薬害等の詳細がいまだ十分解明されていない」とあります。

大麻にはアルコールやタバコほどの有害性はないことを、弁護人は書証を提出して立証しようとしました。そこには例えばイギリス下院科学技術委員会の報告として、次のような表も含まれていました。この論文はランセット2007年3月号にも掲載されています。


私自身が法廷で証言した通り、日本政府(厚労省)とその天下り呆人が国民に教え込んでいる「ダメ。ゼッタイ。」の大麻情報は、出典も論拠も示せない、アメリカ製の古い薬物標本見本の説明書に過ぎません。

そして、その「ダメ。ゼッタイ。」ホームページの印刷を、大麻有害論の根拠として、2004年の桂川裁判控訴審で、検察は法廷に提出したのです。弁護側に論拠を示すよう求められた検察は、天下り呆人に照会したが、回答を得られなかったと報告しました。

今回のKYさんの公判で、弁護人は、厚生労働省と財団法人麻薬・覚せい剤乱用防止センターの担当者を証人請求しました。しかし、検察官は不同意。自分たちが大麻有害論の根拠として法廷に提出し、でも根拠は分からなかったと報告した内容なのに、その根拠を確認しようという弁護人の申し出を、検察官は拒否したのです。自分たちが大麻有害論の根拠として法廷に出した大麻情報について、何か不都合な真実でもあるのでしょうか。その他の書証も悉く検察官に不同意とされ、大麻の有害性については、公判においてまっっっっったく審理されませんでした。

また、本間裁判官は、判決に「立法の裁量権」を持ち出しています。が、これは、検察が論告で引いている昭和60年の最高裁決定以降、大麻の有害性が「公知の事実」とされたことを前提に成り立つものです。
しかし、KYさんや弁護人や証人は、そもそも、その昭和60年以来の「公知の事実」は、現在の科学的知見と乖離していると指摘しているのです。「立法の裁量権」の前提が、昭和60年当時から大きく変化し、判例を見直す必要があるのではないかと問うているのです。

それなのに、大麻の有害性に関する科学的報告については、書証として採用することを悉く拒否しておきながら、本間裁判官は「そこで、検討すると、大麻はその薬害等の詳細がいまだ十分解明されていない」と言う。
いったい、大麻の薬害等について、どこで、いつ、何時何分何曜日、検討したのですか? 
本間裁判官は、大麻の有害性について、公判で検討することなどまったくしなかったではありませんか。

また、本間裁判官の判決には、次のようにも書かれています。

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酒及びタバコとの対比でいえば、酒及びタバコが人体に対する作用の面で大麻とは異なり、また、酒やタバコが多年にわたり国民一般にし好品として親しまれ国民生活に定着していることに照らすと、国家が、大麻については、酒やタバコに対するのと異なって、懲役刑をもってその使用やそれにつながる輸入等を規制することにも合理性がある。
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「酒及びタバコが人体に対する作用の面で大麻とは異なり」とのことですが、どう「作用」が異なるのか検討していないではありませんか。海外の研究者たちは、大麻には酒やタバコほど害がないと報告しているのです。

被告人への最終尋問で、渡辺検察官も、「飲酒運転と大麻はどう違うのですか?」などと、書証をさんざん不同意にしておきながら訊いています。
「上から目線でエラそうに、証拠改竄してんじゃねーぞボケ、ふざけんなクソ検事」と、田中君が言っていたそうです。伝聞なので証拠にはなりませんが。

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酒やタバコが多年にわたり国民一般にし好品として親しまれ国民生活に定着していることに照らすと、国家が、大麻については、酒やタバコに対するのと異なって、懲役刑をもってその使用やそれにつながる輸入等を規制することにも合理性がある。
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大麻は嗜好品として国民生活に定着していないから懲役刑でいいと裁判所が言うなら、大麻の合法化を求める者としては、大麻を嗜好品として国民生活に定着させる必要があるということでいいですね?
本間裁判官の判決は、大麻合法化論者に対し、大麻を嗜好品として国民生活に定着させるよう促すものです。合点了解よろこんで。

