エリック・ホルダーは本気で大麻法を執行するつもりなのか?

投稿日時 2010-10-29 | カテゴリ: NORML News

ケヴィン・ジーズ(情報源: Huffington Post)
2010年10月19日

アメリカ合衆国
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大多数の者が「大麻は犯罪であるべきではない」と言い始めた時、取締法はその正当性を失う。

エリック・ホルダーの書簡に書かれた、カリフォルニア州民が大麻合法化に投票すれば『連邦法を精力的に執行する』との脅迫は本気とは思えない。どうやらカリフォルニアの有権者を操作するために時期を合わせて来たようだが、政界のエリートが嫌われている今年においては、恐らくはそのような脅しは裏目に出て、かえってカリフォルニア州民に失敗した大麻戦争の終結に向けての投票を促す結果になりそうだ。

アメリカの歴史における最悪の失敗した実験である禁酒法の時代、その終結への転機となったのは、ニューヨークが連邦政府に対し「もうこれ以上はアルコールに対する法の執行は行わない」と宣言した事である。この事により法の執行は連邦政府に任される事になった。既に連邦捜査局は農村地域においては軽蔑的に見られていた。アルコールは主に農村地域でが生産され、そこに連邦捜査局が突入し、彼らの経済を破滅させて来たからだ。やがて最も大きな都市地域が法執行を拒否した事により、結果として禁酒法は数年後に廃止された。

検事総長エリック・ホルダーは先週、次のように宣言した。

「我々は、嗜好品として大麻を所持、生産、供給するような個人や団体に対して『規制薬物法』を精力的に執行して行く。たとえそのような行為が州法によって許されていたとしてもだ」

彼は連邦政府が大麻所持に対して法の執行を始めると言っているのか? それとも人々の家に押し入って、大麻を栽培したり使用したりしていないかどうかを調べて回るつもりだと言っているのか? 人々の家の裏庭を探し回って大麻の家庭菜園を見付け出そうと言うのか?

殺人事件の半数が未解決事件となるような国にあって、米国司法省が大麻事件を、それも国民が合法化に投票した後になってから大麻事件の方を優先しようなどとは信じられない事だ。拷問者や、拷問を可能にした法律家を法で裁かない事を決定した検事総長が、その代わりに人々を大麻事件で起訴しようなどとは信じ難い。この検事総長は、ウォーターゲート事件以来の最大の民主主義に対する犯罪が行われている間、何ら行動を起さなかった検事総長と同じ検事総長である。その犯罪とは、選挙法および税法に違反しながら選挙結果に影響を与えようとした非営利の偽装団体に何億ドルもの匿名の寄付金が集められていた事件の事である。(訳注: 私はその選挙法違反事件がどんな事件なのか知らないので、多少誤った飜訳になっている可能性があります。)

警察と裁判所が秩序を保つためには、地域社会との連携が必要である。もしカリフォルニア州の過半数の者が成人による大麻の使用と栽培の合法化に投票したならば、大麻を取り締まる連邦法がどのような種類の正当性を持つというのか。既に多くの者が警察権力に不信感を抱いているのであって、もし多数派が反対するような法律を連邦警察が執行しようとするのであれば、連邦捜査局は何らの正当性も持たない事になるであろう。

ホルダーが連邦法の執行について責任を負っている事は私も理解している。だが大麻法の積極的な執行を自動的に続ける事は社会的な損害であり、全くの不公正である。条例案19号が成立すれば、それは大麻のより良いコントロールについての国民的議論を始める好機となる。禁酒法は失敗しており、大麻戦争は高く付き、そして有害である。より良い方法があるはずだ。

条例案19号は、指導的な立場にある警察官が国家の変化する方向をより公明正大な社会へ向かわせる為の助けとなり得る。1972年の昔から、ニクソン大統領の選任により発足した "National Commission on Marijuana and Drug Abuse (大麻および薬物濫用対策委員会)" は大麻の非罰化を提言していた。また 1982年にも全米科学アカデミーがその報告書 "An Analysis of Marijuana Policy (大麻政策の分析)" において合法化に向けての検討を強く要請している。
専門家らは大麻戦争の行われている間中、一貫してそれは間違った方向であると言い続けて来た。そして今や有権者らが彼らへの賛同を示そうとしている。この事は検事総長のリーダーシップを示す好機、大麻への非犯罪的な対処に向けてのリーダーシップを示す好機である。

合衆国の刑事司法制度は既に多数の国民から「不公正のシステム」と見做されている。何故なら合衆国の人口は世界人口の5%に過ぎないが、その囚人の数は全世界における囚人の25%を占めているからだ。アメリカ人の31人に 1人は収監されているか、あるいは保護観察もしくは仮釈放期間にあるかのいずれかだ。アフリカ系アメリカ人について言えば、それは成人の11人に1人の割合である。「自由の国」における、このような大量の「犯罪者」人口は、何かが酷く間違っている事の証左だ。700万人のアメリカ人を収監し、あるいは保護観察や仮釈放期間に置くという結果をもたらした制度を動かしているのは一体何なのか。疑いようも無く、その原動力の一つはドラッグ戦争であり、そして大麻こそがドラッグ戦争の原動力である。大麻による逮捕者は38秒毎に1人ずつ増えて行き、そして年間では840,000名にも及ぶ。

願わくは、多数派が大麻に対する刑事処罰を廃止するように投票した暁には、ホルダー検事総長には連邦法の執行をエスカレートさせるという彼の方針を考え直して欲しい。彼はむしろ正義の本質、すなわち道理があり、公正である事と矛盾しないような法体系に向けて国家を先導するべきだ。大多数の者が「もはや存続すべきでない」と言っている法律を執行する事が道理に適っているとでも言うのか?それが公正なのか?

ホルダー検事総長、そしてアメリカには、真の公正なリーダーシップが必要である。我々には、国家がその膨大な数の囚人の問題と、植物を育てたりハーブを喫煙したりする人々を投獄するという法執行上の誤りに直面するための手助けをするようなリーダーが、必要である。検事総長殿、あなたには他にやりようがあるでしょう。単に「我々は国民をないがしろにして行くつもりであって、彼らがもはや違法であるべきでないなどと考えている物事についても、これからもそれを理由に彼らの逮捕を続けて行く」とだけ発言するよりも良い方法があるでしょう。

マリファナマリフアナマリファナマリファナマリフアナマリファナマリファナマリフアナマリファナ

Source: NORML Daily Headlines
IS ERIC HOLDER SERIOUS ABOUT ENFORCING THE MARIJUANA LAWS?
by Kevin Zeese, (Source:Huffington Post)
19 Oct 2010

翻訳とコメント by PHO
民主国家において国民の支持を得られなくなった法律は、その正当性を失う、か…。それは確かにその通りだが、日本に居るといつもその事を忘れてしまう。
この国において法律は唯一絶対の真理。法こそが道徳を定め、法こそが善悪を規定し、法こそが国民に望ましい行為を、望ましい嗜好を、あるべき姿を示すのだ。言論や思想に限っては未だ法の支配を受けていないものの、その状態も危ういバランスの上に成り立っているに過ぎず、いつその支配下に置かれる事になるか知れたものではない。

法治主義者達よ、この有り様をおかしいとは思わないのか。法治主義とは一部の権力者が望むだけ自らの権力を行使する代わりに、国家の行使できる権力を法で縛る事を言うのであって、法を以って国民に正しい道を指し示し、指導する事を言うのではない。人々の考え方と法との間に齟齬が生じた時には、変わるべきは法の側であって、人々の側ではないのだ。法は国民の権利を守るために存在するのである。





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