桂川裁判の上告趣意書から抜粋し、裁判所への宣告とします。
【平成17年(あ)第820号】

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●憲法12条の保障内容

憲法12条は、「この憲法が保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によって、これを保持しなければならない。」と国民の憲法保持義務を規定する。

「最高法規」である憲法が保障する自由及び権利は、「人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果」であり(同97条)現在の国民もこの遺産の上に安住することは許されず、国家権力による侵害のないように不断に監視し、自分の権利侵害に対して闘うのみならず、他人の権利のための闘争も支持する義務を課しているものである。

この規定は、立法主義憲法の一局面として、政府、国家機関が権力を濫用し、立法主義憲法を破棄した場合に、国民が自ら実力をもってこれに抵抗し、立法主義法秩序の回復をはかることのできる権利、すなわち、抵抗権の趣旨を明らかにしたものと解されている(例えば佐藤幸治『憲法[第3版]』51頁以下)。

権力と自由の間には不断の緊張関係があり、立法主義法秩序を維持するためには何をしなければならないか。
非実力的、非暴力的法違反行為としての「市民的不服従」や時としてこの「抵抗権」のように実力による闘争が必要であることを、国民に対し憲法内在的に自覚が促されていると解されている。

●市民的不服従の権利

抵抗権は、実力を伴う闘争であるが、市民的不服従は、法違反行為でありながら非実力的・非暴力的なところに特色があり、抵抗権より、より現実的で具体的な意義を持つと言われている。

すなわち、憲法12条の保障する市民的不服従ないし市民的不服従の権利は、立憲主義憲法秩序を一般的に受容した上で、異議申立の表現手段として法違反行為を伴うが、それは、「悪法」を是正しようとする良心的な非暴力的行為によるものであるところに特徴があり、そのような真摯な行為の結果、「悪法」が国会において廃止されたり、裁判所によって違憲とされて決着をみることがあり得、そのことを通じて、法違反行為を伴いながらかえって立憲主義憲法秩序を堅固なものとする役割を果たし得る。

正常な憲法秩序下にあって個別的な違憲の国家行為を是正し、抵抗権を行使しなければならない究極の状況に立ち至ることを阻止するものとして注目されている(佐藤前掲書53-54頁ほか)。
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本間裁判官の判決は、昭和60年の最高裁決定という判例を引かず、大麻の有害性を「公知の事実」とせず、「まだ十分解明されていない」という表現を採った点に、精一杯の誠意が示されているのだろうと思います。

しかし、誰かを傷つけたわけでもなく、誰かを騙したわけでもなく、誰にも迷惑すらかけていないのに、少量の大麻を所持していたというだけで、逮捕され、勾留され、仕事や学籍を奪われ、下手をするとマスコミで晒し者にされ、社会的に袋叩きにされ、人生を破壊されてしまう現実があるのです。それほどの犯罪ですか?

大麻で逮捕された者たちの多くは、親しい人たちや関係者にとんでもない迷惑をかけてしまったことについては真摯に反省しながらも、大麻をちょっと持っていたくらいで逮捕勾留して懲役刑を科す法執行のあり方に憤りを覚えています。この理不尽な扱いを法廷で問うと、「反省していない」とされ、判例を再検討しようともせず、司法判断から逃げる裁判所。多くの者が司法に絶望し、国家への信頼を毀損する結果を招いています。

KYさんの行為は、この国に絶望せず、希望をつなごうとする精神の発露です。そして、国民に対し憲法内在的に自覚が促されている、自由を獲得するための、非暴力による市民的不服従の具体的表現です。

本間さん、あと何人逮捕されれば、大麻は嗜好品として国民生活に定着したことになりますか?
お返事お待ちしています。

以上、抗議の気持としてお伝えします。
お読み頂きありがとうございました。





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